『わざと忌み家を建てて棲む』/三津田信三 ◎

本作『わざと忌み家を建てて棲む』は、『どこの家にも怖いものはいる』の続編で、作家・三津田信三氏と怪異譚愛好家の編集者・三間坂氏がとある怪異を読み調べるうちに、身の回りに怖ろしい怪異が迫ってくる・・・という展開は同様ですが、まあ、相変わらず油断が出来ません。三津田信三さんの当時(?)の著作の状況や、『どこの~』の反響についてなどがさりげなく挟まれるが故に、微妙に現実的な感じがして、前作の時も「いやいや、これは実話じゃないし、怖がってる自分がアホらしいし!」と言いつつも、だいぶビビりながら読んでたんですけど、本作もやっぱり怖かった・・・。 三間坂氏の実家に怪しい女が訪れ、とある記録があれば買い取りたいと申し出たという。だが、応対した三間坂氏の伯母はその女に朧げな印象しか思い出せない・・・と言う。実家の蔵を探索した三間坂氏は、いわくつきの住居を無理矢理継ぎ接ぎし建設した〈烏合邸〉という邸宅を調査した記録を2つ発見し、三津田さんと調査を始めるのだが・・・。 「黒い部屋 ある母と子の日記」烏合邸の「黒い部屋」と呼ばれる部屋に居住することになった母子。「白い屋敷 作家志望者の手記」「白い屋敷」と呼ばれる家屋に居住し、怪異に対する記録を取りながら、小説を書こうとしていた青年。「赤い医院 某女子大生の録音」「赤い医院」と呼ばれる歯科医院兼住宅を、録音しつつ調査する建築系学科の女学生。「青い邸宅 超心理学者の記録」「青い邸宅」と呼ばれる家屋に心霊現象調査のため訪れた女性心理学者は、そこで「サトオ」と名乗る少年と…

続きを読む

『夫の墓には入りません』/垣谷美雨 〇

以前、『老後の資金がありません』を超絶切実でいずれ我が身かも・・・とビクつきながらも読んだワタクシですが、本作『夫の墓には入りません』も、タイトルからしてもう非常に〈攻めてる〉ですよ、垣谷美雨さん・・・。これ、嫁の立場と姑の立場で、読み方や感想が全然違ってきそうですね・・・。もちろん私は嫁の立場です。そして、読んでるうちにどんどん背筋が冷えて来ました。ホラーじゃないんですけどねぇ、この作品(笑)。 46歳の若さで、夫が急死。夫婦仲が冷えていた夏葉子は、これで晴れて自由の身・・・になったはずが、「高瀬家の嫁」という立場にがんじがらめにされていることにだんだんと気付いていく。夏葉子の家に勝手に出入りしたうえ夏葉子の不在時に他人を入れる姑、訳アリ風をちらつかせる女の登場、夏葉子の動向を姑に報告する人もおり、監視されているかのよう。重厚な仏壇が運び込まれ、立派な墓には自分の戒名まで刻まれ、パートのタウン誌記者という夏葉子の仕事を軽んじる義両親、義実家にはもう何年も家から出ない未婚の義姉がおり・・・。 畳み掛けるねぇ・・・。読んでて、どんどん胃が痛くなってきました。夏葉子とは、ほぼ同世代。ダンナは健在ですが、いつ何があるかは、わかりもせんものねぇ。私に夏葉子と同じことが起こったら、と思うと、ホントにぞっとする・・・。そうならないように、祈るしかないのですが。準備しておくことでもないですしねぇ。まあ、こんなことが起こったら…こういう方法もあるぐらいの心構えにはなったかもしれませんね。 義実家との関係は悪…

続きを読む

『倒れるときは前のめり ふたたび』/有川ひろ ◎(エッセイ)

有川ひろ(有川浩)さんの作品、久しぶりだなぁと思ってたら、今年の初めに『ニャンニャンにゃんそろじー』、読んでましたね(^^;)。アンソロジーですけど。本作『倒れるときは前のめり ふたたび』はエッセイ集第2弾ということで、まずは何故〈有川浩〉から〈有川ひろ〉にペンネームが変わったか、という話から始まります。 実をいうと、「ペンネームが変わったこと」はもしかして「作品の版権を変えたこと」などと関係があるのではないかと、ちょっと不安に思ってました。そういうマイナスなことではなく、〈ご縁を大切に〉というモットーの元、変えられたということを知り、安心しました。お友達のお子さん、素敵なご縁をありがとう。 そういう素敵な話もあれば、私の大好きな〈シアター!〉シリーズが2冊目で未完のまま、もう描かれないだろうことも知ってしまい、とても残念に思っています。演劇という〈夢〉の世界に降りかかるシビアな現実、それに立ち向かうキャラの立ちまくった登場人物たちの丁々発止のやり取り、すごく好きだったんですけどねぇ。ホントに、残念です。誰が、何を言ったんだ!・・・・うううう・・・・。 『倒れるときは前のめり』の時も、有川さんの書かれる主張にうなづきつつも〈咀嚼は自分で!〉を胸に強く刻み付けたものですが、今作でも「時間は有限で、貴重な資源である」「同一化願望を押し付けてはならない」など、たくさんの有川さんなりの思いが書かれていて、読みながら「私も「私」として立ってやっていくために、芯を通した生き方をしていきたい」という思いを…

続きを読む

『夫のトリセツ』/黒川伊保子 〇(実用書)

『妻のトリセツ』で一世を風靡した、黒川伊保子さん。当初は予定がなかったのだけど、読者の要望が強く、満を持して出版されたのが本書『夫のトリセツ』。黒川さんは人工知能研究者で、「男女の脳の働き方は真逆である」「女性脳は繁殖のために遺伝子の多様性性を求める」と謳っていて、それに基づくと「妻から見て〈夫はひどい〉というのは濡れ衣なんだけど、自分の意識や夫の意識を変える方法はありますよ」、というのが本書の趣旨。なんでこんな本読んでるかというと、我が夫に対するワタクシの「このままでは夫源病で発狂する!!」をどうにかしたかったからなのですが・・・。 男性脳と女性脳の脳の働き方(搭載OS?)の違いは、なんとなく理解できました。でもでも、「脳の働き方が違うから仕方ないよね~」と達観できないんですよ。ぜひ〈共感〉して欲しいし、変わってほしいんですけど、凄~く頑固なんですよ、ウチの夫。そういうところをどうにかしてもらう方法は書かれてませんでした・・・いや、書いてあるにはあったけど、我が家のケースにはちょっと・・・(泣)。たぶん「共感して」と言ったら「なんで?問題解決した方が早いだろ、共感なんてムダムダ」って言われる・・・はぁ。ちなみに、『妻のトリセツ』を夫に読ませる、というのは絶対に無理ですね。・・・あれ、なんで私こんな愚痴を読書レビューに書いてるんだ(笑)。 第2章 使えない夫を「気の利く夫」に変える方法も、第3章 ひどい夫を「優しい夫」に変える方法も、わかるんだけど・・・対頑固者には、実践はなかなか難しいよ!(…

続きを読む

『私の頭が正常であったなら』/山白朝子 〇

山白朝子さんの作品というと、『エムブリヲ奇譚』などの〈エムブリヲ奇譚シリーズ〉の和風幻想譚のイメージが強いので、本作『私の頭が正常であったなら』は、ちょっと意外でした。「現実世界にちょっとだけ不思議な現象が紛れ込んでいる」感じでした。 でも、その「ちょっとだけ不思議な現象」は確かに「ちょっとだけ」なのに、私たちの知ってる現実の裏側にある別の世界のような印象がふつふつと生まれてきて、いつの間にかするりと向こう側に連れていかれています。怖くはないけど、違和感があって、それでいて懐かしい感じ。もしかしたら、本当は自分は「向こう側」の人間だったのかもしれない?と、ちょっと不安になったりもして(笑)。 「世界で一番、みじかい小説」ある若い夫婦にだけ見える幽霊、その理由。そして妻の思い。「首なし鶏、夜をゆく」仲良くなった女の子が、大事に育てていたもの。そして残されたそれ。「酩酊SF」酩酊したら時間混濁が起きる。その末に起きた事件。「布団の中の宇宙」中古の布団から、失踪した男。「子どもを沈める」だんだん「あのこ」に似てくる我が子。「トランシーバー」息子の遺品のおもちゃのトランシーバー。幻聴とわかっていても。「私の頭が正常であったなら」精神が不安定な私にだけ聞こえてくる、助けを求める子供の声。「おやすみなさい子どもたち」死ぬときに見える走馬灯を上映する映画館で。 どの物語も、〈生死の狭間を越えるもの・越えられないもの〉の切なさを描いていたように思います。越えるもの、越えられないもの、どちらが正しいとか良いと…

続きを読む