『ツミデミック』/一穂ミチ ◯

ツミデミック [ 一穂ミチ ] - 楽天ブックス 一穂ミチさんの作品を読むのは、2作目。前作『スモールワールズ』でも、様々なバリエーションで描かれる「穏やかに普通に生きているように見える人々に訪れる変化」を楽しませていただきましたが、本作『ツミデミック』もホラーやミステリなどの様々な作風の中で、「罪とパンデミック」の融合した世界を体験しましたね~。直木賞受賞作、面白かったです。 世界を瞬く間に恐怖のどん底に叩き落し、様々な情報が錯綜し、何度も感染拡大の波が打ち寄せては混乱した、コロナウイルスの蔓延。発生から4年たった今では、当時から今への「自粛」「ステイホーム」「マスク騒動」「マスク警察」などの様々な事態の狂乱とその変遷が、なんとなく現実感を感じられないままに、流れていった気がします。もちろん当時は、家族が感染したり、ステイホームで学校が休みになったり、自分にも影響があったはずなのですが・・・。 コロナ蔓延によって人生を変えられてしまった人々、「違う羽の鳥」や「ロマンス☆」「燐光」のようにゾッとする展開の物語が続いた後の、「特別縁故者」は「なんかいい話になりそうな展開なのに、どこで梯子を外されるんだろう・・・」とビクビクして読んでました。そのビクビクは外れて、いい終わり方が訪れたので、ホッとしました。じいちゃん、ナイスプレゼントだ!と笑っちゃいましたもん。だいたい「表に出せない金」が本当かどうかも、怪しい気も・・・?でも、そうやって釘を刺された恭一も、素直に手紙に書かれた言葉を受け取ることが…

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『絡新婦の理』/京極夏彦 ◎

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫) [ 京極 夏彦 ] - 楽天ブックス私は毎回、京極夏彦さんの作品を〈神をも恐れぬ製本〉やら〈読む鈍器〉やらと称して、腱鞘炎になる不安を抱えつつ読んできたのですが、なんと今回は〈スマホに入れた電子書籍で読む〉という、禁じ手を使ってしまいました・・・。ちなみに、電子書籍で本作を買おうとすると4冊に分冊される文庫版での入手となりました。うん・・・軽かったですよ。持ち歩きもお手軽だったです。でも、でもね、なんか物足りなかったです・・・!なんと我儘なことよ・・・(笑)。〈百鬼夜行シリーズ〉の5作目である『絡新婦の理』、〈京極本は紙で読むべし〉と感じてしまった作品となりました(笑)。 まず最初に、ストーリーを要約するとか、いくつも発生する事件を整理して解説するとか、そういうコトはできません!!と白旗を上げておきます(笑)。毎度のことですが、いくつもの事件が発生し、死体は量産され、シリーズメンバーが関わりあって集まり、情報は錯綜し、京極堂が出座するまでに事態は混乱を極め、憑き物落としでは迸る蘊蓄と怒涛の博覧強記が繰り広げられます。つまり、私の如き浅慮・アタマの回転数が低さでは、読むだけで手一杯だったのでございます。読んでて、混乱することも多々あり、メモを作りながら読んでもワケがわからなくなることも・・・。ダメだこりゃ、京極作品を読む資格あるのかしら、私・・・(笑)。 冒頭、いきなり京極堂と黒幕と思われる女の会話から始まる。彼女の求める世界は、彼女が織り上げた犯罪によって実…

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