『ピュア』/小野美由紀 ◎
読み始めて早々に、「あ。私こういうストーリー好きだわ」と思いました。超絶文系人間のくせに、未来のテクノロジーを描くSFやファンタジーが大好きな私。更に本作『ピュア』は、物語の奥底に物悲しい美しさを湛えていて、私の嗜好をいたく刺激したんですよねぇ。小野美由紀さんって初めて読む作家さんですが、他の作品もこんな傾向なのかしら。読んでみたいですね。あとで調べてみようっと。
表題作「ピュア」は、悪化した地球環境に適応できるように人類を改造したが、その真価を享受できたのは〈女〉だけ、男はひ弱な体のまま地上で労働し、女に精を与えたのち喰われることで栄養分となり受精強化の基となる。そんな遠い未来で〈特Aランク〉の遺伝子を持つ少女たちは、〈狩り〉と〈戦闘訓練〉の日々を過ごしている。もうね、この設定だけで、胸がドキドキしてくるんですよ。ナノテクノロジーによるDNA改造で、体長が伸び、鱗に覆われ、鋭い鈎爪を持つ、美しい少女たち。その中で、やや能力が劣りがちで〈狩り〉に前向きになれないユミが、労働から脱走し〈出来損ない(進化した姿で生まれなかった)〉の女の双子を匿って育てている青年・エイジと出会い、〈食べたい〉のに〈そばにいたい〉という葛藤、同級生のマミに襲われ瀕死のエイジをマミを殺すことで解放し、エイジのたっての願いで両思いであることを知らされ、彼を食べる。仲間から逃走し、双子を育てつつ、あらゆる「テキ」を迎え撃ちながら、力強く生きていくユミの体内には、エイジの種が宿っている。「テキ」に向かって、唾を飲み込みながら軽…