『創られた心 ~AIロボットSF傑作選~』/ジョナサン・ストラーン編 ◎ (アンソロジー)

超絶文系人間のくせに、〈AIとかロボットが人間と関わる物語〉が大好きな私。『創られた心 ~AIロボットSF傑作選~』というタイトルからしてもう、直球ド真ん中って感じです!創元社SF文庫では、いろいろな種類のSFのアンソロジーを出してるんですねぇ。そして編者のジョナサン・ストラーンさんは名アンソロジストだそうですが、存じ上げませんでした。16編の、様々なAIやロボットやアンドロイドなどの人工的に作られた知能を持つ機械あるいは装置の物語が詰め込まれた、非常に興味深いアンソロジーでした! とりあえず、いろいろな名称がありそれぞれ細かくは違うと思うのですが、ワタクシ文系人間なので難しい分類を理解することが出来ません。ということで、それぞれの物語に出てくる「創られた心」の持ち主たちを総称して〈ロボット〉あるいは〈AI〉と呼ばせて頂くことにします。 「働く種族のための手引」/ヴィナ・ジェミン・プラサド職種の全く違うメンターロボットと新人ロボットのやり取り。ラストが可愛い。「生存本能」/ピーター/ワッツAIの生存本能VS人間。「エンドレス」/サード・Z・フセイン空港運営AIが吸収された先は・・・「ブラザー・ライフル」/ダリル・グレゴリイ戦争の時に犯した失策のトラウマにとらわれている男。「痛みのパターン」/トチ・オニェブチ訴訟資金を回すために、仕組まれた状況。「アイドル」/ケン・リュウ裁判に勝つために、陪審員を想定した仮想人格を組み上げる弁護士事務所。「もっと大事なこと」/サラ・ピンスカースマートハウスでの事…

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『トランクの中に行った双子』/ショーニン・マグワイア ◯

前作『不思議の国の少女たち』で重要な登場人物であった双子のジャックとジリアンが、本作『トランクの中に行った双子』の主人公。彼女らがどのようにして不思議の国へたどり着き、そこでどのように生き延び、そしてどのようにして現実世界に戻ってきたかが描かれる。ショーニン・マグワイアさんのファンタジー世界は、甘っちょろさのない厳しさの中に、希望と絶望が存在していました。 子供を、自分のステータスを飾る一つの〈モノ〉のように扱っていた夫婦に抑圧されてきた双子の姉妹、ジャクリーンとジリアン。ある日彼女らは、屋根裏部屋にあったトランクの中に階段を見つけ、そこから〈異世界〉である「荒野」に足を踏み入れる。姉のジャクリーンはマッド・サイエンティストの弟子の〈ジャック〉になり、妹のジリアンは荒野を支配する吸血鬼の養い子の〈ジル〉となる。時は流れ、本物の吸血鬼になることを望んだジルは姉が愛した村娘・アレクシスを惨殺し、吸血鬼に見放され、村人たちに追われる。ジャックはジルの手を取り、逃走の果てに〈現実世界〉に戻ることになる。 親が子どもたちを自分の装飾品のようにし、1人は「きれいな女の子」もう1人は「男の子にも負けないぐらい活発な子」として、期待という名の押し付けで、逆らうことも許さない育て方をしてたっていうのが、腹立たしくてならなかったですね。生殺与奪を握っている親からそんな抑圧を受け、それでも認められたいと反抗することも出来なかった小さな女の子2人を思うと、切ないです。そんな彼女らが、厳しい「荒野」の地で、それぞれ望ん…

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『魚舟・獣舟』/上田早夕里 ◎

遠い遠い未来で、分岐した先の世界で、〈ひと〉はどこへ行こうとしているのか。なにを求めているのか。いや、〈ひと〉だけではない。すでに〈ひと〉と〈人工生命〉や〈動植物〉や〈妖怪〉の境界が曖昧になったこれらの世界で。上田早夕里さんの描く、ディストピア感漂う世界の物語が、6編。狂おしいほど没頭し、胸の痛みを実際に感じながら、『魚舟・獣舟』のそれぞれの物語を、非常に堪能いたしました。 「魚舟・獣舟」自分の双子の片割れが魚舟となり、魚舟になれなかったものは獣舟となって、陸に上がろうとする。人類がそんな進化を遂げた世界で。「くさびらの道」あらゆる生物に寄生する茸が蔓延し、寄生され死亡した人間は哀しく恐ろしいものに姿を変えるという。「饗応」出張の時に、いつも泊まるホテル。別館に案内された貴幸は、風呂に入り夕食を摂る段になって、飼い猫と再会する。「真朱の町」追われて逃げ込んだ町は、妖怪と人間が共に存在する町であった。連れていた子供を攫われた邦雄は妖怪の手を借りて、取り戻そうとする。「ブルーグラス」思い出を置いてきた場所が、環境保全のため閉鎖される予定地になった。「小鳥の墓」女を数多く殺して広域手配されている男の少年時代。教育実験都市の闇の不文律。 一行ずつ、あらすじのようなものを書いたけれど、そんな簡単に語れる物語たちではありません。えぐさのない苦味のようなものがありました。読後感に切なさや苦さはあるのに一抹の清涼感があって、どの物語にも、かすかな虚しさと諦念が漂っている気がしました。登場人物たちにはどうするこ…

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『そこに無い家に呼ばれる』/三津田信三 ◯

三津田信三さんの実録風ホラーですよ。毎回「フィクションなのは、わかってるんだけど!!」とぎゃあぎゃあ言い訳しながら、それでもやっぱり怖がっちゃう系統の作品なのですよ。『そこに無い家に呼ばれる』んだそうですよ。呼ばれて、無いはずの家に入り込んで恐ろしい目に合う話、無いはずの家がある土地に侵入して恐ろしい目に合う話、心療中の患者が消えてしまった話、一言で言ってしまえばとても簡単なのに、これらの関連性を作家・三津田さんが解釈すると・・・。ヤバいです。語彙力消えるレベルで、ヤバいです。 先述した「あの家に呼ばれる 新社会人の報告」「その家に入れない 自分宛ての私信」「この家に囚われる 精神科医の記録」という3つの記録が、三間坂氏(怪談愛好家の出版編集者)の実家の蔵から発見されたことから、物語は始まります。この3つの記録の合間に三津田さんと三間坂氏の会合の様子が挟まれ、毎度のごとく脅しのような警告がされるのですよ。「これらの記録を読んでいる最中に、なにかが「一つずつ減っている」または「増えている」ことに気づくことがったら、読書は中止した方がいい」と。「はいはい、毎度の脅しですね~、もう慣れましたよ~、そんなの全然怖くありませんって~(笑)」と、言いたいところなんですが、妙に怖い。というのも、ワタクシの身の回りでちょっとした変化が起こりまして、モノが減ったんですよ。必然的にね(笑)。「気付いたら」レベルじゃなく「あからさまに」なので、恐れる必要はないんですけどね。ただ、この警告内容知らないのにこのタイミング…

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『最高のオバハン ~中島ハルコはまだ懲りてない!~』/林真理子 ◎

前作『最高のオバハン ~中島ハルコの恋愛相談室~』に引き続き、フードライター・いづみをお供に、様々な人達のお悩みに解答を与えていく女社長・ハルコ。本作『最高のオバハン ~中島ハルコはまだ懲りてない!~』でも、相変わらずの押しの強さでグイグイくる調子は変わってません。タワマン住まいのセレブでも、韓国人コーディネーターでも、美魔女でも、ハルコが「甘ったれてんじゃないわよ!」「こうしたほうが、有利じゃないの」と正論やハルコ哲学をぶん回した末に、力技で解決解答を与えられていきます。・・・まあ、その勢いの凄さやアクの強さ、私みたいな平々凡々な小市民はとてもじゃないけど、相手にして貰えそうにもありません(笑)。林真理子さんの描くオバハン、キャラが濃くて今回もしっかり楽しませていただきました! いづみとしては、「なんだかハルコさんに振り回されて、割りを食ってる気がする、美味しいものが食べられるといってもだいたい割り勘だし」なんて言ってますが、ハルコはいづみの悩みにも何回もアドバイスを与えてるので、そんなに損してないと思いますよ(笑)。何でもズバズバ言っちゃうハルコには女友達がいないので、なにかっちゃ誘いやすいいづみの存在は、案外大事みたいですし。ハルコは前作でも今作でも盗難にあってるんですけど、動揺してるときの頼りにするのがいづみということで、いいコンビなんでしょうね。ちょっと年齢の差があるのも、逆にいいのかもですね~。 美味しいものを食べながらのハルコ流の「人生の薙ぎ倒し方(笑)」を聞いてると、なんだか読…

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『推し、燃ゆ』/宇佐見りん ◎

2021年本屋大賞ノミネート作及び芥川賞受賞作、しかもテーマは流行りの〈推し〉。話題性の高さ故に図書館での人気が高くて、なかなか順番が回ってこなかったのですが、やっと読めました。『推し、燃ゆ』のタイトル通り、冒頭から、主人公・あかりの〈推し〉であるアイドル・真幸が炎上。一気に惹き込まれて、凄い勢いで読んでしまいました。著者の宇佐見りんさん、当時21歳だったんですよね~。すごい、としか言いようがありません。 私、物語を読むときは、できるだけあらすじとか解釈とか入れない状態で、自分の感覚だけで読みたい人なんですが。本作に限っては、実は文学解説の動画を見ちゃったんですよね。・・・というか、もともとはあんまり読むつもりがなかったので、動画で情報だけ・・・のつもりでいたら、「え?!これ読みたい!!」という気持ちになりまして。そこから〈図書館で予約→なかなか順番が回ってもない・・・→やっと来た→一気読み、すごい作品だ!!〉という流れになったのでした。 読んでみて、タイトルや前情報のあらすじから思っていた印象より、あかりの〈生き辛さ〉を強く感じました。私はメンタル疾患や学習障害的なことに詳しくないので、間違っていることを書いてしまったとしたらとても申し訳ないのですが、一個人としての印象を書かせてもらうと、「あかりは〈推し〉である真幸を理解・分析することに依存していた」のかなぁと思います。「病院でふたつほど診断名がついた」とか、「小学生の頃、どうしても漢字が覚えられなかった」とか、興味を持てる対象には非常に集…

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