『狂骨の夢』/京極夏彦 〇

いやもう、ホント勘弁してほしいですよ、この凶器レベルの製本(笑)。まあねぇ、京極夏彦さんだから、しょうがないんですけどね。ノベルス版で読んだんで、まだそんなに重くなかったのだけが救いですよ、まったく(笑)。頭蓋骨や生首が頻出し、登場人物たちのトラウマや執念が錯綜する『狂骨の夢』、なんというか・・・正直言って、大変疲労しました。でも、頑張って読み続けてよかったですよ、はい。 実はこの本、入手したの去年なんですよね~。コロナの影響で図書館が長期にわたって休館し、とうとう読む本が無くなりそうだ、ということで〈百鬼夜行シリーズ〉を3冊入手したんですが。さすが京極作品、神をも恐れぬ分厚い製本・縦横無尽に繰り広げられる薀蓄・怒涛の博覧強記、とにかく心身ともに余裕がないと読めないので、なかなか手を付けられず。そしてまた今年、図書館の長期休館が始まったし腰を据えて読もう!ということになった次第なのですが・・・。 いやもうねえ、前半色々出てくるエピソードが平行線で繋がらないし、京極堂は半分以上過ぎても出てこないし、ホント読むのが大変でした。とはいえ、憑き物落としが始まれば、あれよあれよという間に暗闇に光が当てられ浮かび上がるは〈因縁絡まる黄金の髑髏〉。はぁ~、今回も、感服いたしましたよ。 二重の過去記憶を持つ女の回想、伊佐間屋と朱美、教会に居候する男・降旗と牧師の白丘と相談に来た朱美、殺害された小説家・宇田川(朱美の夫)と最後に会っていた関口と敦子(京極堂の妹)、捜査に鬱屈する木場とそのパートナー・長門、何か…

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『間宵の母』/歌野晶午 〇

とてつもないどんでん返しで、読者の足元をすくってくる歌野晶午さん。警戒しながら読んでても、最後の最後に「うわぁ、さすが歌野さんだよ」と唸らざるを得ない作品多々。という訳で、本作『間宵の母』も、ガチガチに警戒しながら読み始めましたよ、私。間宵紗江子という不幸に見舞われ続ける女性の関係者たちの視点から、彼女やその周辺の出来事が描かれます。 紗江子の母の再婚相手、「間宵の父」こと夢之丞とその失踪を、ともに失踪したという女性の娘・詩穂の視点から語る。大学のクイーン・夏澄の機嫌を取りたくて紗江子の弱点を探していた元彦が遭遇したのは、「間宵の母」である巳代子であった。冴えない同僚・紗江子と親しくなった恵美は、 娘を連れて家に遊びに行き、娘と「間宵の娘」和香菜も仲良くなるのだが・・・。母・詩穂の没落の原因である間宵家に恨みを果たそうと乗り込んだ蒼空は、恐るべき現象 「間宵の宿り」 と対峙することになる。 実を言うと、初章「間宵の父」で夢之丞が〈物語の語り〉に使った手段が見抜けてしまったので、たぶん彼の犯罪も予測はついていたんですけどね・・・。何故、義娘の友達の「母」と失踪したかを、「変だなぁ」と思いつつも見逃してしまったのが、私の敗因。更に次章「間宵の母」での巳代子の狂乱ぶりが度合いを上げててミスリードされてしまい、3章めの「間宵の娘」ではこれ多分、偶然の事故じゃないよね・・と慄然としたうえで、衝撃のラストを迎え。そして終章「間宵の宿り」では、オカルトな展開が私を待ち受けておりました。 ・・・ああもう、面…

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