『ツミデミック』/一穂ミチ ◯
ツミデミック [ 一穂ミチ ] - 楽天ブックス
一穂ミチさんの作品を読むのは、2作目。前作『スモールワールズ』でも、様々なバリエーションで描かれる「穏やかに普通に生きているように見える人々に訪れる変化」を楽しませていただきましたが、本作『ツミデミック』もホラーやミステリなどの様々な作風の中で、「罪とパンデミック」の融合した世界を体験しましたね~。直木賞受賞作、面白かったです。
世界を瞬く間に恐怖のどん底に叩き落し、様々な情報が錯綜し、何度も感染拡大の波が打ち寄せては混乱した、コロナウイルスの蔓延。発生から4年たった今では、当時から今への「自粛」「ステイホーム」「マスク騒動」「マスク警察」などの様々な事態の狂乱とその変遷が、なんとなく現実感を感じられないままに、流れていった気がします。もちろん当時は、家族が感染したり、ステイホームで学校が休みになったり、自分にも影響があったはずなのですが・・・。
コロナ蔓延によって人生を変えられてしまった人々、「違う羽の鳥」や「ロマンス☆」「燐光」のようにゾッとする展開の物語が続いた後の、「特別縁故者」は「なんかいい話になりそうな展開なのに、どこで梯子を外されるんだろう・・・」とビクビクして読んでました。そのビクビクは外れて、いい終わり方が訪れたので、ホッとしました。じいちゃん、ナイスプレゼントだ!と笑っちゃいましたもん。だいたい「表に出せない金」が本当かどうかも、怪しい気も・・・?でも、そうやって釘を刺された恭一も、素直に手紙に書かれた言葉を受け取ることが…