『一生楽しく浪費するためのお金の話』/劇団雌猫✕篠田尚子 ◯

私はオタクではないし、実はそこまで浪費家ではないけど、まだまだ〈お金の勉強初心者〉なので、参考になるかな~?と思って読みました。『一生楽しく浪費するためのお金の話』っていうタイトル、いいですよね~♪You Tubeとかだと「ガンガン効率よくお金を増やす!!」的な攻めの情報が多くて、もうオーバーフィフティなオバちゃんはね、息切れしちゃうのよ(笑)。劇団雌猫さんというのは、オタ活女子4人組のユニットだそうで、オタ活のお金事情なんかの著作がある方々だそうです。篠田尚子さんの方は、楽天証券のファンドアナリストでもある、ファイナンシャルプランナー。まあ、つまりは、お金の専門家ですね。劇団雌猫さんが心配するオタ活のお金事情を、篠田先生が優しく解説&指導、という流れで〈お金初心者〉な私にもわかりやすく、楽しく読ませていただきました!! 先程も書きましたが、とにかく攻めの情報のほうが目を引きやすいからか、お金の勉強をしててもそういう情報ばかりグイグイくる。でもね~やっぱり、〈未来のために今を楽しむことを我慢してキツキツ〉も〈今を楽しみすぎて老後は貧困〉も、心が貧しくなっちゃうじゃないですか。そういう意味で「一生楽しく浪費する」というコンセプトは素晴らしい!と思いますね。この本にちょっとホッとしました。今を楽しみつつ、その楽しみをずっと維持するための〈お金の使い方&貯め方&増やし方〉が具体的に書かれていて、参考になりました。 ただ、この本の対象って多分「自分で稼いでる20~30代女子」なんですよねぇ。基本が「自…

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『名もなき王国』/倉数茂 ◯

売れない小説家である「私」が作家の集まりで知り合った青年・澤田瞬は、私が偏愛を注いでいた幻想小説家・沢渡晶であった。私と瞬の交流から始まるこの物語は、沢渡晶の暮らしていた古い洋館とその庭を、彼女が『名もなき王国』と呼んでいたという記述から広がり始める。倉数茂さんは、全く知らなかった作家さんです。書評で「迷路のような虚実の入り交じる云々」という紹介されていて、興味をそそられました。 瞬と私の出会いと交流、瞬の過ごしてきた日々、そして私の現在及び過去を描き、沢渡晶の未公開短編をもはさみ、私の落ちぶれた現状から創作が入り混じり、意外なラストを迎える、という一つの作品として様々な傾向を持って描かれたこの作品ですが、沢渡晶の作品のあとに続く「幻の庭」の章が、非常に読みづらかったです。とはいえ、この章が一番重要だったんですが。 読んでいる間、瞬にしろ私にしろ、物語ることへの傾倒が強すぎて実生活である妻との関係がひどく悪化していることに、居心地の悪さを感じていました。いえ、いくら私が小市民であるからといって、作家・芸術家などが現実に即して規律正しく思考し行動することを求めているわけではないのですよ。彼らが語るささやかな露悪を善悪ではかるのではなく、居心地の悪さとして感じたのです。この作品の展開として、必要以上なのではないか・・・という気がしたので。 「幻の庭」で私が描く小説は「謎の薬について調べることを依頼され、調査をすすめるうちに自分の虚実を見失う」もので、その小説が描いている彼自身を侵食し、気が触れて…

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『この本を盗む者は』/深緑野分 ◎

ザッツ・マジックリアリズム!!面白かったですよ、深緑野分さん!物語読みな私にとって「平凡な日常が呪いにより〈物語世界〉に変容してくる」なんていうシチュエーションは、大好物でございますとも!!私設蔵書館・御倉館の管理者の娘・深冬に訪れた、『この本を盗む者は』 から始まるブック・カース(本の呪い)の世界。深冬とその相棒・真白の冒険と、御倉館をめぐる謎の解明、大変面白かったです。そう言えばこの作品、2021年の本屋大賞の候補作でもありましたね。 本の蒐集家であり、私設蔵書館を創始した曾祖父を持つ女子高生・深冬が、その蔵書館から本が盗まれるたびに物語世界に変容してしまう街を駆け巡る、冒険譚。御倉の子でありながら本が嫌いな深冬だが、怪我をした父・あゆむの代わりに御倉館で暮らしている叔母・ひるねの様子を見に行った時、彼女が手にしている奇妙な札に気付く。札には〈この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる〉と書かれてあり、深冬は突然出現した少女・真白とともに、〈御倉館の本を盗んだ者を捕まえ、本を取り戻す〉冒険に出なければいけなくなる。札を読んだ瞬間から(正しくは本が盗まれた瞬間から)、街は物語世界に変容し始め、街の人々は物語世界の人物の役を担い始める。 真白は、御倉館の書物にはすべて一冊づつ〈ブック・カース(本の呪い)〉がかけられていると言う。御倉一族以外の人間が本を御倉館から持ち出せば発動し、盗人もろとも街は物語の檻に閉じ込められ、その本泥棒が捕まえらればブック・カースは消えるのだと。幼少期からの嫌な思…

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『わたしの本当の子どもたち』/ジョー・ウォルトン ◯

あの日のプロポーズの返事が、パトリシアの世界を分岐させた。「yes」と答えたトリシア、「no」と答えたパット、それぞれの人生と世界は、大きく変わっていった。書評で「2つの人生をパラレルに生きた女性の物語」と紹介され、興味を持ったので、読んでみることにしました。著者ジョー・ウォルトンさんは、別作品ですがヒューゴー賞・ネビュラ賞をダブル受賞したこともあるSF作家さん。この2つの賞の受賞作、結構私の好みに合うので、ちょっと期待して読み始めました。2つの人生を追憶する、一人の老女を描く本書『わたしの本当の子どもたち』 、なかなか興味深かったです。 世界大戦終了後、オックスフォード大学を卒業し、地方の私立女子校の教師になっていたパトリシアは、恋人から急なプロポーズを電話で受け、返事を迫られる。そこから彼女の人生は、「yes」と答えたトリシアと、「no」と答えたパットに分岐し、彼女の生きる世界の歴史すら少しずつ違ったものになっていく。 最初はトリシアを抑圧するマークに苛立ち、早く離婚できればいいのに!どうしてこの時代は大卒女性ですら、結婚したら仕事を続けることが出来ずに自立の道を絶たれてしまうのだろう、誰かマークに天罰でも与えないものか・・・とずっと思っていました。パットの方は、理想的な恋人・ビィ(女性)と出会い、子供が欲しいという願いを叶えてくれるマイクルという協力者にも恵まれ、人生を謳歌していくのですが、ビィの障害や核兵器使用による癌患者の激増や世界的緊張など、順風満帆とは行かない日々を送ることになり…

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『パラダイス・ガーデンの喪失』/若竹七海 ◯

多い・・・登場人物が多すぎる・・・。私の残念な記憶力では追いつけないレベルに登場人物が多く、しかもエピソードも最初はバラバラ。冒頭についている人物紹介を見てもなかなか頭に入らなかったので、前半はホントにもう本文と紹介を行ったり来たりで、ちょっと疲れました(^_^;)。若竹七海さん、初読み作家さんですね。書評で〈パッチワークのようにエピソードが完成する〉とあって、面白そう!と思った本書『パラダイス・ガーデンの喪失』 でしたが、年末年始の忙しさにかまけて、10日ぐらいかかってしまいました(余計に記憶力が・・・)。 鎌倉にほど近い葉崎市。入場料を取って公開している個人の庭〈パラダイス・ガーデン〉、そこである朝、老女が死亡していた。近隣の老若男女、管轄の葉崎署の面々と本部から来た管理官一同、刑務所から出てきたばかりの日本一有名な容疑者、老人ホームの勧誘をする女・・・様々な人物たちが、それぞれの理由で様々なことをしでかし、事態や事件が複雑化し、更に絡み合う。 いやもう、とにかく登場人物のエピソードも多すぎて、あらすじとか書けないですよ!大叔母の資産を伺う若者、子供が誘拐されたシングルマザー、夫のリモートワークで葉崎市にやってきた主婦・・・、事細かに取り上げるなんて、もう無理!特に、古くからの葉崎市住民は過去に口外できない秘密を抱えていて、それが明かされるのがだいぶん後の方なので、我々読者は〈ミステリのアドバンテージ(人々の日常から、物語に関するエピソードだけを抜き出して読んでいる)〉があるはずなんですが…

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『マンガでわかる!ひとり老後のお金に困らなくなる本』/わかさ出版 ◯(MOOK)

『マンガでわかる!ひとり老後のお金に困らなくなる本』というタイトル、ちょっと直球すぎるかしら(笑)。あ・・・いや、夫はまだ生きてますよ(笑)。でも、私のほうが歳が下だし、女性の方が長生きしますからねぇ。私の老後はもうちょっと先ですが、人生100年時代、老後はかなり長い。お金がないと困る。読んで損はなかったな、と思いました。わかさ出版という出版社名は、初めて知りました。〈わかさ夢MOOKマネーマル得シリーズ〉ってMOOKのシリーズを出してるようですね。 人から頂いた本です。2019年10月発行ということで、ちょっと情報が古いと言えば古いかな?年金や介護のことって年々変わっていくので、参考にしつつもいざその時になったら情報が違う!ってことになるかもしれないですよね。なので、ざっとした知識として覚えておいて、その都度にきちんと調べ直さないといけないな、と思いました。 しかし・・・歳を取るって、大変だな~。認知症じゃなくても、難しいこと考えるのが大変になってくると思うんですよ。自分の両親見ててそう感じるので、いつまでも今みたいに思考力クリア、ってわけには行かない。だけど制度は難しい、選択肢はたくさんある、となると、ホントに難しい。でも、できるだけ、自分でできるうちは自分でやりたいし、子供たちにも手間かけさせたくないからな~。できるだけ、アタマのしっかりした老人になりたいものです。 内容なんですが、タイトルに「マンガでわかる!」ってあるけど、マンガは導入部で「老後にこんな問題が発生しますよ」って提示し…

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水無月・R的・2021年読了作品 ベスト10!

2022年が始まりましたね~。皆様、あけましておめでとうございます!! 去年も、いろいろなことがありました。コロナウイルスはどんどん変貌を遂げ、ワクチンは普及したものの非常事態宣言やら第5波・第6波、あまりに続く事態に慣れて気が緩んでいる面もあるのかもしれません。私個人としては、早く「コロナもインフルエンザ並みの対応」で済むようになってくれるとありがたいな~と思いますけど、どうなりますやら。 落ち着かない世情はさておき、私の今年の読書はどうだったか・・・と申しますと。年間読了、47冊。・・・う~ん、ちょっと少ないかな~。それでもベスト10を選ぶのに、非常に苦労するという、本読みとしては大変喜ばしい1年ではありました。うん・・・、ホント選ぶの大変だったですよ(笑)。 ではでは、年間ベスト10の発表をいたしましょう。 〈水無月・R的・2021年読了作品 ベスト10!〉 1位 『ししりばの家』 澤村伊智結局ししりばってなんだったの・・・。そして、〈人間が一番怖い〉のでは。2位 『作りかけの明日』 三崎亜記やっぱり世界設定ノートがみたい(笑)。今までの作品を繋ぐ物語。3位 『ほんとうの自由を手に入れる お金の大学』 両@リベ大学長義務教育で教えていいレベルの内容。複利の爆発力すごいわ~。4位 『CAボーイ』 宮木あや子〈高感度すぎる木崎センサー〉発動(笑)。皆が自分の道を切り開こうと進む。5位 『リリエンタールの末裔』 上田早夕里テクノロジーとひとの情緒がにじむ、豊かに美しい世界。6位 『婚活中…

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