『アンと愛情』/坂木司 ◎

くぅぅぅぅ・・・!!!見事なまでの、スイーツテロ。予想はしてたけど!それでも、やっぱり、和菓子が食べたくなっちゃうじゃないですか!坂木司さんの罠(笑)に、お約束通りに陥るワタクシなのでした。『和菓子のアン』『アンと青春』に続くシリーズ3作目、『アンと愛情』は、ふくふくほっぺのアンちゃんの一生懸命なお仕事物語。・・・読書中、たまらず草大福(←私の一番好きな和菓子)を複数個買ってきて、こっそり一人で食べてしまったことを、ここに告白いたします(^^;)。最初は家族と食べるつもりだったんだけど、我慢できなかったんだもん!! 老舗百貨店・東京デパートの地下の和菓子屋さん、「みつ屋」でアルバイトをしている梅本杏子は、同僚の乙女・立花さん(成人男子)に「杏子の杏じゃアンズだからアンちゃんね♪」と呼ばれ、美人で仕事のできる椿店長、元ヤン人妻大学生のアルバイト・桜井さん、洋菓子店の柏木さん、常連のお客様・・・、色々な人に大事にされながら一生懸命働いている。和菓子の知識から日本文化の造詣が深くなったり、百貨店を訪れる色々なお客様への対応のため難しい接客を身に着けたり、成長していく姿は、清々しいです。今作では、知人から聞いたイメージで食べたい和菓子を説明する外国からの観光客の方のために、英語アテンダントさんと協力しあって色々調べたり推測したり、旅先で柏木さんの実家の老舗和菓子屋さんに行ったり、他店からの応援で「催事対応の得意な社員さん」が来てお互いにないもの(接客方法や店舗の在り方の考え)を学び合ったり・・・。 私…

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『作りかけの明日』/三崎亜記 ◎

今までの三崎亜記さんの作品を、緩やかに美しくまとめて織り上げるかのような作品でした。本作『作りかけの明日』は、三崎さんがかつて描いた『刻まれない明日』で繰り返し語られた「10年前の事件」で何があったのかを記す物語。あの時何故、こんなことが起こったのか。何故、消失した人々はラジオ局にリクエストを送り、図書館分館で本を借りているという記録が残るのか。すべての答えが明確に差し出されたわけではないけれど、様々な謎が明らかになってきました。 いやしかし、ホント【世界設定ノートを見せて欲しい作家さん】№1なんですよねぇ、三崎さんって。本作で、今までに名称や現象だけが語られ、その理由どころか全容すらわからなかったことが、いくつかは分かってきてるんですが、それでもまだまだわからないことがいっぱいです。そして、どんどん内容が難しくなっていく・・・(^^;)。何度も、自分で書いた『刻まれない明日』のレビューを見返し、トドの部屋、Todo23さんの 三崎亜記の「この国」(地図&考察メモ)と首っ引きでああでもない、こうでもないと考えながら読んでいたため、非常に時間がかかりました。※Todoさんの考察は、本当に素晴らしいです!ただし、三崎作品をたくさん読まれて複合的に考察されているため、この作品だけでなく他作品のネタバレになってしまう可能性もありますので、その点はご注意ください。 本作はタイトルからして『刻まれない明日』との関係があるのだろうなと思いつつ、特に前情報を集めないまま読み始めました(私は基本そんな感じで物語…

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『クララとお日さま』/カズオ・イシグロ ◎

カズオ・イシグロさんって、読むのに気力と脳の活用エリアを必要とする作家さんなんですよね、私。難解である、というのとはちょっと違って、なんだろう・・・彼の作品の醸し出す〈郷愁〉に共感を覚えながらも、何かちょっとしたボタンの掛け違いを意識してしまうような・・・。そんなふうに色々と考えてしまって、ノーベル文学賞の受賞第1作である本作『クララとお日さま』もまた、なかなか読み進められませんでした。 設定の説明が全くないまま、かなり高度なAIを搭載すると思われるアンドロイドが子供たちの〈AF=人工親友〉として展示販売されているお店から、物語は始まります。AFたちの動力源は光らしく、彼らの中でもクララというAFは特に日光に対して崇拝に近い念をもっていた。そのクララの前に現れ、彼女を自分のAFとして手に入れたのが、病弱な少女・ジョジ―。沈みゆくお日さまにジョジ―の回復を願い、その為に大気汚染をする機械を破壊すると誓うクララ。クララの願いの叶え方を知らなくても助力するジョジ―の親友・リック、ジョジ―の母親と離婚した父親、そしてもちろん日々共に暮らしているジョジ―の母親、すべての人が過ちを犯したり誤解したりしながらも、懸命にジョジ―の回復を願っている。そして、お日さまの奇跡がジョジ―に訪れ、だんだんにクララの役目は減り、回復し成長したジョジ―は大学に進み、クララはジョジ―の家を出る。 どれぐらい未来の話なのか、AFの存在意義や彼らの能力、ジョジ―達の受けた〈向上処置〉とは何か、社会情勢がどういうことになっているの…

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