『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか?』/岡野あつこ 〇

なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室 (講談社+α新書) [ 岡野 あつこ ] - 楽天ブックス ワタクシ、妻の側でございます。最近、ワタクシの一言で夫がブチ切れる場面が数回ありまして、「そりゃ私の言い方も悪かったけども・・・」と反省もするんですが、「なんか、向こうの受け取り方がひがみ過ぎてない??」と思ったりも。てなわけで、『なぜ「妻の一言』はカチンとくるのか?』というタイトルの本書を知った日、速攻で図書館に予約を入れてしまった次第です。著者岡野あつこさんは、自らのバツ2経験を活かして離婚カウンセラーとして活躍、YouTubeチャンネルもやってらっしゃる方です。 サブタイトルに〈夫婦関係を改善する「伝え方」教室〉とありますが、妻の物言いを非難するような内容ではありません。ありがたや(笑)。どちらかというと、夫の側の対応の悪さを指摘して、「妻はこう考えてるのに、どうして夫は言葉や態度の出し惜しみをするのだ」的なことを書いてくれています。そこを読みながら、「夫というのは、〈察してちゃん〉なのだなぁ」と、再確認してしまいました。〈察してちゃん〉を察してあげないから、ブチ切れるわけだ・・・もちろん、それだけじゃないけど。 夫婦間にも「ホウレンソウ」が必要、ってやつですねぇ。あと、「夫婦だから、わかるだろう、察してくれ」は、よくないですね(多分、我が家の揉め事の大半はこれのせい。互いに)。中高年男性の「謝ったら死ぬ病」は、壊滅的にヤバいです。ありがちですが(ウチの夫…

続きを読む

『消滅世界』/村田沙耶香 〇

消滅世界 (河出文庫) [ 村田 沙耶香 ] - 楽天ブックス 人工授精の技術が進歩し、人類が性愛を失いつつある世界。いやぁ、村田沙耶香さん、相変わらず軽やかに「とんでもない設定」をぶっ込んできてくれますね~。この『消滅世界』はユートピアなのかディストピアなのか、非常に考えさせられました。 人工授精の技術が発達して、ほぼすべての人々が直接的な性交ではなく人工授精で子孫を残すことになった。恋愛は、〈ヒト〉ともするし〈キャラクター〉ともするが、結婚相手と性交するのは「近親相姦」だという。さらに、日本における実験都市・千葉では、徹底した妊娠・出産・育児管理が行われ、男性も人工子宮を着用しての妊娠が可能だという。主人公の雨音は、そんな世界の中で育ち、多少の違和感を覚えつつも結婚・離婚・再婚をし、2度目の夫・朔の関係のこじれた恋人が自殺未遂をした末に夫に別れを告げたことから、実験都市への移住を決意する。友人同士のふりをして同じマンションの隣どうしの部屋に住み、友人の医師の助けを借りて、お互いの卵子と精子を使って同時に人工授精し妊娠したが、雨音は流産、朔は初の男性出産者となる。二人は妊娠出産の過程でどんどんすれ違っていき、最終的には離れて暮らす。雨音は、一人で暮らしながら、とある「子供ちゃん」と出会い、彼を自分の家に招き入れる。 恋愛と性愛すら分離し、性愛の方はどんどんすたれていく世界。なんとなく、若者たちの間で恋愛結婚が廃れつつある現代日本に通じるものがあるような気もします。 3つの章に分かれている…

続きを読む

『アナベル・リイ』/小池真理子 〇

アナベル・リイ [ 小池 真理子 ] - 楽天ブックス これは、しんしんと怖いですねぇ。小池真理子さんの描く、40年にも及んだ幽霊譚。ポオの詩『アナベル・リイ』のようにひっそりと、こちらの意思は通じず、ただひたすら主人公に寄り添ってきた、その情念。 女優を夢見て上京しながら、才能及ばず酷評されたことを慰めてくれた男・飯沼と結婚した、千佳代。飯沼の行きつけのバーのアルバイト・悦子は、千佳代の唯一と言っていい友人となる。結婚後間もなく、千佳代は急病に倒れ、そのまま帰らぬ人となる。悦子のバイト先のバーの主・多恵子は、かつて飯沼に心を寄せ、かつ何度かは情を交わしたこともあったが、すでに新しい恋人との関係が成立していた。だが、悦子や多恵子の前に、千佳代の亡霊が現れる。何をするわけでもなく、俯いてひっそりと立ち尽くすその姿に、彼女たちは恐れおののき、何度もおびやかされた多恵子は、憔悴し倒れ、入院先で怯え震えながら、息を引き取ったという。千佳代の影に慄きながらも、飯沼への気持ちを抑えられなかった悦子は、飯沼と結婚し、長く一緒に暮らした。その間には、飯沼に執拗に執着する女性が駅で転落事故で死亡したり、飯沼が老年に差し掛かる際の激しい不倫の末相手ともども自動車事故で亡くなったりするという事件が起きていた。 それらの出来事を詳細に、憑かれたように書き綴った悦子。書きあがったそれを、読んでいた存在は・・・。 千佳代が執着したのは、飯沼ではなかったのでしょうね。田舎から出てきた若い女が、たった一人できた友達に執着…

続きを読む

『墓じまいラプソディ』/垣谷美雨 ◎

墓じまいラプソディ [ 垣谷美雨 ] - 楽天ブックス いやぁ・・・。垣谷美雨さんの作品ってだいたいにおいて、がっつりアラフィフ・バリキャリじゃない勤労主婦(非正規職)な私に、グサグサ来るんですよね~。本作『墓じまいラプソディ』も、〈見て見ぬ振りしたい「お墓問題」〉と〈選択的夫婦別姓〉について、「そうだ!そうだ!」と共感の声をあげたくなるようなエピソード、「あぁぁ~、胃が痛い、関わり合いになりたくない」と頭を抱えたくなるようなエピソード、満載・・・。そして、相変わらず〈出てくる男性陣が旧弊で見栄っ張り〉〈地方の因習がめんどくさすぎる〉をどんどん畳みかけてくるので、イライラもします(笑)。 私、自分のお墓は要らないって人間なのですが(松尾五月と同じくゴミとして捨ててOKなら捨ててもいいとすら思ってる)、それはそれで遺された人たちが遺骨(遺灰)の処分に困るようなので、〈合祀タイプの樹木葬〉を目論んでいます。だって、死んだら終わりだと思ってるし、残された人たちに墓の管理とかめんどくさいことを依頼するのも、嫌なんですよねぇ。なので、「墓じまいすりゃいいじゃん」って思っちゃう(笑)。 松尾家にしろ、中林家にしろ、自分が住んでいない地域での墓の管理なんて、大変すぎる。特に中林家なんて、墓の生花を絶やすと地域の人に後ろ指さされるとか、やってらんないわぁ。それを任される分家の嫁(60代)のイライラっぷり、すごい共感しました。自分たちが入れもしない墓や引き継げもしない古い家屋の管理を、「やって当たり前、ちょっ…

続きを読む

『バイオスフィア不動産』/周藤蓮 ◎

バイオスフィア不動産 (ハヤカワ文庫JA) [ 周藤 蓮 ] - 楽天ブックス 白い立方体が重なり、砂ぼこりが舞っている風景をバックに、黒いセーラー服姿のロボット?がポーズをとる表紙。『バイオスフィア不動産』というタイトルだけでは、中身の想像がつきません。周藤蓮さんは、今まで読んだことはない作家さんですが、軽く楽しく読めました!ほぼすべての人類が、〈バイオスフィア建築〉に引きこもるこの世界は、ユートピアなのかディストピアなのか?  内部で資源的・エネルギー的に完結しているという、バイオスフィアⅢ(基本的には白い立方体)。中に入った人は、望む限りほぼ永久にその中で生活してゆけるという。ほぼすべての人類が、そのバイオスフィア建築に住み、ごく少数の〈外界主義者〉がコロニーを成して暮らしている。バイオスフィアを作り出し、供給管理しているのが、後香不動産。後香不動産のサービスコーディネーターのアレイ(閉所恐怖症のため、バイオスフィアⅢに入ることが出来ない)とそのデバイス役のサイボーグ・ユキオは、後香に入る様々なクレームに対処していく。 最初は、「全人類引きこもりとか、ディストピア小説なのかな~?」と思ってたのですが、どうも違う感じがします。仕組みはよくわからないけど、住人の希望は何でも叶う(ただし代替であることも)バイオスフィアの中に閉じこもり、人類が衰退していく・・・という流れではなさそう。とはいえ、直接的な交流がなければ、世代が続くことも難しいような気もするし・・・。 あと、アレイに対して「バイ…

続きを読む