『嘘と人形』/岩井志麻子 〇
一体、私が読んでいるのは、「誰の物語」なんだろうか。物語の目的は?・・・と、漂流し続けていました、最後の最後まで。岩井志麻子さんの〈豹コスプレ〉がインパクト大の表紙の単行本、『嘘と人形』。
たしかに一時、豹のコスプレしてましたねぇ、岩井さん(今はしてないですよね?たぶん)。昔、『ぼっけえ、きょうてえ』を読んで「なんちゅう怖い土俗怪談物を書く人なんだ・・・」と震え、『雨月物語』では怖ろしくもあさましい、情念の満ちた語りに引き込まれた作家さんなんですが。作風とキャラにだいぶ違いがある方だな、とは思ってたんですよ。そしたら、本作ではキャラの方に寄せて来た・・・と見せかけ、実は読者を遭難させるという(笑)。
冒頭から、〈豹コスプレをした作家・岩井志麻子〉がTVにでているのを、語り手の女が眺めている。彼女の姉は、頭を切り落とされてその頭は豹のぬいぐるみ人形(ガオちゃん)の頭の中に縫い込まれたという、猟奇的な殺され方をしたという。嘘つきで利己的な姉とはかなりの年月音信不通であったが、姉はネットで拙い作品を発表するインチキ芸術家として活動していたようである。・・・というはずの話が、章を追うにつれ、その妹の元にガオちゃんの表紙のノートが送りつけられ、それに触発された彼女が姉のHPを継承し、そうこうするうちに何故か身辺があやしくなってきて、いつの間にかさらわれていて、全裸で頭に何かをかぶせられた状態で拘束され、TVの岩井志麻子に声をかけられていて・・・。ところが、章が切り替わると、語り手はインチキ芸術家の離婚し…