『あとは野となれ大和撫子』/宮内悠介 ◎
いやぁ、面白かった!!大統領が暗殺され、議員たちは一斉に遁走、残されたのは後宮(と言ってもいわゆる妾女の住処ではなく女性の教育機関)の女性たち、という中央アジアの架空の国・アラルスタンを舞台に、その後宮の女性たちが国を守り支える奮闘を描いた、爽快な物語。『あとは野となれ大和撫子』という軽快なタイトル、高等教育を受けた女性たちの苦悩はありながらも溌溂とした働き、弾む会話、若さゆえの無謀さ大胆さ、大変面白く読ませていただきました、宮内悠介さん!!イスラム世界で、これだけ女性が活躍する(しかも政治とか軍事とかに)というのが、意外ながら清々しくて気持ちよく読めました!
干上がってしまったアラル海に自治共和国として発足した、アラルスタン。砂漠の環境改造技術を手に、各地の移民、遊牧民を住民として受け入れ、国家の形を整えてきた。その独立記念日の大統領演説の真っ最中に、その大統領が狙撃され、死亡。国家の危機に奔走するはずの議員たちは雪崩を打って逃走し、混迷を極める事態―― に一石を投じたのは、後宮の若きリーダー・アイシャとその仲間たちだった。
反政府ゲリラは攻め込んでくる、隣国は油田を占拠する、そんな外憂だけではなく、同じ後宮の上の世代からの横槍や、若い女たちと侮る官僚たちなど、内患も尽きない。そんな中で、大統領代行・アイシャのリーダーシップや文化相・ジャミラの機転、国防相・ナツキの大胆な働きが活き活きと描かれ、次々と訪れる困難をしのぐ様子を、こぶしを握って応援しながら読んでいました。
政情安定しない中央ア…