『機巧のイヴ ~新世界覚醒篇~』/乾緑郎 ◎
いやぁ、スチームパンクっていいですよねぇ!重厚な雰囲気があるのに、登場人物たちの動きは鮮やかな活劇で。乾緑郎さんの『機巧のイヴ ~新世界覚醒篇~』も、とてもカッコよかった・・・!本作の物語は、前作『機巧のイヴ』 から約100年後の新世界大陸(アメリカを模しているらしい)の「万国博覧会」開催を巡って起こる様々な事態の中で、動かざる機巧人形の伊武が動き出すことで始まります。
万博準備に沸くゴダム市だが、開催を1年後に控えて工事などの準備は遅々として進んでいない。その中でほぼ唯一完成に近づいている日下國館の目玉展示品が、機巧人形の〈伊武〉であった。日下國館建設職人見習い・八十吉、とある目的をもって通訳として日下國館へもぐりこんだ元軍事探偵・日向、万博の理事を務める巨大鉄道会社の社主・ゴーラム、万博の電氣供給事業への参加を目論むフェル電器の社主であり女性発明家のM・フェル、・・・その他にも多くの登場人物たちが、伊武やゴーラムの所有する「スリーパー」という機巧人形(動かない)を巡って、様々な活劇を繰り返す。突貫工事で何とか開幕した万博は、大観覧車の崩落・大統領の死亡・電気館の全壊という最悪の事態を迎え、そのさなかに伊武たちはゴダム市を、そしてゴーラムの包囲網を脱出。
色々なことが起こりながら、伊武と天帝(スリーパー)の再会や日向の過去、八十吉の出自、フェルの思いの変化などが複雑に組みあがり、物語は進んでいきます。八十吉や日向の戦闘のスピードと鮮やかさ、手に汗を握りますねぇ!特に、〈馬離衝(バリツ)〉とい…