水無月・R的・2024年読了作品 ベスト10!

2024年も、いろいろな作品を読みました。1年間で53作品。去年より減ったのは、フルタイム勤務になったから・・・という言い訳をさせてください(笑)。それでもまあ、週1作品は読めたので、私的には満足です。それでも、たった53作品しかないのに、ベスト10選ぶのが、どれだけ大変かっていうねぇ。今年読んだ作品をざっと眺めて、SF、ミステリ、ファンタジー、海外作品、爽快な作品、情緒的な作品、笑えるもの、切なくなるもの・・・自分の好みがあまりにも雑食過ぎるので、ちょっと笑ってしまいました。〈ちょっとイタいアンニュイ嗜好〉も、ますます増長してる気がします。読んでて楽しい(笑)。 というわけで、悩みに悩んで、選んだベスト10をご紹介します。 〈水無月・R的・2024年読了作品 ベスト10!〉 1位 『成瀬は信じた道をいく』 宮島未奈まっすぐに自分の信じた道を貫く成瀬。成瀬の活動範囲は全国へ!同率1位 『成瀬は天下を取りにいく』 宮島未奈成瀬登場。私、実年齢のままで成瀬と友達になりたい。2位 『七十四秒の旋律と孤独』 久永実木彦機械も人間も、己の希望を込めた〈物語〉を持つ。それは暖かく、美しい。3位 『本の背骨が最後に残る』 斜線堂有紀陰惨な状況下に置かれてなお、美しい者たち。4位 『華竜の宮』(上・下) 上田早夕里海面上昇で陸が激減した世界で、さらなる大異変が起こる。5位 『ペーパー・リリイ』 佐原ひかり詐欺師のこどもと騙された女の、爽快ロードノベル。しかもラストが大逆転(笑)。6位 『了巷説百物語』 京極…

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『病葉草紙』/京極夏彦 ◎

病葉草紙 [ 京極 夏彦 ] - 楽天ブックス 毎度ながら、京極夏彦さんの作品のボリュームは、尋常じゃない(笑)。本作『病葉草紙』も、ソフトカバーながら、厚みは3.5cmを超え重量も600gを超え、通勤バックの中での存在感半端なかったですよ・・・。もちろん、職場の休憩室で奇異の目で見られましたしね、慣れっこですけど。八丁堀近くの藤左衛門長屋で起こる騒動を、大家の息子・藤介をワトソン役に、店子の久瀬棠庵が〈虫〉の仕業になぞらえて解決するという、割と軽いノリで描かれていて、ボリュームのわりに読みやすかったですよ~。 隠居大家の父に代わって、長屋の管理や見回りを担っている藤介。本草学者である久瀬棠庵は、店賃を年払いしてくれる優良店子なのだが、読み書きのために年中座りっきりなので、ついつい気になって様子を見に行ってしまう。ある日、長屋の店子・善兵衛が死亡し、孫娘が殺したと自供するのだが、それを見て棠庵は〈虫の仕業である〉と告げ、騒ぎを収める。それから棠庵は、藤左衛門長屋で起こる事件、藤介の父の友人の長屋で起こった騒ぎ、近隣の八丁堀の親分がかかわる事件、棠庵自身が地方へ出掛けた際に関わった娘の絡む事件、など様々な事件に対して〈虫の仕業〉になぞらえて次々と解決していく。 もちろん、棠庵が提示する虫は、本当はいない。こういった症状にこんな姿の原因があるのでは、という想像上の生き物が書物に記されているだけだし、事件を穏便に解決するためにそれを利用しているだけなのである。その〈嘘〉がわかっているのは、言い出し…

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『不村家忌憚 ~ある憑きもの一族の年代記~』/彩藤アザミ ◎

不村家奇譚 ある憑きもの一族の年代記 [ 彩藤 アザミ ] - 楽天ブックス 本作『不村家奇譚 ~ある憑きもの一族の年代記~』で語り継がれるのは、東北のとある地方の旧家・不村家に連綿と続いていく、水の憑きものとその一族の来し方行く末である。彩藤アザミさんは、全く知らなかった作家さんですが、本作は私の好きな〈ドロドロぬかるみ因縁土俗系〉(←ちょっとイタいアレ系な好みをつついてくる・・・)ですねぇ。ずっと、ゾワゾワしながら読んでいました。 使用人はすべて不具、時折体の一部が欠如した「神がかり」と呼ばれ、卓越した頭脳(才能)を持つ子供が生まれる、不村家。物語は、そのすべて不具であるはずの使用人の中でただ一人健常であった、菊太郎という男の幼少期の回想から始まる。農地改革で衰退しつつある不村家に生まれた、「神がかり」の愛一郎。やがて、不村の屋敷は火事でなくなってしまう。次の語り手は、一見健常に見えたがやはりフグを抱えていた使用人・千宇。不村家の家事の後を語る。そのあとは、火事で遠方に引き取られた不村家の娘・久緒(愛一郎の姉)の娘・不村詠子、詠子の娘・ヨウ、そしてヨウの息子・奈央、・・・そしてさらに世代を経た不村家を訪れた「木村」。木村の語りで、物語は閉じるのだが。 読みながら、「あぁ、これは、救いのないパターンな気がする・・・」と思っていました。衰退する旧家、火事で家は消失するも、憑きものはその土地に取り憑いたままでありながら、執拗に子孫の運命を捻じ曲げ引き寄せていく。かつて不村家の代々の家業は不具で…

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『ゼウスの檻』/上田早夕里 ◎

ゼウスの檻 - 上田 早夕里 宇宙開発のために、人工的に作られた生命体・ラウンド。彼らは人間を元にしつつ、II(アイ・アイ)という染色体を持ち、雌雄同体である。ラウンドがいずれさらなる宇宙へと進出していくための特区が木星の軌道上ステーションにあり、そこをテロリストが襲撃するという情報が入ってきた。上田早夕里さんの描く、新たなSF世界。以前に読んだ『火星ダークバラード』とは、別の世界観なのだそうです。どうして人類は、〈違う〉ということに対して過敏に反応してしまうのか。『ゼウスの檻』に囚われた、ラウンドとモノラル(単一性である従来の人類)の葛藤と混乱と苦い結末が描かれていきます。 ガス惑星である木星の軌道上には3つの宇宙ステーションがあり、その中の一つジュピターIの特区には、両性を持つ新たな人類・ラウンドが暮らしている。いずれ、その特区ごと切り離して宇宙船とし、彼らをが木星以降へと送り出すという計画なのである。遺伝子や染色体を加工し他種族を作り上げ、人類の尊厳を傷つけたとして〈生命の器〉という団体はラウンドを忌み嫌い、彼らを殲滅させようとテロリストを送り込むという情報が入り、警備隊の隊長・城崎は入れ替わるはずだった前任のハーディング隊とともに、襲撃に備える事となる。とある事件から特区から出ることを許されなくなったラウンド、ラウンド特区を維持するために機能するステーションスタッフたち、そしてステーションの警備の強化を図る、警備隊の面々。だが、テロは外部からの襲撃ではなかったのだ・・・。 ラウンドと…

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