『アリス、アリス、アリス!』/ひらいたかこ ◎ (画集)

小人みたいにちまっとした可愛さのあるアリスを始めとするキャラクターたちが自由闊達に駆け巡る、『不思議の国のアリス』をモチーフにした、ひらいたかこさんの画集。『不思議の国のアリス』好きなので、図書館の予約の順番が回ってくるのが楽しみでしたが、予想以上に良かったです!『アリス、アリス、アリス!』というタイトル通り、どのイラストにも可愛らしいひらいさん版アリスが、元気に朗らかに描かれてました。 かなり前に前作『地下の国のアリス』という、ルイス・キャロル自らが挿絵も描いた『不思議の国のアリス』の前身版を読んで、ルイス・キャロルの絵も味わいがあっていいなと思っていました。ちなみに、一般にはアリスの挿絵と言えば、テニエルですね。そちらの絵もナンセンスな感じが出ていて、好きです。そして、ひらいさんのアリスは、なんというか小人みたいな感じ。目鼻立ちだけじゃなく体も、そして他の対象物(物や動物や植物)も、みんな小づくりな感じが、とても愛おしい。ちまっと描かれているので、アリスの顔も点々で表現されて簡略化してるのに、なんだか彼女のお転婆でおしゃまな感じがとても伝わってきます。なんというか、とにかく、可愛い♪ アリス以外も、柔らかい色で描かれた器物・動植物・登場人物たちが、ファンシーな不思議の国をよく表してますねぇ。特にトランプマークでできた葉を持つ植物がカラフルに描かれてるシーンは、のびのびとした明るさが感じられて、とても素敵。アリスが目覚めたあと、ルイス・キャロル(帽子屋?)の漕ぐボートに乗ってるイラストが、現…

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『マジカルグランマ』/柚木麻子 ◯

表紙のぱっと見ファンシーなおばあちゃまからは想像もつかない、足掻いてもがいて失敗してそれでも自分の欲に忠実になることに気付いた老婦人の活躍、面白かったです。『マジカルグランマ』っていうタイトルの〈マジカル〉にそんな意味があるとは知らなくて、意外な展開に胸がざわつきましたねぇ。柚木麻子さんの描く〈後期高齢者〉、興味深かったです。 黄色いステッキを持って窓に座ってる、きれいな白髪の老婦人という表紙、初見では優しくて可愛いおばあちゃんに見えるんですよ。ところがね、読了して見直すとあらビックリ、主人公・正子が飽くなき自己実現欲と活力で不敵な笑みを浮かべてるようにも見えるんです。それに気付いて、ニヤニヤしちゃいましたね~。 結婚前は映画女優だった柏葉正子は、70代に入ってシニア俳優専門の芸能事務所に所属し、髪を綺麗な銀髪に整え、CMに大抜擢され、注目の人となる。だが、家庭内別居していた夫が死亡し、その「お別れの会」の際の発言が炎上して世間から大バッシングを受け、芸能事務所も契約解除されてしまう。夫の大ファンだという若い娘・杏奈が押しかけてきて、なし崩しに一緒に暮らすうちに、売りたいと思っていた豪邸は売れず、生活のために家の中のものをメルカリで売り捌く日々。ある日、杏奈とディズニーランドを訪れ、ホーンテッドマンションに着想を得て「自宅をお化け屋敷にすること」を思いつき、杏奈や近所の人々や息子たちの協力を得て、お化け屋敷運営を始める・・・。 最初は「なんで夫のお別れの会の時に、あんな発言しちゃうのかなぁ、…

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『口笛の上手な白雪姫』/小川洋子 ◯

小川洋子さんの作品を読むのは、久し振りです。ちょっとだけ現実とズレていて、そのささやかな違いがキラキラと輝くような美しさと、ズレからくる密やかな不穏さのバランスが絶妙だなといつも感じているのですが、本作『口笛の上手な白雪姫』も、そんな穏やかで静かな物語が8編、描かれていました。 この繊細で浮遊感のある物語を堪能するには、心の余裕というかゆったりと読むことを楽しめるペース配分(生活とか気持ちとかインプット&アウトプットのバランス)が出来てないといけないかなぁ・・と感じました。最近、わーっと勢いで読書をしすぎていた気がします。雑に読んでいたということではなく、しっかり楽しんでいたのですが、本作を読むようなペースが整ってなかったかもしれません。ちょっと残念。それでも、やっぱり読み進むうちに、優しくて少し淋しくて、でも登場人物たちの間にそっと流れる温かな交流が胸にしみ込んでいくような感じが伝わってきて、読んでいて心地よかったです。 「先回りローバ」吃音の少年の視界に現れる、不思議な小さな老婆。彼女との交流。「亡き王女のための刺繍」小さな洋裁店のりこさんは、素晴らしい刺繍をする。「かわいそうなこと」ささやかな出来事を一つ一つ、ノートに記す。かわいそうなこと。「一つの歌を分け合う」息子をなくした伯母と行った「レ・ミゼラブル」。彼女の涙を思い出す。「乳歯」迷子になった子供は、不思議な男と聖堂のレリーフを眺める。「仮名の作家」作品に傾倒するあまり、作家の領域を犯すファン。「盲腸線の秘密」曽祖父と孫は、廃線の危…

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『遠巷説百物語』/京極夏彦 ◎

なんと、11年ぶりですよ、〈巷説百物語〉シリーズを読むのは。相変わらず凶器レベルの製本でプレッシャー満載、それでもやはり〈人のなせる罪悪〉を〈人ならぬ者の仕業〉としてつける始末の鮮やかさには、グイグイと惹き込まれましたねぇ。ちょっと時間かかっちゃいましたけど(笑)。京極夏彦さんの『遠巷説百物語』、懐かしい面々、新たな登場人物、遠野という土地の特性に因む物語を、堪能いたしました。 本作では、盛岡藩遠野保を舞台に、6つの物語が語られる。それらは、まず章タイトルの怪異の絵と出典の文章があり、次に「譚(はなし)」として遠野の言葉でその怪異についての昔語りが入り、その次に「咄(はなし)」として宇夫方祥五郎が聞き集める市井の噂話があり、その次に「噺(はなし)」として事件の当事者たちの体験があり、最後に「話(はなし)」として「噺」で行われた怪異の仕掛けとその始末の行方を祥五郎が迷い家の仲蔵に尋ね聞かされる、という決まった形をもって構成されている。どれもが「はなし」でありながら、一つの事件を語るものでありながら、それぞれが持つ真実は違う。誰が、何を信じたいのか、どのように解決のつかぬ罪悪の始末をつけるのか、それぞれが飲み込むほろ苦さが根底にあった気がしますね。 「歯黒べったり」「礒撫」「波山」「鬼熊」「恙虫」「出世螺」、6つの怪異は、遠野特有のものではなく日本のあちこちで語られている割合メジャーな怪異である。そんな怪異の噂話が、遠野の地で発生し流布していく。その話を聞き集めているのが、本書の主人公である宇夫方…

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『さんかく』/千早茜 ◯

・・・この作品、評価が難しいわぁ。内容は、全然難しくないんですけどね~。タイトルの『さんかく』の意味は、三角関係を示すのかしら。と言っても、ある部分は恋愛感情というわけではなさそうで、ずるい関係かな。ちなみに千早茜さんの描く男性って、いつもは〈体温低そうで儚げ〉って感じることが多いんですけど、今回は違うタイプでした。 しかしまあ、なんとも食テロで、「誰か、こういうご飯を私に作ってくれないかなぁ・・・」という悲しい欲望(笑)が揺さぶられました。高村さんが作る食事が、豪華ではないけど、丁寧なんですよね。何気なく、色んな種類のおかずを冷蔵庫に用意してあったり、ご飯を土鍋で炊いてたり。でも、京都の町家でトイレとお風呂は外(中庭?)にあるような家での生活、味わいはあるんだろうけど、私には無理かな(笑)。 フリーで自宅で働いている高村さん、会社員の伊東くん、伊藤くんの恋人で大学院生の華。高村さんと伊東くんはかつてのアルバイト仲間で、久し振りに偶然再会し、なんとなく飲み仲間となった。華は大学で動物の体の構造の研究をしており、動物の解剖が入れば研究室から離れられないような生活をしている。 ・・・ここまでは、いいのよ。全く問題ないの。伊東くんは礼儀正しく控えめに高村さんと関わって、変な下心もなさそうで、いいなぁ・・・って思ってたのに。途中から、なんだか高村さんに甘えだして、高村さんもそれを許容する感じで、なんとなく流れで同居することになってしまう。え?なんじゃそりゃ。恋愛感情じゃなくて、食べる物の世話をしてく…

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『創られた心 ~AIロボットSF傑作選~』/ジョナサン・ストラーン編 ◎ (アンソロジー)

超絶文系人間のくせに、〈AIとかロボットが人間と関わる物語〉が大好きな私。『創られた心 ~AIロボットSF傑作選~』というタイトルからしてもう、直球ド真ん中って感じです!創元社SF文庫では、いろいろな種類のSFのアンソロジーを出してるんですねぇ。そして編者のジョナサン・ストラーンさんは名アンソロジストだそうですが、存じ上げませんでした。16編の、様々なAIやロボットやアンドロイドなどの人工的に作られた知能を持つ機械あるいは装置の物語が詰め込まれた、非常に興味深いアンソロジーでした! とりあえず、いろいろな名称がありそれぞれ細かくは違うと思うのですが、ワタクシ文系人間なので難しい分類を理解することが出来ません。ということで、それぞれの物語に出てくる「創られた心」の持ち主たちを総称して〈ロボット〉あるいは〈AI〉と呼ばせて頂くことにします。 「働く種族のための手引」/ヴィナ・ジェミン・プラサド職種の全く違うメンターロボットと新人ロボットのやり取り。ラストが可愛い。「生存本能」/ピーター/ワッツAIの生存本能VS人間。「エンドレス」/サード・Z・フセイン空港運営AIが吸収された先は・・・「ブラザー・ライフル」/ダリル・グレゴリイ戦争の時に犯した失策のトラウマにとらわれている男。「痛みのパターン」/トチ・オニェブチ訴訟資金を回すために、仕組まれた状況。「アイドル」/ケン・リュウ裁判に勝つために、陪審員を想定した仮想人格を組み上げる弁護士事務所。「もっと大事なこと」/サラ・ピンスカースマートハウスでの事…

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『トランクの中に行った双子』/ショーニン・マグワイア ◯

前作『不思議の国の少女たち』で重要な登場人物であった双子のジャックとジリアンが、本作『トランクの中に行った双子』の主人公。彼女らがどのようにして不思議の国へたどり着き、そこでどのように生き延び、そしてどのようにして現実世界に戻ってきたかが描かれる。ショーニン・マグワイアさんのファンタジー世界は、甘っちょろさのない厳しさの中に、希望と絶望が存在していました。 子供を、自分のステータスを飾る一つの〈モノ〉のように扱っていた夫婦に抑圧されてきた双子の姉妹、ジャクリーンとジリアン。ある日彼女らは、屋根裏部屋にあったトランクの中に階段を見つけ、そこから〈異世界〉である「荒野」に足を踏み入れる。姉のジャクリーンはマッド・サイエンティストの弟子の〈ジャック〉になり、妹のジリアンは荒野を支配する吸血鬼の養い子の〈ジル〉となる。時は流れ、本物の吸血鬼になることを望んだジルは姉が愛した村娘・アレクシスを惨殺し、吸血鬼に見放され、村人たちに追われる。ジャックはジルの手を取り、逃走の果てに〈現実世界〉に戻ることになる。 親が子どもたちを自分の装飾品のようにし、1人は「きれいな女の子」もう一人は「男の子にも負けないぐらい活発な子」として、期待という名の押し付けで、逆らうことも許さない育て方をしてたっていうのが、腹立たしてならなかったですね。生殺与奪を握っている親からそんな抑圧を受け、それでも認められたいと反抗することも出来なかった小さな女の子2人を思うと、切ないです。そんな彼女らが、厳しい「荒野」の地で、それぞれ望んだ…

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『魚舟・獣舟』/上田早夕里 ◎

遠い遠い未来で、分岐した先の世界で、〈ひと〉はどこへ行こうとしているのか。なにを求めているのか。いや、〈ひと〉だけではない。すでに〈ひと〉と〈人工生命〉や〈動植物〉や〈妖怪〉の境界が曖昧になったこれらの世界で。上田早夕里さんの描く、ディストピア感漂う世界の物語が、6編。狂おしいほど没頭し、胸の痛みを実際に感じながら、『魚舟・獣舟』のそれぞれの物語を、非常に堪能いたしました。 「魚舟・獣舟」自分の双子の片割れが魚舟となり、魚舟になれなかったものは獣舟となって、陸に上がろうとする。人類がそんな進化を遂げた世界で。「くさびらの道」あらゆる生物に寄生する茸が蔓延し、寄生され死亡した人間は哀しく恐ろしいものに姿を変えるという。「饗応」出張の時に、いつも泊まるホテル。別館に案内された貴幸は、風呂に入り夕食を摂る段になって、飼い猫と再会する。「真朱の町」追われて逃げ込んだ町は、妖怪と人間が共に存在する町であった。連れていた子供を攫われた邦雄は妖怪の手を借りて、取り戻そうとする。「ブルーグラス」思い出を置いてきた場所が、環境保全のため閉鎖される予定地になった。「小鳥の墓」女を数多く殺して広域手配されている男の少年時代。教育実験都市の闇の不文律。 一行ずつ、あらすじのようなものを書いたけれど、そんな簡単に語れる物語ではありません。えぐさのない苦味とのようなものがありました。読後感に切なさや苦さはあるのに一抹の清涼感があって、どの物語にも、かすかな虚しさと諦念が漂っている気がしました。登場人物たちにはどうすること…

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『そこに無い家に呼ばれる』/三津田信三 ◯

三津田信三さんの実録風ホラーですよ。毎回「フィクションなのは、わかってるんだけど!!」とぎゃあぎゃあ言い訳しながら、それでもやっぱり怖がっちゃう系統の作品なのですよ。『そこに無い家に呼ばれる』んだそうですよ。呼ばれて、無いはずの家に入り込んで恐ろしい目に合う話、無いはずの家がある土地に侵入して恐ろしい目に合う話、心療中の患者が消えてしまった話、一言で言ってしまえばとても簡単なのに、これらの関連性を作家・三津田さんが解釈すると・・・。ヤバいです。語彙力消えるレベルで、ヤバいです。 先述した「あの家に呼ばれる 新社会人の報告」「その家に入れない 自分宛ての私信」「この家に囚われる 精神科医の記録」という3つの記録が、三間坂氏(怪談愛好家の出版編集者)の実家の蔵から発見されたことから、物語は始まります。この3つの記録の合間に三津田さんと三間坂氏の会合の様子が挟まれ、毎度のごとく脅しのような警告がされるのですよ。「これらの記録を読んでいる最中に、なにかが「一つずつ減っている」または「増えている」ことに気づくことがったら、読書は中止した方がいい」と。「はいはい、毎度の脅しですね~、もう慣れましたよ~、そんなの全然怖くありませんって~(笑)」と、言いたいところなんですが、妙に怖い。というのも、ワタクシの身の回りでちょっとした変化が起こりまして、モノが減ったんですよ。必然的にね(笑)。「気付いたら」レベルじゃなく「あからさまに」なので、恐れる必要はないんですけどね。ただ、この警告内容知らないのにこのタイミング…

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『最高のオバハン ~中島ハルコはまだ懲りてない!~』/林真理子 ◎

前作『最高のオバハン ~中島ハルコの恋愛相談室~』に引き続き、フードライター・いづみをお供に、様々な人達のお悩みに解答を与えていく女社長・ハルコ。本作『最高のオバハン ~中島ハルコはまだ懲りてない!~』でも、相変わらずの押しの強さでグイグイくる調子は変わってません。タワマン住まいのセレブでも、韓国人コーディネーターでも、美魔女でも、ハルコが「甘ったれてんじゃないわよ!」「こうしたほうが、有利じゃないの」と正論やハルコ哲学をぶん回した末に、力技で解決解答を与えられていきます。・・・まあ、その勢いの凄さやアクの強さ、私みたいな平々凡々な小市民はとてもじゃないけど、相手にして貰えそうにもありません(笑)。林真理子さんの描くオバハン、キャラが濃くて今回もしっかり楽しませていただきました! いづみとしては、「なんだかハルコさんに振り回されて、割りを食ってる気がする、美味しいものが食べられるといってもだいたい割り勘だし」なんて言ってますが、ハルコはいづみの悩みにも何回もアドバイスを与えてるので、そんなに損してないと思いますよ(笑)。何でもズバズバ言っちゃうハルコには女友達がいないので、なにかっちゃ誘いやすいいづみの存在は、案外大事みたいですし。ハルコは前作でも今作でも盗難にあってるんですけど、動揺してるときの頼りにするのがいづみということで、いいコンビなんでしょうね。ちょっと年齢の差があるのも、逆にいいのかもですね~。 美味しいものを食べながらのハルコ流の「人生の薙ぎ倒し方(笑)」を聞いてると、なんだか読…

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