「悪」に魅入られた女を中心に‘鬼坊主‘を首魁とした盗人集団が生まれる。
『鬼あざみ』諸田玲子は江戸を駆け抜けた、盗人集団の中心的存在だった「おもん」の物語である。
第1章でおもんが「悪」の世界へ入り込む過程を、第2章でおもんの情夫で盗人集団の首魁である‘鬼坊主‘の頭角から最後までを語る。
「江戸時代の人々は、お上にたてつく勇気のある悪人に熱狂する」という、庶民の「ケレン味好き」「鬱憤を晴らす対象をいつも求めている」といった志向が物語を盛り上げていたと思う。特に、最後の‘鬼坊主一味‘のあでやかな死刑前の引き回しときの言動は、江戸時代に関わらず、人気を博するものだろうと思う。それが、江戸の町の人々へのアピールだけではなく、‘鬼坊主一味‘の中心だった「おもん」へのアピールだったというのが、とても気に入った。
(2007.1.23 読了)
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