『大切な人が病気になったとき、何ができるか考えてみました』/井上由季子 〇

これも、物語ではありません(笑)。エッセイ・・・?なのかしら。著者井上由機季子さんが、父母に介護が必要になってきた時に、自分が主催している物づくり工房のアイデアなどをもとに作った、様々な「手作り」の工夫を数多く紹介した本書。『大切な人が病気になったとき、何ができるか考えてみました』、まさにタイトルそのままの内容なのですが、色々なアイデアがあり、よかったです。 ・・・ただし。私、美的センスというものが皆無で、とても他人様に見せらるものじゃないんですよ、手作り系。親にだって、正直イヤですよ(^^;)。よっぽど向こうの方が、器用でいいものを作るんですもの。いいアイデアだなぁと思うけど、それを実現するのは難しいという、ね(笑)。 とはいえ、「入院バッグ」の用意はいいなと思いました!お薬手帳、病歴のメモ(西暦と年号併記するといい)、血液検査データなどをひとまとめにしたものを、衣類日用品以外に用意しておく。なるほどですね。手作りのカレンダーもいいですね。あと、医療者への伝言メモとか、コミュニケーション手段も色々やっていいんだ・・と目からウロコ。子供が盲腸で入院した時に、看護師さんたち忙しそうで、色々聞くのをためらってしまったりしてたので・・・。 入院している父母の心の慰めのためのものはもちろん、医療者とのコミュニケーションの発端になったり、見舞う・介助する自分のためにもなる手作り作品は多岐にわたって、色々なものがありましたねぇ。身動きがしにくい人のために、ベッドの宮台に置くのでは見えにくいから、ベッドの…

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『ジョバンニの父への旅』/別役実 △ (戯曲集)

え~と。この作品、なんで〈読みたい本リスト〉入りしたんだっけ・・・(てへぺろ~)。たぶん、新聞の書評とかなんだろうなぁ・・・。別役実さんの『ジョバンニの父への旅』ですが、うん、全然、全く、記憶にないですなぁ(笑)。  しかも、これ戯曲集なんですよ。ワタクシ、物語読みでしてね、この形式は大変読みづらかった。誰のセリフかというところで、登場人物の名前ではなく「男1」「男2」ってなってて、どれがジョバンニのセリフで、どれがカンパネルラのセリフなのか、わかりづらい。各場面の前に舞台の道具配置を説明してくれてるんだけど、逆にそれが邪魔して場面を想像しにくかったり。ト書きはまだ、想像の補助ぐらいなのでいいんですけど・・・。・・・な~んて、文句言っちゃいけませんね(笑)。これは小説じゃなくて、戯曲として発表された作品なんですから。 宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の23年後、街に一人の男が現れる。最初本人は否定するものの、周りの人間が彼を「ジョバンニだ」というので、いつの間にかそういうことになり、23年前の「ザネリ転落事件」が街に居なかったはずのジョバンニの父の犯行だといううわさが流れ・・・父の冤罪を晴らすためにジョバンニは街を彷徨うことになる。 で、結局どうなってるかよくわからないうちに、物語(演劇?)は終わってしまう。・・・ううむ。現代演劇って、難しいよねぇ。TVのドラマすらロクに観ないワタクシには、いわゆる不条理劇は難し過ぎました・・・。ついつい、ツッコミ入れちゃうんですよねぇ。「お前本当にジョバンニなのか…

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『怖いへんないきものの絵』/中野京子・早川いくを ◎

中野京子さんの『怖い絵』を読んだことがあるし、早川いくをさんの『またまた へんないきもの』という〈へんないきもの〉シリーズも大変楽しんで読みましたねぇ。このお二人のコラボ、『怖いへんないきものの絵』。サクッと読めて、ニヤニヤし通しでしたな(笑)。 早川さんが変なサメの絵を見て「『怖い絵』の中野先生に色々話を聞くのはどうだろう?」という発想(冗談のつもりだったそう)を編集さんにしたら、編集さんがちゃんと中野さんにコンタクトをとってくれて実現したというこの企画。いやぁ、絶妙なコラボでしたよ!〈へんないきもの〉シリーズで切れ味鋭く、生き物たちにボケとツッコミを入れまくっていたその勢いがちゃんと健在で、安心しました(笑)。そんなノリにもちゃんと乗っかって行ける中野さんも、とても素晴らしいです。真面目に絵の解説をしつつ、2人の対談はどんどん何故か笑える展開になるという。なんなのコレ、面白すぎ~。 様々な絵が取り上げられ、そこに描かれている〈へんないきもの〉について「おかしい、変だ」と早川さんが突っ込めば、「生き物はテキトーに記憶で描かれることもあります」としれーっと中野さんが返す、そのテンポの良さ。絵画史上、重要な絵だったりするのに、テキトーなのかよ・・・(^^;)。そうかと思えば、「オオカミはなぜ「ワル」なのか」という問題点に関して、オオカミのマイナスイメージの肥大化そして〈悪〉へのキャラクター属性付加について、きちんとした説明が描かれるし、ぎっしりと猿が描かれた絵からはヨーロッパでは「暗黒大陸に棲む…

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『彼女の色に届くまで』/似鳥鶏 ◎

似鳥鶏さんは、アンソロジーでちょっと読んだことがあるぐらいで、ほぼ初読みな感じの作家さんです。青春アートミステリーという紹介文の爽やかさに惹かれて〈読みたい本リスト〉入りしたこの『彼女の色に届くまで』、爽やかでいいですわ~。 将来はプロの画家になることを思い描いている画商の息子・緑川は高校で、天才的な画力を持った美少女・千坂桜と出会う。美術室に飾られた絵画の損傷事件に巻き込まれた緑川のピンチを、鮮やかな推理で救った桜。それをきっかけに仲良くなり、父の仕事を手伝いに行った美術館での絵画の損傷事件、2人で進学した芸大の絵画備品倉庫での学生の制作品焼失事件、そして卒業後勤め始めた父の画廊での商品消失事件など、いくつもの事件を解決させていく二人。 周りの人に「何を考えてるかわからない変な人」扱いされている桜は、絵に関することには天才的な才能をを持ち、それ以外の生活能力などはかなり欠落していて、緑川が面倒を見て(恋愛関係ではなく飼育係と称されるところが、ちょっと悲しい)いないと、日常生活に支障をきたすレベル。美術室に入り浸っている緑川の友人・風戸も、高校生ながらボディビルドに集中しているがために、ちょっと変わった人物で、この3人が高校、大学(風戸は体育大学)、社会人(桜はプロの画家「若鳥味麗」・風戸はスポーツクラブのインストラクター)と成長していっても、変わらずお互いを尊重して仲良く過ごしているのが、とてもいいなぁと思いますねえ。 美術館での損壊事件の時に知り合った、高齢の女性画家・大薗菊子も年齢なん…

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『私が誰かわかりますか』/谷川直子 〇

ワタクシ、アラフィフ、長男の嫁。自身の両親、夫の両親、ともに今のところ健在。いずれは介護もあるだろうな・・・と思うと、ついつい〈介護もの〉の作品の存在を素通りできなくなってしまってる今日この頃。いやもう、なんかねぇ、読んでて辛かったわ~。谷川直子さんの『私が誰かわかりますか』、切実すぎて・・・。 鳩ノ巣市という地方都市に住む子供世代(といっても年代としては中年ぐらい)と、その郊外の農村地区に住む親世代の、介護を巡る物語。田舎のムラ社会って、キッツ~い。〈本家〉とか〈長男の嫁〉とか・・・色々しがらみが多すぎて、やってられないわぁ、私だったら。一応、ワタクシも長男の嫁なんですが、ムラ社会じゃないので、ここまで大変ではないと思います、たぶん。ただ・・・本作の男性陣と同様、〈介護の大変さ〉を理解できないであろう〈夫という壁〉は立ちはだかってます。ああ辛い(笑)。いやまだ、介護は一切始まってないんですけど、想像するだけで・・・やってらんねぇ!!! ライトな文章で、割とすいすい読めちゃうんですけどね。その勢いで読んでると、突然〈介護に苦労してる登場人物に感情移入してる自分〉に気付いて、ガクンと苦しい方に落ち込んでしまうのですよ。介護する対象との関係、他の人たちの前ではカッコつけてちゃんとして見えるので大変さが全然理解してもらえない、やっと入所できた施設で問題を起こさないかハラハラしたり、病気になって入院したはいいけど認知症は家族介護してくれと言われたり、病気そのものは良くなったから退院してくれと言われるが…

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『魍魎の匣』/京極夏彦 ◎

例によって、例の如く、凶器レベルに分厚い(笑)。テーブルなどに置かず、手で持ってるだけの状態で通しで読んだら、腱鞘炎になっちゃうんじゃないだろうか。タイトルが『魍魎の匣』なんですが、まさに箱ですよ、この本の形状(笑)。憑き物落としの〈京極堂シリーズ〉シリーズ2作目です。前作『姑獲鳥の夏』の時と同様、凡人でしかない私は息も絶え絶えになりながら読ませていただきましたよ、京極夏彦さん!! ステイホーム期間に入手したこの作品に、やっとたどり着けた今月。厚みにちょっとビビりつつ読み始め、いろんな事件や事態が次々に展開し、シリーズ主要人物たちそれぞれが別々の事件に関わった末に、京極堂の元に集結するまでは、「なんて猟奇な事件なんだ!」「何故こんなことが起きるのか?」「犯人の目的は?」などがグルグル回りながら情報量の多さ(でも全然事件の全容は見えてこない)に溺れてました。 ところが、京極堂は「それらは全然別の事件なのだ」というのである。京極は、関口・榎木津・新キャラの鳥口(カストリ雑誌の編集者)などに追加調査を課して追い返し、木津の話を聞き、聞きたいなら後日自分の解釈を聞きに来いという。うわぁ・・・。あの時点での錯綜した情報だけで、事件の概要がつかめてるのか、京極堂。怖ろしい・・・。 京極が5つの事件だと解いてる全部を解説したり、それについての私の意見をどうこう言っても、ろくな文章にならないのでやめておきます。もうね、ワタクシは凡人でございますから。頭脳も異能も持ち合わせておりませぬゆえ。 折々に挟まれる…

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『ラギッド・ガール ~廃園の天使Ⅱ~』/飛浩隆 ◎

『グラン・ヴァカンス ~廃園の天使Ⅰ~』の第二弾。前作は一つの区界の崩落の1日の絶望をつぶさに描いた長編でしたが、本作は前作の前日譚など外伝的短編集。飛浩隆さん描く、〈数値海岸(コスタ・デル・ヌメロ)〉にまつわる物語、『ラギッド・ガール ~廃園の天使Ⅱ ~』。 多重現実・仮想現実・電子データの活用など様々な技術が非常に発展したリアルの世界、その技術から新しいVR技術で作られる新しいエンターテイメントリゾート〈数値海岸〉、幾多もある区界はお互いに干渉できない関係にあり、その中の区界の物語。・・・正直言って、難しかったですよ~。なんせ「超絶文系人間」なもので、ワタクシ。そのくせ、AIとか〈機械〉と〈ひと〉の狭間の物語とかそこに漂う切なさとかそういう設定が大好きなので、sf部分についていけないながら雰囲気を楽しむことは出来ました。 「夏の硝子体」〈大途絶(グランド・ダウン)〉から300年。〈夏の区界〉に漂着するようになった硝子体を巡る、ジュリーとジョゼの物語。「ラギッド・ガール」〈数値海岸〉の成り立ちを描く。「クローゼット」区界アイテム開発者・ガウリに執拗に襲い掛かる、存在。「魔術師」鯨を育成する区界で働く少年(ゲスト)の日々と、大途絶を起こした集団の真の意図。「蜘蛛の王」大途絶から170年。〈夏の区界〉を襲撃したランゴーニが育った、〈汎用樹の区界〉の終末。 いやあ・・・。ホント情報量多いんですよ、とにかく。SF部分は難しいし(笑)。前作では大途絶から一千年の時が過ぎているのですが、本作では〈数値…

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