『女たち三百人の裏切りの書』/古川日出男 〇

世に流布している『源氏物語』の「宇治十帖」は贋物であるとして、没して百余年の紫式部の亡霊が立ち現れる。「ほんものを語ろうぞ、物語として書にし、世に広めよ」と宣言して・・・。古川日出男さんが描き始めた〈本物の「宇治十帖」〉は、亡霊の語る物語の域を超え、夢と現と虚と実を増幅させながら、時代をの趨勢を飲み込んでいく。『女たち三百人の裏切りの書』というタイトルに違わず、裏切る女たちの物語であり、読者である私も何度も裏切られる、魅力的な物語でした。 とは言えですね~、非常に難しかったですわ~。最初の方は絡まない別個の物語がいくつもあり、たぶん本筋であろう「語る紫式部の怨霊」の物語も謀りと偽りを幾つも内包し、その果てに増えていく・・・。更に、文体や使われる言葉が難しい(笑)。そして、自分の事情ですが図書館の延長できない予約本を先に読まなきゃだったり、外出のお供にしにくい大きさ重さゆえになかなか読み進められず。たぶん1か月以上かかって読み終えたという状況。・・・時々、筋を見失ってたため、物語の流れを理解するのに時間がかかってしまいました。でも、それでも「読むのや~めた」とか「時間があるときにまとめて読もう」とかにはならなかったんですよ。「紫式部の怨霊が語る」という設定の妙であり、古川さんの筆力の凄まじさですなぁ。 きちんと筋を追って行こうとすると、複雑すぎて私には文章化できません!こういう時は、とっとと白旗を上げてしまうに限りますな(笑)。文章は独特だし、使われる言葉も難解なものがたくさんあり、展開も複雑・…

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『魔王城でおやすみ(5)』/熊之股鍵次 ◎ コミックス

熊之股鍵さんが描く〈魔王城でおやすみ〉シリーズの5冊目『魔王城でおやすみ(5)』。日々、快眠を求めて魔族たちを蹂躙するスヤリス姫(笑)。ホントにホントに姫ったら、人間界に帰る気全ッ然ないよねぇ・・・!!姫の傍若無人はとどまるところを知らず、魔族たちの姫大好きぶりもとどまるところを知らず、魔王城内の混乱は加速するばかり。でも、みんなその混乱を喜んで受け入れてるよね(笑)。 5巻冒頭に、姫が自分が見た悪夢を語り出します。幼馴染の「アなんとか君」、方向音痴でドジでおまぬけで・・・そして、姫の婚約者なのだという。その話を聞いた魔族十傑衆たちは、口々に「アなんとか君ヤバい」「アなんとか君今でもバカやってるだろうな」などと笑い合う。ただ一人、「あくましゅうどうし」だけは、その「アなんとか君」が誰か見当がついた様子(笑)。 勇者ア〇〇キと次に戦う「かえんどくりゅう」を思い切り激励してました。 だけど、勇者と戦ったかえんどくりゅうは、度重なる不運に見舞われ、ものの見事に敗退。沢山持って行ったはずの回復ポーションは姫に飲み干され、アイテムは(アルラウネのうっかりにより)アボカドにすり替わり、魔導書は(レッド・シベリアンのうっかりにより)漫画にすり替わり、姫型戦闘ロボットは(魔王の姫へのおもねりにより)魔改造され、爆弾は(魔が差したあくましゅうどうしにより)自爆系の強力なものに変えられ、・・・負けちゃったのである。魔王城幹部たちは自分の仕業とわかってて、姫のせいにする…いいのかソレ(笑)。 いいことをして褒め…

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『サムライ・ダイアリー ~鸚鵡籠中記異聞~』 天野純希 〇

実在の尾張藩士・朝日文左衛門が26年間書き続けた日記の「秘本」が綴られる『サムライ・ダイアリー ~鸚鵡籠中記異聞~』。表本は実在してて、当時の世相・風俗を知る貴重な資料なのだそうですが、こんな異本があったら、こっちの方が世の中には受けたでしょうね(笑)。天野純希さんの描くダメダメ藩士・文左衛門の日々が、なんとも情けなくそれでいて「しょうがない人だ…」と思えてしまうという、肩の力の抜けた楽しい日記でした。 冒頭に『鸚鵡籠中記』の異本を探す若者たちが、とある女性を訪ねてきたところから、物語は始まります。すぐに、若き日の文左衛門の日記が始まり、そして文左衛門の死後、その師から秘本はそのとある女性に託されたところで、物語は終わります。 しかしねぇ(笑)。文左衛門、ホントにダメダメ藩士なんですわ。まあ、武士が暇を持て余す太平の世の中ってのは、いいことなんですけどね(^^;)。武道を習っても上達せず、町中を歩けば鞘を残して刀を盗まれる、芝居見物に入れあげ(倹約令施行中の時代である)、格好をつけてもめごとに頭を突っ込んでは追い回され、酒を過ごしては失敗を繰り返す。せっかく嫁に貰えた初恋の相手とも自分の過ちがきっかけで別れる羽目になり、次に貰った若い後妻とも関係が上手くいかない。それでも、おおらかな性格が幸いしてか友人は多く、娘たちには(心配されつつも)慕われている。 文左衛門が書く秘本の方の日記が本書なのだけれど、まあ・・・ホントに何でもかんでも書いてある。世の中の噂話、好きになった女の話、芝居見物に明け…

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『室町繚乱 ~義満と世阿弥と吉野の姫君~』/阿部暁子 ◎

室町時代の知識があまりないまま読み始めたのですが、阿部暁子さん、大変面白かったです。 世間知らずだった南朝の皇女・透子の成長を描いた『室町繚乱 ~義満と世阿弥と吉野の姫君~』、相争う南北朝及び幕府という複雑な政治事情を背負った若者たちの苦悩と決意を咲き乱れさせる、力強い物語でした。 吉野の山奥の南朝から、北朝に寝返った楠木正儀を連れ戻すため、姿を少年に変え京に潜入した皇女・透子は、人買いに攫われたところを美少女と若武者に救われる。 ところがこの二人、実は時の将軍・義満とその小姓である猿楽師の鬼夜叉(のちの世阿弥)。あっさり正体を知られてしまった透子は、椿丸として義満の小姓を務めることになる。 北朝憎し、幕府憎し、おのが南朝こそ正統であると凝り固まっていた透子だが、義満・鬼夜叉と共に行動するうちに世の中を知り、争い合うことで国と民草が疲弊していく事実を知っていく・・・。 最初のうちは、透子の貴い身分ゆえの思慮の足りなさや世間を知らない言動に、ちょっとイライラしてたのですが、現状を知り、亡き父の思いを知り、世の平和を分かち合おうと思うに至る成長を読むにつれ、清々しい気持ちになって来ました。 鬼夜叉に対する同僚たちの嫌がらせに対してまっすぐに怒りを示したり、鬼夜叉の弟・四郎とのやり取りが微笑ましかったり、育ちの良さからの美しいほどの真っ直ぐさと心優しさも持っているんですね。 そんな透子が、自分を取り戻すという名目で伯父宮・宗良親王が起こした「義満拉致」の現場に乗り込み、宗良親王…

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