『あなたのゼイ肉、落とします』/垣谷美雨 〇

垣谷美雨さんの『あなたのゼイ肉、落とします』・・・。タイトルが、スゴイですよね・・・。リアル本屋さんで買うのに、ちょっとためらうような、開き直っちゃいそうな(笑)。『あなたの人生、片づけます』の大庭十萬里の妹、小萬里が「ダイエット指南」をするという物語なんですが、いわゆるダイエットのハウツー本ではありません。『あなたの人生~』の「心に抱えるゴタゴタ」と同様、「心のゼイ肉」を落とすことで、いつの間にか体重も減って行く、という物語です。 いやもう、「ケース1 園田乃梨子49歳」から、グサグサ刺さる(笑)。同じくアラフィフ、兼業主婦(乃梨子はフルタイム勤務で私はパートという違いはあるけど)、どんなに努力してもギリギリ現状維持(ちょっと気を抜くとすぐに増えていく・・・)、がもう、同じ過ぎて、身につまされる。小萬里の本にあるチェック項目、「私は空気を吸っても太る」に、私も力強くチェックをいれたかったですもん。いや、空気で太る訳ないのは分かってますよ?摂取カロリーが消費カロリーをオーバーしてるだけで、結局は意志が弱いとか、そういうことだって分かってますけどね・・・!!小萬里のカウンセリング?分析?のおかげで、乃梨子の負担になってることが少しずつ解消していくんですけど、思わず「いいよなぁ・・・そんなふうに上手くいかないもんなぁ、私の場合」という僻みが出てきてしまったりして・・・。まあ、物語ですからね(笑)。とはいえ、私は小萬里の指示に従えないダメダメなクライアントなんだろうな、とは思います。ははは。 ちなみ…

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『妻のトリセツ』/黒川伊保子 〇(実用書)

黒川伊保子さんの『妻のトリセツ』。新聞の書籍広告か何かで、このタイトルを初めて見た時は、「なんて失礼なタイトルだ!しかも女の人が著者ですって~?!」と、内容を知らないくせにむかっ腹を立てたのですが、のちに『夫のトリセツ』が出た時は「私の夫源病発症を防ぐことが出来るかも・・・!」という期待でいっぱいになって購入に走ったのでした(←ご都合主義なワタクシ)。で、読んで納得したり絶望したり(笑)し、「これは『妻のトリセツ』の方も、私が読むしかない!」ってことになったのでした。 「女性脳」と「男性脳」は、搭載OSが違うので、出来事に対する対処が違ってくるんだけど、それが妻にとっては非常にムカつくんですよ・・・っての、すっごい分かります。いや『夫の~』の時も納得しまくりつつ読んだのですが、なんせ本書は〈夫向け〉に書かれたもの。「そうよ!それよ!」感が、非常に深いです。黒川さん、失礼な~!だなんて言ってごめんなさい(笑)。 『夫の~』同様サクサク読めるので、内容についてダラダラ書くのはやめておきます。ただね、「おわりに」でいい夫の条件として、「妻から放たれる弾を10発から5発に減らすのが本書の目的」、何故なら妻には日々様々なストレスがかかってるので、時々そのストレスを〈放電〉する必要がある。時々、夫はその放電する先になる・・・というのがあったんですが。我が家でコレやったら、10倍返しされます。ていうか、されてます、日々。放電するだけ、私が損をする(泣)。放電しなきゃいいんだけど、日々のストレスはやっぱりたま…

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『世界はハッピーエンドでできている(5)』/下西屋 ◎(コミックス)

〈『世界はハッピーエンドでできている』〉シリーズで、すべての登場人物(動物・モノなど人外も含む)がきちんとまっとうに幸せになれる物語を描き続けてくださっている下西屋さん。本作『世界はハッピーエンドでできている(5)』も、上っ面の幸せなんかじゃなくて、その人たちが真摯に生きることで周りも幸せにしていくような、前向きで優しくて、力強い世界が広がっていました!!ホント大好きです!! 「美女と野獣」の野獣って・・・!「ロミオとジュリエット」のあの人のお父さんの話ですよね!素敵~。「その後のおはなし」で倉の中にいたのは、「白雪姫」の鏡さんだし!繋がってる~!繋がってるよ!ってテンション上がりまくりです。その鏡さん、パリスちゃんのお母さんの写真を見て好みじゃないと言い、その理由が「毒とか盛らなさそうなところ」って・・・!鏡さんの歴代ご主人の中で、やっぱり白雪姫の義母上が最高のご主人だったんでしょうね。 「長靴を履いた猫」、みんなカバラ公爵が贋公爵だってわかってても、その人柄の良さや能力の高さを認めて、信じているってところが素敵でした!「その後のおはなし」で、城砦に王女様&侍女がいるのを見てやきもちやいてた幼馴染ちゃんが、可愛かったです。「金の斧銀の斧」の「なんでも生成できる湖」って設定、実は実はファンタジーじゃなくてこの物語全体の世界設定に関わってくるんですよねぇ。comico連載時は全然気づかなかったんですが・・・。下西屋さんのストーリーの構成力、ホントに素晴らしい! 「ラプンツェル」で馬の魔女が「お…

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『あなたの人生、片づけます』/垣谷美雨 〇

垣谷美雨さんの『あなたの人生、片づけます』。〈片付け屋〉として人気で、TVに出たり本を出したりしてる大庭十萬里。見た目は、ぽっちゃり気味のフツーのオバサン。片付け度・重症な人々の家を訪問して、片付け指南をしていくうちに、その人たちの心のゴタゴタも解きほぐして、片付ける方法に気付かせていく。お家スッキリ、心もスッキリ、大事ですよねぇ。 「ケース1 清算」汚部屋OLの、自分を取り戻す過程。依頼人は父母。「ケース2 木魚堂」妻の死後、呆然と過ごしてきた木魚職人。依頼人は娘。「ケース3 豪商の館」老婦人の住む大きなお屋敷に、綺麗に仕舞われている様々な物品。依頼人は娘。「ケース4 きれいすぎる部屋」一家4人が住む取り散らかった官舎に一部屋だけ、綺麗な部屋が。依頼人は義母。 私は人間としてのキャパが非常に小さいので、自分が把握し使い切れる量しか、物を持ちたくないんですよね(笑)。なので、どのケースも「うわぁ、無理・・・」な状態です。でも、こういう状態の人がいるということは、わかります。「今」を変えることが、面倒だったり辛かったり惜しかったりするのも、理解は出来ます。 そういう部屋を実際一緒にどんどん片付けていく「片付け方を教える」話かなと思ったら、そうではなくて「十萬里が片付けられない度を診断しに行く」→「ちょっとした部分の片付けを宿題にする」→「宿題をこなして、ちょっとだけ意識が前向きになる」という過程があって、それぞれの心のゴタゴタが解きほぐれていく様子が丁寧に描かれていたのが、よかったです。とはい…

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『許されようとは思いません』/芦沢央 〇

・・・んんん?帯の惹句に「このどんでん返しがヤバい!!」ってあったんですけど、すみません、物足りません(笑)。京極さんとか真梨さんとか湊さんとかの、〈バリバリ嫌ミス〉に馴れちゃったダメダメ読者(笑)には、ちょっと・・・(^^;)。いや、芦沢央さんの『許されようとは思いません』の出来が悪いとか、そういうことじゃないんですけどね。本作、まだまだ優しいのです(笑)。世の中もっと、厭~なストーリーがたくさんあり、それに毒されちゃってるんですよねぇ、ワタクシ。 最もどんでん返しが鮮やかだったのは、「姉のように」ですねぇ。最後まで読み終えて、慌てて冒頭に戻りましたもん。う~わ~、読者の認識を最初に固定させて、微妙におかしい感じはしつつも、最後にガツンとゲンコツ落とされる感じ、実際に頭抱えちゃいましたよ。先入観って、オソロシイ。 怖ろしいといえば、「絵の中の男」の展開というか、真相。真相が明かされる過程の途中で「もしかしてこれはそういうことか・・・?」って気づいちゃったんで、「ヤバいどんでん返し」にはならなかったんですが、そういうことなのか・・・!妄執って怖ろしすぎる、って痛感いたしましたよ。ああ、怖い怖い。 「ありがとう、ばあば」も、その動機はそこへ繋がって行くんだ?ってことに戦慄を覚えましたね。人間って、怖いなぁ~。子供って、怖いなぁ~。思考の道筋がズレてるのが、ホント怖い。 表題「許されようとは思いません」の、祖母への村人たちの嫌がらせの経緯が酷過ぎてむかむかしながら読んでたんですけど、ラストのど…

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『イマジン?』/有川ひろ ◎

毎度ながら、「やられたわ・・・」と白旗上げちゃいますよ、有川ひろさん!!映像制作会社の新人・イー君が縦横無尽に駆け回る『イマジン?』、すっごく面白かったです!!有川さんの作品って、キャ~ッ!てなる萌え要素、登場人物たちが真摯に取り組むお仕事小説要素、テンポよく進む会話と展開、色々てんこ盛りで、本当に気持ちが充実するんですよねぇ。大好きです、やっぱり!! 新卒で入社したはずが計画倒産の見せかけネタに使われてしまい、ずっと憧れていた映像制作の業界から切り離されてしまった、良井良助(いいりょうすけ)。バイト先での知り合い・佐々に誘われ、人気ドラマ『天翔ける広報室』の撮影にバイトで入ることになる。「新人は走れ!とにかく走りまくれ!」といわれ、作品を、現場をより良くするために奔走する日々。 映像制作という業界のことは、せいぜいTVドラマや映画のパンフレットなどでちょっとだけ知ってるぐらいだったのですが、やはり「自分が関わる作品への真摯な思い」で支えられているのですねぇ。表立ってはキャスト、裏方は監督や脚本家やプロデューサー、美術関係・カメラマン、そして良助達のように様々な雑事や手配を請け負う制作会社など。一言で「映像作品」といっても、本当にいろいろな人たちに支えられて、作品というものは出来上がって行くのだと、痛感しました。   有川さんご本人が自作の映像化に際して体験したこと、見聞きしたことなどをもとに描いてるんだろうなぁ・・・と、察せられるエピソード満載。イー君的な、元気で頑張り屋さんな制作スタッフ…

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