『これからの暮らし by ESSE vol.2(春夏号)』/エッセ2022年6月増刊号 ◎

前号『これからの暮らし by ESSE vol.1(秋冬号)』が非常に良かったので、いつ次の号が発売されるのかとずっと春先からチェックしておりました。なかなか出ないので、これはもう紙媒体は創刊号限りで、あとはWEB出版になっちゃうのかしら、紙媒体で読みたいわ~と待っていたら、満を持して発行されたじゃありませんか、『これからの暮らし by ESSE vol.2(春夏号)』。しかも、特集が「お金管理術」。やっぱり読むしかない!! 「まだ間に合う!人生100年時代の新・お金管理術」・・・、なんて頼もしい特集タイトル。50~70代のリアル家計簿公開とか、すごく参考になりました。我が家はまだ夫も現役で健在、子供たち(成人済み)もいて、家計的にはまだまだ現役世代なので、これが老後になるとこんなふうになるんだ~と、感心しきり。生活における工夫も、節約節約でせせこましく心貧しくなるんじゃなく、お金をかけなくても自分が気持ち良いように自由に工夫する事ができる、っていう具体例を見ることが出来て、とても良かったですね。 「トクする年金の受け取り方」も、目からウロコ。これは永久保存版ですね!・・・あ、もちろん、制度改正でこの記事があまり参考にならなくなることもあるでしょうから、過信は禁物ですが。 「みんなの更年期体験談」、ビクビクしながら読みました。もうホント、ボチボチ更年期入ってきたよねって感じで、昔ほど無理が効かない気力も体力も続かないのですよ。とは言え、世に聞こえてくる程の大不調というわけでもないので、いつこ…

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『椿宿の辺りに』/梨木香歩 ◯

『f植物園の巣穴』を読んだのが、なんと13年も前のことでした。不思議な浮遊感に酔いしれて、梨木香歩さんの作品群をより好きになるきっかけになった物語でした。その続編ということで本書『椿宿の辺りに』を手に取ったらば、なんと時代はだいぶ後のことになり、前作の主人公・佐田豊彦の曾孫世代が〈自らの「痛み」の原点を探る〉という壮大な物語でした。植物だけでなく自然や風景の描写が、美しく意味が深く、読んでいて清々しくなることもあれば、不安感を煽られたりもしました。読み終えるのに時間はかかりましたが、とても心地よかったです。 f植物園の園丁・佐田豊彦の曾孫・佐田山幸彦(通称・山彦)は、原因不明の頭痛・腰痛・肩痛に悩まされていた。母方の祖母の寿命がそろそろ尽きるのでは・・・と、介護に行っていた母に告げられ、休暇を取って帰省することに。父方の従姉妹の海幸比子(通称・海子、女性)も山彦同様に体各所に原因不明の痛みを感じており、彼女の紹介で母方の実家付近にある鍼灸院「仮縫鍼灸院」へ行ってみると、鍼灸師の仮縫氏の双子の妹・亀シ(霊能者?)が、「痛みの原因は父方の実家方面にある」と言い出す。ちょうど、父方の実家で有していた貸家の店子(彼の名は宙幸彦、通称・宙彦だという)とやり取りをせねばならないという状態であったため、山彦は亀シとともに、その貸家のある〈椿宿〉へ行くことに。椿宿へ着く前に店子の母・竜子と知り合い、彼女とともに〈椿宿〉を訪れた山彦たちは、貸家や貸家の庭にある稲荷を整えているうちに、地元の教育委員会の関係者・緒方…

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『汚れた手をそこで拭かない』/芦沢央 ◯

タイトルの『汚れた手をそこで拭かない』が、各短編のイヤ~な感じをよく表現していたと思います。ちなみに、各短編のタイトルはこれとは全然違いますが、各作品をうまくまとめた感じがしますね。芦沢央さんは、『許されようとは思いません』以来です。あの作品より「イヤ~な感じ」が絶賛増量中だな!って思いました。 ところでこの作品、〈イヤミス〉とのことだけど、う~ん、ミステリーだったのかという疑問が・・・。ひたひたと忍び寄るイヤ~な感じを、なんとか解消しようともがく心理的な謎解き部分があるから、それがミステリなのかしら。 しかし、とにかく読後感が酷い(←この物語の狙いを考えれば、褒め言葉です)。まさに、汚れた手で不意に近づいてこられたと思ったら、いきなり私の着ている服で拭われた感じ。しかも、拭った相手はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていて、気味が悪すぎて竦んでしまって、抗議の声も上げられない・・・。ってことで、非常に「うへぇ・・・」って気持ちになりますな。 どの物語も、最初は些細な綻びだったのが、取り繕おうとして嘘や偽証を重ねれば重ねるほど、取り返しがつかなくなってくる。そして、最悪の終結を迎える。「最初に正直に認めればよかったのに」と多大なる後悔を抱える当事者たちを、あざ笑うかのように。物語なんだからって、安心はできませんよ。ちょっとしたことを誤魔化そうとすることを、全くやったことがない人なんていないと思うし、実際私も取り繕ってそれがバレて、痛い目みたことありますし。 余命半年の妻に過去の罪悪感を告白する夫「…

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『光源氏と女君たち ~十人十色の終活~』/石村きみ子 ◯

先に宣言しておきますが、水無月・Rは〈アンチ源氏の君〉であります。美貌と才気を鼻にかけ、女君たちの表面しか見ずに自分の都合のいいようにレッテル貼りして、常に鼻高々で意気揚々と生きてるくせにちょっと自分に悪いことが起きると悲劇の主人公になりきってメソメソ。蹴っ飛ばしてやろうかしらん、と思ってしまうぐらいですよ(笑)。そんなワタクシが読んだ、石村きみ子さんの『光源氏と女君たち ~十人十色の終活~』。著者石村さん自身はアンチ源氏じゃないので、源氏礼賛な部分はかなりあったんですけど、それでも読んでて私の溜飲が下がるような章もあったので、良かったです。 タイトルに「女君たち」とありましたが、源氏の父・桐壺帝や、兄の朱雀院、源氏晩年の正妻・女三の宮を寝取った柏木など、男性に言及している部分もありました。それも良かったですねぇ。どうしても、女君たちだけだと「源氏に頼って生きていかざるをえない立場として、あまり源氏を悪く思えない」人が多くなってしまいますから。まあ柏木なんかは、寝取りの罪をネチネチといびられて神経がやられて死んでしまったので、哀れではあるのですが、私的にはアクセサリーワイフ・女三の宮を寝取って源氏の栄華に釘を差したという意味で、物語的には重要な立場だったと思うんですよね。当の女三の宮から、あまりいい扱いを受けられなかったのは、結構可哀想でしたが・・・。 六条御息所は、嫉妬のあまり生霊怨霊になるぐらい自我の強い女人でしたが、そこが彼女の魅力でもあります。その御息所の章で、御息所は「老いることで受…

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『キミのお金はどこに消えるのか ~令和サバイバル編~』/井上純一 ◯(コミックス)

前作『キミのお金はどこに消えるのか』で「理解はできるんだけど、納得いかないんだよな~」と思ってしまっていたのですが、本作『キミのお金はどこに消えるのか~令和サバイバル編~』でもやっぱり、「言ってることは、わかるんだけども・・・納得しがたい~!!」になってしまいました。井上純一さん、アタマの固い読者で、ホントにごめんなさい~~。あ、それと多分私「ゆる~く市場肯定派」です(笑)。 本作でも、中国人嫁・月(ゆえ)さんの「ナゼデスカ?」「オカシデスヨ!!」が大炸裂。月さんは共産主義で失敗した中国の出身だから、その辺の理解は早いですね~。ジンサンの意表を突く「正解!」なセリフをドーンと言ったり、インフレが嫌いだったり、素朴な質問が多出。経済素人な私も月さんと一緒に「日本のけ経済政策、どーなってんのよ~!」と、頭を抱えられるような展開で、大変面白かったです。 ただ・・・前作以上に「経済のムズカシイ話」が多くて、参っちゃいましたね~。「生産性を上げるには、消費を増やす」・・・ん~~、まあ、そうなんだろうけど、消費を増やすには収入が増えなきゃいけなくて、収入が増えるには生産性が上がらないといけなくて・・・あれ?堂々巡りになってるぞ。しかも、今すごい円安で資源高によるインフレはしてるけど、それは企業収益にならなくて、給料上がらないよ?企業が儲けを内部留保してるから、またまた給与が上がらない・・・うわ~ん、経済が上手いこと回っていく未来が見えないよ~。 しかもですね、私、「消費」が苦手なんですよ。あんまり物欲な…

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『カケラ』/湊かなえ ◯

う~ん・・・。湊かなえさんらしい物語だなぁ・・、すごく。冒頭にセンセーショナルな事件が提示され、それについて様々な関係者がひたすら独り善がりに独白していくスタイル。聞き手である美容外科医・久乃の問いかけ(文中には出て来ない)が語り手たちの神経を逆なでしたりして、より、彼らはあからさまに語り続ける。なんだか、読んでて「あ~、出たよ、自己欺瞞」とか「相変わらず自己憐憫が暴走してるな~」とか、思っちゃいました。湊さんて上手いよね、そういう話を描くの。思わず我が身を振り返らざるを得なくなってしまいました。彼らの証言の『カケラ』をつなぎ合わせた物語、紡ぎ出された少女の死の真相とは。 湊さんらしいな~と言いつつ、読み終えて思い出したのは京極夏彦さんの『死ねばいいのに』でした。あの作品も、とある青年が殺された女性のことについて関係者を訪ね歩き、彼らの独白を聞くというものでしたっけ。ただし、あちらのほうは殺された女性のことより自分が不幸である話をしたがり、それについてとどめを刺されていましたが。こちらでは、とりあえずはみんな自殺した少女の話をしてるんだけど、でもやっぱりなんとなく自己防衛に走ってる感がありましたね。 何人もの話を聞いて歩いた久乃。彼女が自殺した少女・吉良有羽の手術をしたんだろうな~っていうのは、割と最初の方から気がつくことが出来たんだけど、有羽が何故〈ドーナツに囲まれて〉自殺したのかが、わからなかったんですよね。読んでいくうちにわかるのかな~と思ってたら、全然わからない。太っていることにコンプ…

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