『氷獄』/海堂尊 ◎

あの【バチスタ・スキャンダル】の裁判を描く『氷獄』。・・・実をいうと、「え~、今更バチスタ・スキャンダル??」って一瞬思ってしまいました、ワタクシ。ホント、海堂尊さん、ごめんなさい!この物語は、〈桜宮サーガ〉には絶対必要なエピソードでした・・・! 表題「氷獄」(中編)と3つの短編からなる本作。今まで発表されてきた〈桜宮サーガ〉の物語の合間を縫うようなストーリーや登場人物の別の側面が描かれていたりして、〈物語の登場人物たちの人生は続いていて、そしてその後(あるいは物語以前)が読める〉という、私の大好きな展開になっています。この〈桜宮サーガ〉は、登場大学医学部病院を中心とした「医療と現実の壮大で重厚な歴史絵巻的」になっちゃってて、〈一見さんには優しくないシリーズ〉と評価されることもあるんですけどね。私は、ワイドショーの「あのときのあの人は今!」的なノリで追っかけてる部分もあるシリーズなんですよねぇ(笑)。私が、海堂さんの作品を初めて読んだのは『螺鈿迷宮』なんですが、あれからもう13年ですか・・・びっくりです。その間に、現実世界でも物語世界でも、色々なことがありました。今現在、世の中を蔓延している〈新型肺炎・コロナウィルス〉とか、そういえば『ナニワ・モンスター』で新型インフルエンザ・キャメルが流行したっけ・・・なんてことも思い出しました。 「双生」碧翆院の双子女医・小百合とすみれの研修時代。指導医は田口センセ。「星宿」髄膜腫の少年・亮の願いを叶えようとする、小児科看護師・如月翔子の奮闘。「黎明」東城…

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『ブルーマーダー』/誉田哲也 〇

誉田哲也さんの〈姫川玲子〉シリーズ6作目。『インビジブルレイン』の結果、警視庁捜査一課から所轄へ移動した姫川は、暴力団組長惨殺事件を捜査する。捜査線上に浮かびあがったのは、池袋の暴力組織の面々を次々と襲い、不活性化させる殺人鬼、『ブルーマーダー』であった・・・。 いやぁ・・・姫川シリーズってさぁ、殺人シーンが非常にえぐいんですよねぇ・・・。本作もホントに、まともに想像したら即刻気持ち悪くなりそうなので、ちょっと上滑り気味に読んでました、惨殺シーン。だって、いきなり鎖骨を叩き折って抵抗できなくする・・・ってそこからもう痛いですもん。そのあとグチャグチャに骨叩き折って丸めて・・・とか、ホントえぐすぎるわぁ。こういう事件にばっかり遭遇する姫川って、やっぱりなんか「ある」んでしょうかね、引き合うものとか、そういうの・・・。ガンテツだったら面と向かって色々言いそうです・・・ていうか、似たようなことはしょっちゅう言ってますね。 現在進行形で進むブルーマーダーの犯行、犯人一味らしき男とたちの淡々としたそれでいて妙に温かい関係、事件を追う姫川たち、そして後半乱入してきてブルーマーダーの正体とその真意に迫るガンテツ。『ストロベリーナイト』から続くガンテツと姫川のやり取りは、ガンテツの口の悪さがつい先立ちますが、ガンテツはガンテツなりに「警察官としての正義」というか「己が信じるものへの筋の通し方」があって、姫川もそれなりにガンテツの存在を認めているんですよね。反面教師な部分も多々ありますが。 本作は、ブルーマー…

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『感染遊戯』/誉田哲也 ◎

誉田哲也さんの〈姫川玲子〉シリーズの、スピンオフである本作『感染遊戯』。とある会社員殺人事件の捜査本部に乗り込んだガンテツこと勝俣は、姫川の持つその資料を一見し、「15年もよく逃げ回ったものだ」と言い放つ。「(元)官僚傷害或いは殺人」という共通のキーワードを持った、彼の15年前の事件の回想と現在関わる捜査が交錯する。 短編3つと中編1つという構成ながら、共通のキーワードや捜査するガンテツたちの感じる印象などから、独立した別々の物語ではないのではないか・・・と思っているうちに、やはり物語は一つに収束する。官僚というシステムが悪をのさばらせ、助長する。それを制裁したい者たちに情報を提供する、サイトの管理人。サイト管理人が最後に行った行動が、惨劇の引き金となる最後の展開には、やりきれない気持ちになりました。自らの処遇を、運命に委ねたのか。殺人を教唆した罪を、同じ手法で自分にも処罰を与えたというのか。 姫川はほとんど出てこず、ガンテツの強引な捜査がずっと描かれていくので、ちょっと息苦しくなってくるのだけど(少々違法な捜査も辞さないから)、それでもガンテツなりの事件を追う真剣さは、熱い。ラスト、姫川の元部下・葉山をめぐってやり合うガンテツと姫川の会話の軽妙さに、救われました。この駆け引き、最終的には姫川が勝つんだろうけど、是非つぶさに読んでみたいものです(笑)。葉山の気持ちはどうなんだろう。 そういえば「倉田」という名前を読んで、なんとなく引っかかるな・・・と思ったら、『シンメトリー』の「過ぎた正義」…

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