『きみのお金は誰のため ~ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」~』/田内学 △

きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 [ 田内 学 ] - 楽天ブックス 時々「お金」についての書籍を読むことにしているのですが、本書『きみのお金は誰のため ~ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」~』も、その流れで〈読みたい本リスト〉入りしていたものです。著者・田内学さんは、元外資系証券マンで「お金」に関する書籍をたくさん記されている方です。本書、O市図書館ですごい順番待ちの末に、やっと私の手元に来ました。難しい経済や社会の話ではなく、中学生の主人公にもわかりやすいように「お金」について教えてくれるので、私のような中途半端な知識の人間でもわかる内容でした。 中学生の優斗は、ひょんなことから大きなお屋敷で「お金の謎」について教えられることになる。「お金自体には価値がない」「お金で解決できる問題はない」「みんなでお金を貯めても意味がない」大きなお屋敷で「お金の向こう研究所」のボス(関西弁でしゃべる、小動物のような初老の男性)のお金についての話を聞くうちに、世間一般で通っている「お金がなければ幸せではない」や「将来のためにお金は貯めるべき」などの欺瞞が暴かれる。何度も屋敷に通ううち、優斗はお金についての見識を新たにすることになるのだが・・・。 ボスの話、なんとなくわかるけど完全には納得できない私は、たぶんお金の奴隷なんですね(笑)。読了してもなお、「それでもお金は欲しい」と思ってますから・・・ダメじゃん。まあ、お金そのものではなく、その向こう側にある〈…

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『本日もいとおかし!枕草子』/小迎裕美子・清少納言 監修:赤間恵都子 ◎

新編 本日もいとをかし!! 枕草子 [ 小迎 裕美子 ] - 楽天ブックス 清少納言って、〈才気煥発・当意即妙〉自慢のいけ好かない才女・・・と思ってたのは、学生時代。今はもう、サバサバ系でパリピな気軽なお姉さん(ただし毒舌あり)だな~と親しみを感じています。そんな清少納言と彼女の作品『枕草子』を小迎裕美子さんの漫画で解説(監修は十文字学園女子大学教授の赤間恵都子先生)、楽しくて2日ほどで読んじゃいましたよ~。タイトルが『本日もいとおかし! 枕草子』で、表紙であかんべぇをする清少納言のドアップ、面白くないわけがありません(笑)。 小迎さんが『枕草子』から取り上げる、様々なトピックス。なんと1000年以上たった今でも、「マジそれな!激しく同意するわ~!」「やってらんないわ~!」「これ私も大好きッ!」と共感の嵐。 離婚した橘則光の「わかめ事件」には、笑っちゃいました。いや・・・エピソードそのものは知ってたんですけどね。小迎さんが描いた漫画で「わかめ送ったにもかかわらず、ニブすぎて全然わからない→和歌嫌いの則光に和歌を送って絶縁」という一連の流れをあの勢いで描かれたら、笑うしかないですよ。ナゴンさんの「そうだったーーこの人のーーこういうーー」のセリフの時の半分魂飛ばしてるかのような表情、そのあとの額に青筋立てて怒ってる様子、もうホント「わかるわ~、ですよね~、マジないわ~」って。 こんなに笑えて共感出来て、ちょっと毒舌に腰が引けつつも「私も‥そう思う・・かも・・うん、思うなぁ」なんて勇気を呼び起こ…

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『密やかな結晶』/小川洋子 〇

密やかな結晶 新装版 (講談社文庫) [ 小川 洋子 ] - 楽天ブックス 少しずつ物事が「消滅」していく島。住人たちはそれを受け入れ、消滅したものに対しての認識や感情も失い、日々を過ごしていく。小川洋子さんの描く、この島の人々が理不尽に失われていくものに対しても静かに受容していく諦観が、もの悲しかったですねぇ。タイトルの『密やかな結晶』とは、消滅した物に対する記憶ではなく、それぞれにある〈核〉のようなものなのかな・・・と読みながら感じていたのですが、文庫版解説の最後に解説者・鄭さんが小川さんご本人から「ほかの誰にも見せる必要のない、ひとかけらの結晶があって、それは誰にも奪えない。」という答えを聞いたというエピソードがあり、なるほどほぼ合ってるのかなと思いました。失われるもの、切り落とされていくものへの郷愁と諦観のバランスが素晴らしかったと思います。 突然消失するけれど、そのものはまだ存在していて、でもそれに対する思い入れは失われているので、それを捨て去ることに躊躇を感じない。私には、その状況が想像できませんでした。一生懸命、想像しようとするのですが、「目の前にあるのに、思い入れを一切失ってしまっている」という状態がわからない。物事に対する執着心は、そんなにない方だと思ってたのですが・・・。島の人々が長い年月をかけて少しずつ色々なものを失って、でもそれを受け入れていくしかない、あるもので生活を続けていくしかない、という閉塞感は、静かに静かに人々を蝕んでいったのでしょう。 消滅に対して記憶を失…

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『化物園』/恒川光太郎 〇

化物園 (単行本) [ 恒川 光太郎 ] - 楽天ブックス 〈それ〉は、殺し(捕食)を好む魔物であり、犬・猫・人間、なんにでも化けるし、非常に狡猾であると言われている。「ケシヨウ」という名称が一部では通っているものの、様々な形態で存在しているようである。本作『化物園』で語られるいくつもの物語のあちこちに、〈それ〉らしき存在が見え隠れしているけれど、登場人物たちを直接手にかけるようなことはしていない。恒川光太郎さんが描く、〈見たことがないのに、郷愁を覚える〉世界が繰り広げられていきます。 現代日本のような時代・昭和中期のような時代・江戸時代と思われる時代の日本らしき場所、中世の東南アジアらしき場所、どことも知れぬ隔離された場所、様々な世界が広がっています。「ケシヨウ」が人や動物を喰らうとされる物語もあれば、人を唆すだけの物語もあり、不具の子供を集めて尊ばせる物語、子供たちを外界から隔絶しひたすら音楽を追求させた物語も。 読んでいて、〈それ〉が恐ろしいというよりも、人間が〈それ〉をどうとらえるかで全く違った印象があるな…と思っていたら、最終章で〈それ〉は一つではなくそれぞれ違った存在であり、馴染んだ状況によって性質も嗜好も違う存在になっているということがわかります。自分たちの発生は、〈人の思念〉ではないかとそれは考えているけれど、定かではないことも。 ひそかに、そんな存在と共存してきた「人間」を描いたのが、この物語なのだと思います。ホラー・サスペンス・ファンタジー・・・、様々なジャンルを含んで…

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『塗仏の宴 ~宴の始末~』/京極夏彦 ◎

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫) [ 京極 夏彦 ] - 楽天ブックス 下田署の刑事・村上貫一の後悔から、下巻たる『塗仏の宴 ~宴の始末~』は始まる。そして、前巻『塗仏の宴 ~宴の支度~』から連なる、いくつもの組織集団の抗争と派生する謎、時折挟まれる〈超越者のような存在の独白〉、京極堂一派の情報収集の奔走と京極堂への出場要請、京極堂(と超越者)にだけ見えている『ゲーム』、意を決して事態の憑き物落としに乗り出す京極堂。いやぁ・・・文庫にして1000ページ越えの超大作過ぎて、読むのに2週間かかってしまいましたよ・・・。ええ、いつもの〈読む鈍器〉ですからね、職場の休憩所で「あの人今度は何読んでんのよ・・・」な目線、歯医者の待合室では「すごい本読んでますね~」と受付のお姉さんに半笑いで感心されるという・・・(笑)。あのですねぇ京極夏彦さん、文庫でこの厚みは「ご飯食べながら読む」のに適してません!!本を開いて固定できません!!(笑) 前作『宴の支度』に登場した様々な団体・組織・集団・個人が、「韮山奥の戸人(へびと)村」を目指して動き出す。千葉の刑事・木場修太郎はその過程でいったん姿を消し、拉致された中禅寺敦子(京極堂の妹)を追って探偵・榎木津も姿を消す。木場の相棒・青木、榎木津のの助手・増田、カストリ雑誌の記者・鳥口の下っ端三人衆(笑)が情報収集に駆け回っては京極堂に出場を要請するも、「何ら事件は起きていない」「このゲームに自分が参加すれば事態は事件になる」と、京極堂は動き出そうとしない。そん…

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