『異形のものたち』/小池真理子 〇

『怪談』を読んだ時に「小池真理子さんならドロドロの恋愛ものの方が好きかも」とか言ってたにも関わらず、本作『異形のものたち』も、ホラー系です(^^;)。書評や帯の惹句に仄昏いものを感じると、ついつい〈読みたい本リスト〉入りさせちゃうんですよねぇ、私(笑)。 『怪談』同様に、物語の人物たちは切実な恐ろしさを体験しているのに、読んでいる私はそれと距離があって、妙な感覚でした。大抵私がホラーを読むと、〈私の後ろに何か蟠っている・・・、振り向いたらダメだ・・・〉とか〈しんしんと怖いんだよッ・・・!〉とか、そういう感じになるのですが、小池さんの描く「怖ろしい話」は何故か、ガラスの向こう側で起きている出来事のようで、リアルなのに私に迫って来ない。いえ、物語としては、とても良いのですけど。小池作品と私の相性は、いいのかしら、悪いのかしら(笑)。 どの物語も、あまり怪異を信じないタイプの人が主人公。最初はそれらを否定する主人公たちは、いずれ受け入れざるを得なくなり、そしてその怪異に引きずり込まれる。何かが起こるラストもあれば、何も起こらないまま(ただし怪異は厳然として彼らを飲み込んでいる)終わる話もあり、オチのつかない居心地の悪さを感じたりもしました。 う~ん、どれが良かったのかなぁ・・・。「面」の、農道を歩いていたら突然無音になり、向こうから白い着物の女が歩いてきて、すれ違う時にみたら般若の面をつけていた・・・というシチュエーションは、全くリアルじゃないのに、その一瞬の無音状態が想像できてしまって、怖かった…

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『ロボット・イン・ザ・ガーデン』/デボラ・インストール ◎

読書レビューサイト【トドの部屋】todo23さんからお勧め頂いた本作、『ロボット・イン・ザ・ガーデン』。機械技術がかなり向上し、家事アンドロイドなどが普及している世界設定で、ダメダメ大人な主人公・ベンとロボットのタングが旅をしながら成長していく物語だったのですが、とても面白かったです。著者・デボラ・インストールさんはイギリスの方なのですが、本作は世界各国語に翻訳されて、多くの読者を魅了したとのこと。そしてもちろん、ワタクシもその一人なのであります♪ いやもう、タングが可愛いというかなんというか。完全に、ちびっこなのですよ。最初はまともに会話も成立しなかったのに、少しずつ言葉を覚え会話にもバリエーションが増え、そのうちわがまま言ったりかんしゃくを起こしたり、拗ねたりわめいたり。そうかと思えば、健気な可愛さを溢れさせる。我が子の小さかった頃を思い出して、ほっこりしました。当時は「早くイヤイヤ期終わってくれ~」とイライラしたりしたものですが。あのちびっこの、ご機嫌な時の笑顔の破壊力(笑)を思い出してしまって・・・、ホントにたまりませんねぇ。 30代半ばになっても定職にもつかず、ぶらぶらしているダメダメ大人なベンの家の庭に、ある日手作り感満載のロボットが現れた。妻のエイミーは、ロボットではなくて家事アンドロイドが欲しい、ロボットを処分してきてくれというが、片言で意思疎通もろくに出来ないそのロボット・タングを気に入ってしまったベンは、タングの製造元を探したいと言い出す。もともと冷え始めていた夫婦の仲は崩…

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『うつくしい繭』/櫻木みわ 〇

書評か何かでSFとファンタジーの融合みたいな紹介をされていた、櫻木みわさんの『うつくしい繭』。現実的な物語の中に、不思議な出来事がいつの間にか浸透し、軽やかな文章からその世界の光景の美しさ、陽光の眩しさと大気の熱と湿度が感じられました。なんと、本作がデビュー作とのことですよ。それで、この描写力。これからが楽しみな作家さんですねぇ! 「苦い花と甘い花」東ティモールで「声」が聞こえる少女が下した決断。「うつくしい繭」裏切りにあい傷ついていた私は、ラオスの奥地で特別な施術をする施設で働き始める。「マグネティック・ジャーニー」兄を救う薬剤を求めて、導かれるように南インドを訪れる。「夏光結晶」九州・南西諸島出身の友達と、その故郷で不思議な貝と出会った。 どの物語の主人公も、それぞれに傷ついた女性たちで(「苦い花と甘い花」は少女だけど)、状況に流されるように物語の舞台に上がるけれど、自らの決断でそれぞれのラストを迎える様子が、読んでいて心強かったです。ちょっと「苦い花と甘い花」に関しては、やめておけばよかったのに…とは思いましたが。彼女はこれからをどう切り開いていくのだろう、ということは気になりましたね。 「夏光結晶」が、一番好きです。不思議な貝を見つけて食べ、体内から吐き出された珠を他者が口に含めば、その人の記憶や意識を体験することが出来る・・・という設定。ミサキとみほ子の性格が全然違うのに、惹かれ合い仲良くなっていく様子も読んでいて心地いい。そして二人で味わった、170年以上前の医学者・貝類研究者の…

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『祝祭と予感』/恩田陸 ◎

あの『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ6編。読んでいてい楽しくて、それでいて緊張して、気付けば1日でイッキ読みでした。恩田陸さん、ホントすごい作家さんです。音楽を愛し、音楽に愛される人々を描いた『祝祭と予感』。どの掌編の主人公の音楽に対する気持ちの深さにも、それぞれに清々しい美しさがありました。 6編とも、本当に素晴らしかった。『蜜蜂と遠雷』というコンクールの数日を描いた作品の主要でない登場人物たちも含め、さらに掘り下げて描くエピソードの数々にワクワクしたりキリキリしたり、ずっと胸が高鳴っていた気がします。 章タイトルとその概要が帯に書かれていて、各章のあらすじについて私が書くとそれの劣化コピーになりそうですから、やめておきます(笑)。 6編の中で一番好きだったのは「鈴蘭と階段」ですね。コンクール中、亜夜を支え続けた、亜夜の恩師の娘でバイオリン奏者の奏(かなで)が、ヴィオラに転向した後の〈自分の楽器選び〉の物語です。〈楽器選び〉と書きましたが、〈楽器に選ばれる〉物語でもありましたね。そうか~、真の演奏者は楽器に選ばれるのねぇ・・・でも何となくわかります。というか、この掌編を読んだら、とても納得がいきました。電話越しにそのヴィオラの音を聞いた奏の衝撃が、そのまま私にも衝撃となった気がして、思わず胸を押さえてしまいました。運命に引き寄せられるように奏の元へたどり着いたその楽器を、初めて奏本人が演奏した時の、本人はもちろん先生たちの反応が、さらなる奏の演奏家としての飛躍を感じさせ、そして音楽そのものの広が…

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『西方冗土』/中島らも 〇

この本の出版をもって、もう関西については書かない、と中島らもさんは本文中で宣言していました。関西の人が関西を語る、というのは〈関西礼賛〉だったり〈関西卑下〉だったりが多く、ニュートラルなものが少ないと私は感じているのですが、本作『西方冗土』は・・・というと、判断が難しかったですね。・・・ていうかですね、この本最初の出版が1991年、文庫化が1994年て、さすがに情報が古い(笑)。何故これが、私の〈読みたい本リスト〉に入ったのか・・・?? 実は水無月・R、立派な(?)エセ関西人であります。生まれも育ちも他地方ではありますが、関西に住んで10年ほど(人生の中で2番目に長いし、何事も無ければ一番長く住むことになる)。インチキ関西弁を操るものの、やはり関西人の話のうまさには及びもつかないという、残念なエセ関西人(笑)。ネイティブ関西人て、ホントにすごいですよ。話は面白く、ちゃんとオチがあり、テンポがいい。その境地に至るには、どうしたらいいんでしょうねぇ・・・。 と、まあ、今一つ関西人になり切れない私、こういう本に弱いのですよ。なにかで紹介されてると、つい読んじゃう。そして後悔する(笑)。関西をたった1冊で理解しようなんぞ、おこがましい限りだったのでした・・・。 本作で中島らもさんが書いてるのは、1990年代の関西(大阪)。当時の大阪は、だいぶディープだったようです。今もその片鱗は残りつつも、だいぶ洗練されたのではないでしょうか。オシャレなお店が入っている百貨店やショッピングビルも、ここ数年でだいぶ増…

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『総理にされた男』/中山七里 ◎

中山七里さんの作品は〈悪辣弁護士・御子柴シリーズ〉しか読んだことがなかったのですが、本作『総理にされた男』は全く違った雰囲気で、ビックリしました。ずっとハラハラしどおしで、なんだかすごい勢いで読んでしまいましたわ~。 ある日突然、拉致同然に連れ去られた売れない役者・加納慎策は、時の総理大臣・真垣統一郎の代役を務める羽目になるのだが、次々に襲い掛かる難題を対処するうちに、未曽有の事態に巻き込まれてしまう。 要略するとこういう話でTVドラマなんかでもありそうな感じなんですがね。ま~とにかく次から次へと様々な問題が発生し、政治ど素人の慎策がいつ下手を打つかとビクビクし、ド素人だからこその発想の転換で切り抜けたり、真摯に国や国民を思い誠実に対処することで政治家たちの目を開かせたり、慎策の運の良さもあるけれど、人柄の良さというか誠実さ情の篤さがことをうまく運べたのかなぁと思いますね。 閣僚・野党・官僚(族議員)との丁々発止のやり取りは、ブレーンである官房長官・樽見や親友の経済学者・風間のレクチャーという土台はあるにしても、やっぱり役者の舞台度胸とセンスですねぇ。光ってます、ホント。これは、普通の人にはなかなかやりおおせることじゃない。更に言えば、慎策は地頭がいいんだと思いますね。いかに風間が分かりやすく解説してくれたとしても、理解しかつ自分の言葉で発言するのはそう簡単に出来ることではないし、自分に相対する人物を分析しどう対処するのが一番いいかを瞬時に判断するなんてのも、よっぽどの観察力と度胸と判断力が…

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『異人館画廊 ~透明な絵と堕天使の誘惑~ 』/谷瑞恵 〇

ついに、谷瑞恵さんの〈異人館画廊〉シリーズ、ターニングポイント。『異人館画廊 ~透明な絵と堕天使の誘惑~ 』は、とうとう主人公・千景の幼少時の「誘拐事件」の真相が判明します。本作のレビューは、私にはネタバレせずに書くことが出来ないので、申し訳ありませんがその旨ご了承くださいませ。 千景のもとに、図像術をほのめかすような脅迫じみた手紙が紛れ込み、千景は祖母の営む異人館画廊に集う、稀覯絵画愛好グループ・キューブのメンバーとともに、調査に乗り出す。心霊スポットにある絵が「人を不幸にする」と噂になり、訪れる人間が増えているという。調査を進めるうちに、「図像術を使った絵をボストンから持ち出した男・小原」「小原にマネージメントされているアーティスト・真柴」「彼ら二人に関与する、千景の父・此花伸郎」の存在が浮かび上がる。かつて、父の友人・犬飼に誘拐された千景は、犬飼に強要され図像術の絵を模写し、それを見てしまったと思われる犬飼は焼身自殺したことを思い出す。千景を救出しに来た透磨もその絵を見てしまったが、千景が自分のブレスレットについていたチャームととあるしぐさでその図像の印象を上書きし、透磨は悪意ある図像の影響を受けずに済んだ。その誘拐時、彼女の絵の断片を見、それを完全に再現できた隣家の少年が真柴であり、彼は成長し小原の助言を受けて「図像術の絵」を完成させ、公開しようとしていた・・・。 千景は「自分が悪意ある図像術の絵を模写し、それを見た人が自殺をした」という記憶に耐えられず、ずっとその記憶を封印してきた。…

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『世界はハッピーエンドでできている(4)』/下西屋 ◎ (コミックス)

2019年のベスト10記事にも書きましたが、この〈世界はハッピーエンドでできている〉シリーズって、素晴らしい。『世界はハッピーエンドでできている(1)』から裏切られることなく続く、登場人物(モノや人外も含む)すべてが幸せになれるラストが、本当に、大好きです。作者・下西屋さんの卓越した発想力、構成力、画力などなど・・・『世界はハッピーエンドでできている(4)』、今回も愛と笑いと涙が満載の、素晴らしい物語でした~! 今作で登場するのは、「ウサギとカメ」「かちかち山」「笠地蔵」「雪女」「ヘンゼルとグレーテル」「一寸法師と親指姫」。「ウサギとカメ」のウサミンちゃんの一途な可愛らしさは応援したくなってくるし、亀吉さんピュアピュアでかわいいし・・・もう、たまらんのう。その二人の間に波風が?な「かちかち山」のタマキさんの七変化・・・うん、どれもタマキさんなんだよね。人に合わせるタマキさんの七変化は、是非私も見習いたい(笑)。「笠地蔵」の地蔵ズの軽~いノリが楽しくて、隣の爺さんのひがみが少しずつ和らいでいく様子も、心温まる。「雪女」の雪女と准教授が子供のころ知り合ってたとか、もうホント運命ですよね!!「ヘンゼルとグレーテル」は、夢見がちなお父さんの発想にツッコミを入れるお母さんとか、猫魔女の家に来る猟師さん(あの人のおばあさんの若かりし頃の姿ですよね!)の筋肉ピチピチっぷりとか、ふらりと訪れる「白雪姫」の王妃様とか・・・もうホント大好き!「一寸法師と親指姫」の一寸くんの夢見るボーイに対して両生類と合コンしちゃう…

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水無月・R的・2019年読了作品 ベスト10!

2020年、あけましておめでとうございます! 気が付けば、年が改まってしまっておりました・・・。身の回りがバタバタしすぎて、新年の実感がない水無月・Rでございます。皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。 さてさて、去年の読了作品数は53作品。ぎりぎり週1冊といったところですね~。ちょっと少ないかな?今年はもうちょっと、読みたいです。読書の時間を確保するべく、日々頑張ろう、うん。 では、さっそくベスト10の発表を。 〈水無月・R的・2019年読了作品 ベスト10!〉 1位 『あとは野となれ大和撫子』 宮内悠介個性的な若い女性たちが大活躍!テンポが良くて、最高に面白かった!2位 『愛なき世界』 三浦しをん松田研究室の秘書さんの弟子になって、みんなを見守りたいです。3位 『熱帯』 森見登美彦モリミーらしすぎる、怪作。で、モリミーどこ行った~!モリミーがいない世界は困ります(笑)。4位 『死国』 坂東眞砂子人間の執念って、怖い。「死国」という設定、アリなんですよ、ワタクシ的に。5位 『ずうのめ人形』 澤村伊智コントロール不能な怖さ。人間が、一番、怖い。6位 『ディレクターズ・カット』 歌野晶午後味悪~い・・・。まさに、ディレクターズ・カットなラストにぞ~っとした。7位 『AX』 伊坂幸太郎殺し屋の話なのに、ほっこりして読了。8位 『RDG レッド・データ・ガール 氷の靴ガラスの靴』 荻原規子オチ要員は大事!陰陽師男子・高柳、残念なヤツ過ぎて、好きになって来た(笑)。9位 『抱卵』 堀真潮こ…

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