『ミライの源氏物語』/山崎ナオコーラ ◯

ミライの源氏物語 [ 山崎ナオコーラ ] - 楽天ブックス 水無月・Rは、〈アンチ源氏の君〉である。このブログの分類の中に「〈アンチ源氏の君〉におススメ?」なんていうラベルを作ってるぐらい、アンチなのである(笑)。そりゃたしかに、美貌と才気の持ち主ですよ。血筋もいいですよ。だけどさ、それを鼻にかけて上から目線で女君たちを自分の都合のいいように当てはめて支配し、ちょっと自分に不都合なことがあれば「なんて私は不幸なんだ」とか言ってベソベソ泣く。基本的に自業自得でも。・・・うん、やっぱり蹴りを入れたい(笑)。そんな『源氏物語』を、山崎ナオコーラさんがどのように読み解いてくれるのか?というのが、本書『ミライの源氏物語』を手に取った理由でございます。 タイトルだけ見て、「現代語訳あるいは現代風アレンジなのかな」と勝手に思ってたので、読み始めてちょっとびっくり。とはいえ、読み解くという意味では、期待通りでした。「紫式部がこの物語を書いた当時の世相を、現代の社会規範とのズレで読み直す」というもの。 千年前では当たり前だったことも、現代に当てはめれば大いに問題アリ、だから現代の読者はイライラ・モヤモヤする。「マザコン」「ロリコン」「ホモソーシャル」「貧困問題」「マウンティング」「トロフィーワイフ」「性暴力」「産んだ子供を育てられない」「不倫」「ジェンダーの多様性」「エイジズム」「出家」「受け身のヒロイン」と、様々な角度から、「千年前はOK(普通)だったことでも、現代社会規範に照らし合わせればNGだったり多様…

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『狩りの季節(異形コレクションLII)』/井上雅彦 監修(アンソロジー) ◯

狩りの季節 異形コレクションL2 (光文社文庫) [ 井上雅彦 ] - 楽天ブックス ワタクシ、自分が中途半端な〈耽美好き〉〈怪異好き〉だという自覚があります(笑)。そんな私にとって〈異形コレクション〉のシリーズは、実は憧れであり、生半可な気持ちで踏み入れてはならない神域でもあり・・・。ずっと、存在は知っていたし、多分私の好みに合う作品がたくさんあるだろうなぁという予測は、してたんですけどね。とうとう、その中の一冊に手を出してしまいました・・・。井上雅彦さん、このアンソロジー『狩りの季節』は・・、私の〈狩られる側〉的性質を、グリグリと抉り出してくれちゃいましたよ! いやはや・・・。大抵の人間を〈狩る側〉と〈狩られる側〉に分類するなら、私は狩られる側ではあると思います。ただ、基本的には世の中は狩り場ではなく、平々凡々に生きていく世界が広がっていて、特殊な事情が発生したとき突然その対象者にとっての世界が狩り場になるんだとは思うんですけど。その特殊な事情って、些細なことだったりとんでもないことだったり、並行世界だったり彼岸だったりして、普通はありえないけど案外誰でも陥るものかもしれない・・・なんて感じてしまったんですよねぇ。そこから妄想がちょっとでも膨らめば、もちろん私は〈狩られる側〉で。息を潜めて物陰に隠れ、対抗手段を考えてもあっけなく躱され、かといって諦めておとなしく狩られるまでのカウントダウンなんて怖くてできないわけで。 そんなメンタル&性質の持ち主の私が、こんなアンソロジーを読んだ日には、…

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『たおやかに輪をえがいて』/窪美澄 △

たおやかに輪をえがいて (中公文庫 く33-1) [ 窪美澄 ] - 楽天ブックス いやぁ、なんていうかね、文章はとてもいいのですよ。読みやすく、登場人物の造詣もしっかりしてる。なんですが、どうも本作『たおやかに輪をえがいて』の主人公・絵里子の煮え切らなさに、イライラしてしまうのですよ。窪美澄さん、初読みでこの感想は、ちょっと申し訳ない気がしますね・・・。 私と絵里子は同年代のパート主婦、子供も大学生になって手がかからない、平凡であることすら〈同じ〉と言えそうなのに、全然共感できなかったのですよ。共感できりゃいい、ってもんでもないんでしょうけどね・・・。 ある日、夫が風俗店通いをしていることに気付いてしまった絵里子。もやもやを抱えながら、自分が飲み込めばいいのか、問いただすべきなのか、などと迷っていたある日、娘が警察に保護され夫婦で迎えに行く事になる。夫は娘を叱りつけ、娘は反抗し、その流れで「風俗店のポイントカードを見つけてしまった」「ここを離れたい」と夫に告げ、絵里子は家を出る。友人の詩織の勧めで、海辺の温泉ホテルの数日滞在し、その後自宅に戻ることなく、ランジェリー店を経営している詩織が倉庫代わりに所有しているマンションで暮らしながら、詩織の店を手伝い、生計を立てる絵里子。母の再婚相手の死亡、その葬儀の場で夫と再会するも家には戻らず、詩織のマンションで暮らし続ける絵里子。詩織の店の店長になり、夫と知り合った小さなバーに、再会を期待しながら時々通う。クリスマスが近いある日、夫とバーで再会し、…

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