『これからの暮らし by ESSE vol.6(秋冬号)』/エッセ2023年12月増刊号 ◎

前号まで、キャッチフレーズは〈50代からのちょっといい毎日、ちょっといい未来〉だったのが、今号から〈60代からのちょっといい毎日、ちょっといい明日〉に変更されてました。えぇ~、ドンピシャ世代雑誌かと思ってたら、将来の予習をする雑誌になっちゃった・・・どうしてかしら。『これからの暮らし byESSE vol.6 (秋冬号)』の表紙は風吹ジュンさん。お肌の艶が素晴らしいですねぇ。 50代から、が60代からに変更されたわけですが、そうですねぇ・・・確かに出てくる人たちの年代が上がった感じがします。私の〈今〉にフィットするというより、〈ちょっと先〉の生活というか生き方をこんな風に出来たら、無理しない程度にオシャレでイキイキできるのかな・・・?って、う~んちょっと私の現実に寄り添ってくれない感じかも・・? とは言いつつも、特集「60歳からのものの「持ち方」「手放し方」」は、やっぱり参考になりました。何でも減らしてミニマリスト!ってのは私とは合わないけど、たくさん物を持つと維持管理が大変だから、使い勝手が良くて私らしくて持ってて気分がいいモノを持ちたいと思ってるんですよね。なので、特集されてる中で、私に合いそうなやり方、モノの選び方を、自分流解釈で身につけていきたいと思いました。服の色を限定するとか、モノそのものの重さやかさばりを重視するとか、なんとなくは意識してたことを明確に意識して、身の回りのものをうまくセレクトしていきたいですね。 今号で画期的だなぁ!!と感心したのが、「村上翔子さんのひとり分冷凍…

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『その本は』/又吉直樹・ヨシタケシンスケ ◯

芥川賞作家の又吉直樹さんと絵本作家のヨシタケシンスケさんコラボレーション、〈本〉にまつわる物語がたくさん詰め込まれた『その本は』。本好きの王様から、〈世界中を旅して、『めずらしい本』について知っている者からその本についての話を聞き出してきて、教えてほしい〉という依頼を受けて、二人の男が語る、たくさんの〈本〉についての物語。 13夜にわたり、男たちは交互に〈めずらしい本の話〉を語り尽くす。短くて一夜にいくつも語られるときもあれば、長い物語を一つだけ語る夜もあり、可愛らしい物語も、ゾワゾワするような物語も、悲しくなるような物語も、ナンセンスな物語も、全ての物語は「その本は」という語り出しで始められる。 〈めずらしい話〉ではなく、〈めずらしい本の話〉であるところが、ミソ。〈その本〉そのものの話も、〈その本〉に書かれていることについての話も、そして〈その本〉に人格のようなものがある話も、全ては二人の男の語りによってのみ、明らかになるのだから。 なんて書いてると、真面目に〈物語〉を蒐集してきたような感じがしますが、とんでもない(笑)オチがあります。でも、なんか、そのオチが良いのですね。思わず「ですよね~(^_^;)」って、口に出しちゃいましたもん。そのオチあってこそ、この2人に語らせた意味がある気がする(笑)。人気お笑い芸人の又吉さん、ナンセンス絵本で有名なヨシタケさん、この二人を組ませた王様が、ぬかったのですよ(笑)。あ、でも二人は王命を受けたあと、「こうしましょう」って談合したのかしら。せずに、二…

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『歓喜の歌 ~博物館惑星Ⅲ~』/菅浩江 ◎

地球の衛星軌道上に人工的に作られた、博物館苑衛星〈アフロディーテ〉。開設50周年記念フェスティバルに向け準備に慌ただしいその星に、データベースシステムと直接接続する学芸員たち、〈権限を持った自警団〉として警備活動する者たち、美術博物を取り扱うビジネスマンたち、そしてもちろん鑑賞に訪れる沢山の人々が集い、〈美〉を守り・分析し・崇め・堪能している。『歓喜の歌 ~博物館惑星Ⅲ~』で菅浩江さんが描く〈アフロディーテ〉での人々の営みは、データベースシステムを人情を解するように育成するという目的に適った、美しさと情緒と複雑な要素が絡み合っていました。 本作の主人公は、前作『不見の月 ~博物館惑星Ⅱ~』に引き続き、〈権限を持った自警団(VWA)〉の新人警備員・兵藤健。彼は、警備員ながら情動学習型データベース〈ディケ(正義の女神)〉に直接接続し、〈アフロディーテ〉での警備活動をしながら〈ダイク(ディケの男性称)〉の育成に努めている。 前作のレビューで「自分には芸術鑑賞力がない、もうちょっと上がるといいのだけど」なんて書きましたが、本作を読むにあたって結局、鑑賞力は上がってないと思います。残念ながら(^_^;)。前作よりは経験を積みつつも、芸術に関してはまだ素人の域にいる健の目線で語られるので、なんとか一緒に楽しめましたが(笑)。 遺伝子操作で違法に作られたタマムシの回収作業、真贋を見比べる展示に介入してきた犯罪組織、スランプ中の笑顔の写真家、プラントハンターと大手薬品企業会長のわだかまり、国際警察機構が目を…

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『神前酔狂宴』/古谷田奈月 ◎

主人公である結婚式場の披露宴会場スタッフの浜野の思考が、かなり独特。浜野のあっけらかんとした軽やかさが、理解できるようで難しくて、途中までは〈ただ物語を読んでいる〉状態だったんですが、途中から理解しきれないままでも浜野のパワーに引きずられるようになって、勢いよく読めるようになりました。古谷田奈月さんの『神前酔狂宴』、面白かったです。 結婚式場の披露宴会場の現場スタッフ(派遣)の男の、何年にも渡る仕事物語・・・というと苦労を重ねて成長して出世して、感動的なラストを迎えるようなストーリかと思いきや、本書はちょっと違う(笑)。浜野は、怒号飛び交う現場を取り回し、華やかな会場を盛り上げ、ということを案外苦労せずに持ち前の軽やかさと反射的な行動力でやってのけてしまう。苦労話じゃなくて、神社所属の披露宴会場という特殊性(一番偉いのは会館の社長じゃなくて宮司とか、兄弟神社から手伝いに来る人がいるとか、そういうとこ)を、主人公がどうやって自分なりの論理で受け入れて行くかっていう話なのですよ。浜野の発想が結構独特で普通じゃないから、面白いけど理解が難しかったりして、でもなんだかスカッとしました。 浜野と同じタイミングで派遣会社に登録し、同じく「高堂会館」(高堂神社に付属する結婚式場)へと派遣される仲間となった梶、兄弟神社である椚神社から協力スタッフとしてやって来る倉地、同年代の3人は仲良くなる。高堂会館のスタッフのバリバリとした働き方に対してのんびりおっとりしすぎている椚スタッフの改革に勤しむ倉地、倉地に恋心を…

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『赤い月の香り』/千早茜 ◎

前作『透明な夜の香り』で、一香が退職してしばらく経ってから・・・。カフェで調理の仕事をしていた朝倉満は、調香師の小川朔とその友人・新城にスカウトされ、朔の住む屋敷での仕事につくことになる。千早茜さんの描く、〈嘘〉をつかなければどんな香りでも調香してくれる朔の屋敷での、緊張感を孕みながらも穏やかな日々に、憧れますねぇ。ただ・・・確実に、私はこの中に入っては行けないんだろうなぁ・・・。存在自体が騒々しいから(笑)。満の恐れていた『赤い月の香り』。それは、どういうものなのか。 一香のかわりに朔の屋敷の仕事をする人が若い男性・・・、最初は違和感がありました。新城も「俺は一香ちゃんの方がいい」なんて言うし、屋敷内を音も立てずに掃除したり料理したりという仕事に向いているのかしら、と思ってしまって。でも、庭師の源さんの手伝い(主に力仕事)や、調理の仕事をしていたから料理上手だという点では、なるほど若い男性もありか・・と思えるようになってきました。過去の経歴から、孤独を好む性質であることも、屋敷の雰囲気には馴染みやすかったかもしれませんね。 世界一の歌手のための香り、『透明な~』にも登場した仁奈、過去の香りを再現したい男、今はなき母親の香りだけを求めて嗅覚を失ってしまった女性、源さんの思い出の香りと娘との再会、結婚指輪代わりの特別な香りがほしい夫婦、そして・・満の過去。ひとつの物語の中で調香される香り、庭の植物、ひっそりと関わり合う人々の関係性、どれもが柔らかく儚い印象でした。 さりげなく何度も登場する一香…

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『忌名の如き贄るもの』/三津田信三 ◎

これだから、三津田信三さんの〈『◎◎の如き●●もの』シリーズ〉は、止められないのよ・・・。本作『忌名の如き贄るもの』(いなのごときにえるもの)も、相変わらず〈土着民俗系ホラーミステリー〉ド直球でしたわ~。おどろおどろしい、奇妙な儀式。儀式の最中に失われた命。村に出没する、怪しい存在。妙に口重い、村人たち。様々な証言や事実から、言耶が推理を二転三転させる場での、緊張感。ラストまで気が抜けないことは予測できていたのに、それでも物語最後にゾッとさせられました。 大学の先輩・発条福太の依頼で、福太の婚約者・李千子の実家に伝わる年齢通過儀式について解説をするために発条家を訪れた言耶は、李千子の弟の市糸郎の葬儀に参加する李千子・福太・福太の母の香月子に同行することになる。葬儀の場に現れた刑事に請われ、捜査に協力することになった言耶は調査を始めるのだが、村人たちの様子に微妙な違和感を覚え、情報もなかなか集まらないことから、苦戦する・・・ 上手く物語を要約できない・・・。色々なことが起こるし、村の空気はおどろおどろしいし、相変わらず言耶の推理は二転三転するし(それなりに根拠があるものだから、読んでてつい惑わされる・・)。ので、例によって要約は放棄します。 今回、祖父江偲は最初にちょっと登場しただけでしたね~。まあ、いると少々うるさいので、今回の事件の雰囲気的には、不参加でよかったと思います。 関係者を集めての言耶の推理展開は、毎度のことながら「容疑者とその動機」を列挙していくスタイルで、つい「真相はそうい…

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