『これからの暮らし by ESSE vol.3(秋冬号)』/エッセ2022年12月増刊号 ◎

〈50代からのちょっといい毎日、ちょっといい未来〉を掲げる、『これからの暮らし by ESSE vol.3(秋冬号)』。ドンピシャ世代のワタクシに響く特集ばかりで、「それわかる!」「そうか、こうやればいいのか!」と頷きながら読んでました。表紙の西田尚美さんの飾らない笑顔も、素敵ですねぇ。 コロナで巣ごもり生活を余儀なくされていた頃(といっても仕事には行ってましたが)、You Tubeで出会った「ミニマリスト」という存在。色々なミニマリストさんの動画見てるうちに、「ミニマリストは、なんか私の目指すところと違う・・・」と思うようになり、「シンプル生活」の方に関心が寄っていくようになりました。明確な定義の違いは、実はよくわかってないのですが、私的には「無駄なものは持たない」「今あるものを減らして、管理する手間暇を減らす」「ゆるく兼用できるものを選ぶ」「でも、自分が持っていて(使っていて)心地よいものはあっていい」って感じでしょうか。その辺りと今回の特集「ものの持ち方、手放し方を見直すなら、今!」は、非常にフィットしましたね。 あと、「もう服選びに迷わない!ユニクロで決まるおしゃれ術」。絶賛オシャレ迷走中、服にお金をあまりかけたくないケチケチさんなワタクシに、ぴったり。ていうか、オシャレなお店に入るのすら気が引けてる私にとって、ユニクロは気楽に入れる数少ないお店なんですよ(笑)。そのユニクロで、年齢&わがままボディでもおしゃれが叶うとなれば、大喜びでございますよ。ええ、これからは大きめサイズに上げて縦…

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『ババアはツラいよ! 55歳からの「人生エベレスト期」サバイバルBOOK』/地曳いく子×槇村さとる ◎

前作『ババア上等! 大人のおしゃれDO!&DON’T!』にを読んだのは、もう2年も前なんですねぇ・・。ガッツリ更年期に入り色々とガタが来つつあるワタクシ、55歳はもうちょっと先だけど読むべし!と、本書『ババアはツラいよ! 55歳からの「人生エベレスト期」サバイバルBOOK』のを手に取ることにしました。いやあ、今回も地曳いく子さん槇村さとるさんには、たいへん励まされました。ありがとうございます!しかしまあ、思い当たることがありすぎて、引き笑いしてしまいましたけどね~(^_^;)。 しかし、いきなり最初の「五十五歳は人生の「エベレスト」」で、「根性でどうにかなるレベルを超えた、大きな山がきていた」なんて脅されると、55歳が来るのが怖くなってきますよねぇ。肉体的だけじゃなく、精神的にもダメージが来ちゃうのか・・・私に乗り越えられるんだろうか・・・と。でも、私が憧れてる更年期以降でもイキイキ・キラキラしてる女性たちだって、この更年期というエベレストを登りきり、サバイバルして来たからこそ、輝いてるわけで。出来ないわけじゃない!この本読んで参考にして、なんとか前向きにやろう!って思いました。 具体的な化粧品や服飾のブランドは、正直私には合わないかな~と思ったので、おしゃれのエッセンスだけ参考にさせて頂くとして、「好きなことは思いっきり取り組む」とか「おしゃれは人のためならず」とか「自分のベーシックを深めていく」とか、つまりは自分の好きなように楽しむってことなんだな~と。今まで頑張ってきたんだから、これから…

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『甘美な牢獄』/宇能鴻一郎 △

う~ん、この本、なんで〈読みたい本リスト〉入りさせたんだっけ・・・(笑)。宇能鴻一郎さんという著者名に、なんの引っ掛かりも覚えなかった(見覚えはなんとなくあった)のが、アダとなったというか(笑)。解説によれば「1970年代から80年代にかけて一世を風靡した超有名ポルノ作家」だということで、私の守備範囲からかなり外れてる作家さんだったわけですが・・・。『甘美な牢獄』というタイトルが真っ白な表紙に銀色で描かれ、装丁的には非常にスッキリした見かけ。読んでみて、どうだったかというと・・・・。 最初の短編「光と風と恋」で、男子学生が同じクラスの女子学生に憧れるようになり、その家に出入りするうちにその母の方に恋心を抱き、その母の方も受け入れるようなからかうような、曖昧ながらも交友を続けるが、最終的には訣別があり、少年は苦い思いとともに大人の男として孤独を感じるようになった・・・というストーリーは、なるほどなぁ・・・だったんですけどね。 いくつかの短編が進むうちに、どんどん露悪的な性・官能の話になっていく。いやぁ、イマドキの中年女性である私には、理解ができなかったですよ(笑)。「性のメランコリィ」や「描かれた当時の人権感覚(人種・男女など)」なんかが、どうにも受け入れがたくて。 でも、なんだか文章は読みやすくて、スイスイ読めちゃって(笑)、気がついたら読了してました。とはいえ、感銘を受けたかというと全くそういうこともなく、申し訳ないながら、評価は△とさせていただきますわ。 8編ある物語の中で、良かったか…

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『怪物〈闇の西洋絵画史(3)〉』/山田五郎 ◎

You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」で、面白くて絵画鑑賞初心者にもよく分かる解説をされている山田五郎さん。本書『怪物〈闇の西洋絵画史(3)〉』は、全10冊からなる〈闇の西洋絵画史〉シリーズの3冊目。本書に取り上げられた怪物は、だいたい〈ゆるふわ系〉なので、見ていても「怖い」より「くすっと笑える感じ」がします。You Tubeで五郎さんの話し相手を務めるワダさんも、「可愛いですね」を連発してましたもんね(笑)。 「Ⅰキリスト教の怪物」「Ⅱギリシャ神話の怪物」「Ⅲ画家が幻視した怪物」と3章に分けて怪物たちを紹介。想像上の生物、動物がいくつも融合した姿、人面獣身、獣面人身・・・。様々に醜悪だったり、ゆるゆるして弱そうだったり、聖者に負けたり、群れ集まりすぎてその集合体が気持ち悪かったり、どの絵画にもツッコミ処がたくさん見つかります(笑)。私が一番ツッコミを入れたくなったのは、一番最初に紹介されるヒエロニムス・ボスの《快楽の園》の地獄の王。亡者を丸呑みしては、そのまま排出(意味あんの?)、頭にお鍋をかぶってご機嫌モード、・・・アンタほんとに「地獄の王」なんか~い!!(笑)。 あと、怪物じゃなくて天使にもツッコミを入れたいです。ルーカス・クラーナハ(父)の《最後の審判》の天国の周りを囲む雲の中に、頭と羽だけ突き出してわらわらと存在する天使たち。・・集合体恐怖症の人が見たら、こっちのほうが怖いに違いないと思うんですよ!私、別に集合体恐怖症じゃないと思うんですが、一瞬「キモッ!」って思っちゃいまし…

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『ペッパーズ・ゴースト』/伊坂幸太郎 ◎

中学校教師の壇先生のパートと、その教え子の書く小説のパートが交錯する本作、『ペッパーズ・ゴースト』。伊坂幸太郎さんらしい、散らばったピースがピタリピタリとはまっていく感じが爽快です!面白かったです!そしてやっぱり私は猫派だなと(笑)。 壇先生は、他者の飛沫によってその人の翌日の未来の〈先行上映〉が見えてしまう、という特殊能力?特異体質?を持っている。見えてしまっても、対処出来ることと出来ないことがあるため、出来なかったことに対しての心苦しさに悩んだりすることもある。ある日、教え子の一人・里見大地の〈先行上映〉で新幹線の横転事故を見てしまい、彼に「新幹線の時間を変えた方がいい」と連絡をすると、彼が乗る予定だった新幹線がやはり事故を起こす。お礼を言いたいという大地の父と会った壇先生は、カフェでのテロ事件の被害者家族の集まるサークルの事件に巻き込まれていく・・・。同時期、壇先生は別の教え子・布藤毬子から「自分が書いた小説を読んでみてほしい」と手渡される。その小説では、かつて猫を虐待する動画へ煽りのコメントを入れていた人間たち「猫を地獄に送る会メンバー=ネコジゴ」を成敗していく、ネコジゴハンターの二人の活動が描かれていた。 やがて、壇先生が巻き込まれた事件に、ネコジゴハンターたちが登場する。加速し、絡み合う2つの出来事。全てに片が付いたあと、壇先生は「サークルのメンバーがやりたかったことは何だったのか」を推測する。メンバーの生き残りである成海彪子は、「そんなわけないじゃないですか」と言うのだが・・・。…

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『二千七百の夏と冬』(上)・(下)/荻原浩 ◯

ダムの工事現場で縄文人の少年と弥生人の少女の人骨が隣り合って発掘されたことを取材している、新聞記者の香揶。香揶の現代パートと、縄文少年・ウルクのパートを行き来しながら、物語が進んでいのですが、荻原浩さんの素晴らしい筆力によって、縄文時代から弥生時代へと移りゆくその時代の人々の暮らしが鮮やかにリアルに描かれています。本作『二千七百の夏と冬』は、前に真梨幸子さんの『縄紋』にを読んだときに、【トドの部屋】Todo23さんにオススメ頂いていたものです。縄文時代・弥生時代という、資料の少ない時代をここまで興味深く読めるとは、思っていなかったですね。面白かったです。 2011年。新聞記者・香揶は、縄文人の少年と弥生人の少女の人骨が隣り合って発掘されたことの取材をしている。その縄文少年・ウルクの物語では、縄文人たちの狩猟などの生活が描かれる。ウルクは禁域の森に迷い込み、見慣れぬ姿形の少女・カヒィと巡り合う。禁域に入ったことを咎められたウルクは「村の役に立つなにか(コーミー)を手に入れてくれば、村に戻してやる」と言われ、村を追い出される。(上巻) 村の南の森を移動している間にヒグマに狙われ、なんとかそれを倒し傷つき倒れたウルクは、見慣れぬ姿形の者たちの集落へ連れて行かれる。そこは、手に入れることを願っていたコーミー(米)を栽培し、「王の支配するクニ」であった。カヒィと再会し、米を手に入れるためにクニに居続けることにしたウルクは、カヒィと心を通わせ合うようになる。武器の所持を理由に捕捉されたウルクは、クニに混乱…

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『フィッターXの異常な愛情』/蛭田亜紗子 ◎

先日『共謀小説家』を読んだときに、【苗坊の徒然日記】の苗坊さんからお薦め頂いた本作、『フィッターXの異常な愛情』。ぜんぜん雰囲気が違う作品でびっくりしましたが、とても面白かったです!蛭田亜紗子さん、もっと読みたくなりました。楽しみです!! 弱小広告会社で営業職として働く國枝颯子は、32歳。面倒な顧客、ギリギリの納期、あふれかえる雑事、とにかく忙しく自分の身に構う時間が全然持てないでいる。ある日、忙しさのあまりブラをつけることも忘れて出勤、口うるさい顧客訪問を前に慌てて飛び込んだランジェリーショップで、男性のフィッター・伊佐治耀と出会う。日々の無頓着さを「からだを見ればわかります」と次々言い当てられ、勧められたブラを身に着けて顧客訪問に向かった颯子は、伊佐治の辛辣な口調が乗り移ったかのような指摘を顧客に伝え、逆に信用を得ることができるようになった。ある時は別れた元カレの結婚式に出席するためのドレスの下に着るランジェリーを選び、またある時は女装サロンのお客さんたちへのランジェリー講座の後押しをし、またある時は無愛想な後輩の心を開く下着選びに誘い・・・。颯子にとって、ランジェリーは自分を表現し開放するものとなっていくのだが・・・。 色んなことが、ランジェリーショップでの下着選びで解決していくのは、少々ご都合な感じもしますが、ちょっとした困難に出会いながらも颯子の日々が明るく展開していく様子は、とても心地よく読めました。ところが、颯子は健康診断の結果乳がんが判明し、左胸全摘手術・シリコンインプラント注…

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『エイリア綺譚集』/高原英理 ◯

書評(重厚で軽妙な幻想譚)を見て、興味を持った初読み作家・高原英理さん。様々に幻想的な短編が10編、夢のように語られ、最後の中編「ガール・ミーツ・シブサワ」で延々と澁澤龍彦について少女(の亡霊・死亡時35歳)が語り尽くす。タイトル『エイリア綺譚集』の「エイリア」は、著者名の「エイリ」と「エイリアン(架空の生物という意味の方)」から来ているのかしら。もしかすると「エリア」なんかも含まれてるかも?響きが美しくて、好きです。 短編それぞれが違った趣向で、好みに合うものと合わないものとありました。硬質でひんやりとした雰囲気の「青色夢硝子」や「ほんたうの夏」など、読んでいて清々しい作品は良かったんですけどねぇ。妙に湿度と温度が高い感じの日常の中に、突然グロテスクな光景(生きながら皮を剥がれて晒される人体)が入ってくるような「出勤」は腰が引けてしまいました。あと、「ブルトンの遺言」は、難しすぎました(笑)。夢見心地になる前に、理屈についていけなかったというか・・・。私の幻想好きの生半可さが、バレちゃいましたね(笑)。 「澁澤龍彦とか山尾悠子っぽいなぁ」と思ってたら、最後の中編が「ガール・ミーツ・シブサワ」で納得。「ガール・ミーツ・シブサワ」は、35歳で死亡した編集者が、ゴシックロリータだった少女時代の姿の亡霊となって、渋澤龍彦の様々な時代・場面を漂うという物語。と言うか、物語の形を取った渋澤龍彦評伝ですよねぇ、これ。高原さんが、どのように渋澤龍彦に影響を受け、どのように渋澤龍彦を捉えているか・・・というこ…

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『初めて会う人』/くわがきあゆ ◯

書評で気になっていた本作『初めて会う人』。登場人物がみんな、気持ちが悪い。だけど、私にはそんな部分は全くない、といい切れないところが、より気持ちが悪い。その気持の悪さが極まったところで、とんでもない理由が発覚する。・・・マジかよ、と頭を抱えましたね。しかもあのラストって、どうなのよ。気持ち悪さの念押しが、ダメージ倍増でしたよ、くわがきあゆさん。 会社の先輩に「なりたい」と、持ち物から行動からなんでも真似するストーカー。自分がもてはやされるためには、他者の秘密もバラすし貶めるなんてお手の物、自己顕示欲女。彼らの物語を読んでいる間、「気持ち悪~い、私何を読まされてるんだろう。この話、どこへ向かうわけ?」と、ムカムカしっぱなしでしたね。この二人に振り回された工藤三鷹は、被害者なのかと思いきや・・・。彼の周りで、何人もの人間が死亡したり姿を消したりしていることが、判明。三鷹の周辺を捜査していた刑事・静川涼吾は、三鷹の動機である心情に思い至る。ラストで、涼吾が取った行動の根拠と決意には、ゾッとしましたね~。 三鷹は自分は〈マザコン〉ではなく、〈母を愛するのは自然の摂理〉だと言う。だけど、その〈愛〉は〈母を愛してる自分のための愛〉ではないか?愛されてるはずの母は、三鷹に怯えて姿を消している。涼吾も、母以上に愛し大切にすべき妻をないがしろにして、暴力をふるい、それを止めるのは〈母が好んで見ていた俳優の役柄である刑事だから〉というもの。 いやぁ、これは、気持ち悪すぎるわ・・・。三鷹の母が三鷹を矯正できたかと…

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『キノの旅(23) -the Beautiful World-』/時雨沢恵一 ○

時雨沢恵一さんの「キノの旅」シリーズ、23冊目。私達人間の様々な面をデフォルメした国々をめぐる、旅人たち(一部定住派)。彼らはそれぞれなりの感じ方で国々を体験し、そこでの事象を断罪しない。パースエイダー(銃器)有段者・キノと喋るモトラド(自動2輪車)・エルメス。妙齢美人な師匠とハンサムな弟子。亡国の王子・シズ様と喋る犬・陸と無口な少女・ティー。旅を続けるその3組と、定住派で写真家のフォトと喋るモトラド・ソウ。彼らの体験を読みながら、私も様々な旅を見つめることになりました。『キノの旅 (23) -the Beautiful World-』。 口絵イラストノベル「演技の国」ありのままの姿での映画出演を求められる、旅人たち。口絵イラストノベル「ペンの国」ペンは剣よりも強し・・・?ペンは剣よりも正しい・・・?口絵イラストノベル プロローグ「赤い霧の湖で・b」螺旋を描く光が、船から見えなくなっていく。第一話「ロボットがいる国」ロボットが労働を担ってくれる国。師匠の憂慮とは?第二話「ピンクの島」何もかもがピンクの島へ、フォトが撮影しに行くと・・。第三話「眠る国」永遠に生きられる日が来るまで、すべての国民が冷凍睡眠に入る国。第四話「愚か者は死んでもいい国」独裁者の国で行われる投票。独裁者の意外な末路。第五話「戦える国」兵士の恐怖などを切り取って、戦場に出す強国。その国がいつも襲われる理由。第六話「狙撃犯のいる国」正確な射撃で殺される人たち。そのつながりは?犯行の終わりは。第七話「始まりと終わりの国」もぬけの殻…

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