ダークファンタジーの女王、タニス・リーを久しぶりに読んだ。学生時代『パラディスの秘録』シリーズや『銀色の恋人』などを読んで、耽美な幻想世界に浸ったものである。今回の『ウルフ・タワーの掟』は耽美 な幻想世界というよりは明るいファンタジー的である。
<ハウス&ガーデン>で奴隷として育った主人公クライディが実は<シティ>のプリンセス(貴族)の娘であることを告げられ、外界から来た青年ネミアンと<ハウス&ガーデン>を脱出して、野蛮で危険極まりないといわれている<荒地>を旅する。しかし、<荒地>は<ハウス&ガーデン>で言われているほど、魑魅魍魎の跋扈する世界ではなかった。クライディたちは<荒地>で放浪の民と出会い共に旅をし、別れ、<シティ>に辿り着く。クライディは<シティ>を支配する<掟>を司る者の継承者として連れて来られたことが判明する。が、その<掟>とはでっち上げで、悪意のあるものだった。クライディスはその<掟>を破壊し、愛情を抱いていたと気付いた放浪の民のリーダーと<シティ>を脱出する。
タニス・リーの幻想的な世界が好きだった。残念ながら、この作品には、あまり幻想色を感じられない。代わりに、主人公クライディの成長振りが爽やかさを感じさせる。幻想世界への期待は破られたが、コレはコレで、悪くない。「ウルフ・タワー」シリーズはあと3冊ある。クライディスの成長・熟成ぶりを楽しみにしたい。
(2007.2.24 読了)
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