『黄金旅風』/飯嶋和一 ○

あ~。非常にてこずりました。飯嶋和一『黄金旅風』。非常にカッチリとした歴史小説です。いえ、おカタイ小説という訳ではなく、中身がぎっしり、って感じで、非常に読みこなすのに苦労しました。

将軍家光時代の長崎、それはキリシタン弾圧と貿易の利権のやり取りの渦巻く、複雑な事情の絡み合う土地であった。将軍領地長崎の代官、末次家は長崎きっての貿易商でもある。その末次家の当主が死亡、裏には新長崎奉行の陰謀があった。末次家の後継者・平左衛門は幼少より蛮行多く、うつけと呼ばれていたが、長崎の民を思う新進的な精神を持つ者であった。

長崎奉行・竹中のルソン(マニラ)侵攻計略、オランダやポルトガルやイスパニアとの貿易交渉、また長崎でのキリシタン弾圧、火消組の頭・平尾と平左衛門の友情、とにかくイロイロなことが絡み合っていて、水無月・Rの単純な頭では、なかなか付いていけず、500ページ弱の大作、ということもあり、読了まで、ホントに四苦八苦しました。

朱印船海外貿易時代から貿易制限を経て鎖国までを、長崎の代官・平左衛門の視点を中心に、幕府の海外貿易に対する姿勢の変化や将軍権威の維持のための幕閣の動きなどもとりいれて、つぶさに描かれていて、鎖国ってこういうことがあって、こういう事情があったからなんだ~!と大変感心した次第です。高校の歴史の教科書(水無月・Rは日本史選択でした)だけじゃ「鎖国が行われた」、って事実しか学ばないですもんね。

多分、歴史小説が好きな方には、かなり読み応えのある作品だと思われます。

水無月・R、得意分野はファンタジーです。歴史小説が、これほど難しいとは思いませんでした・・・。でも、じっくり読めて良かったかな~。たまにはこういう思いっきり頭を使う本を読まないと、脳みそのシワがなくなってしまう・・・(^_^;)。

(2007.3.7 読了)
黄金旅風
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著者:飯嶋和一出版社:小学館サイズ:単行本ページ数:485p発行年月:2004年04月この著者の新着


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この記事へのコメント

  • 雪芽

    水無月・Rさん、こんばんは!
    時代情勢、市井の暮らし、朱印船貿易、どれをとっても丹念で緻密に描いていて、きっちりした背景があるからこそ、人物たちが魅力的に動き回るのだろうと、思いながら読みました。
    それにしても長かった。漢字も多かった^^;
    ファンタジーもいいですね。最近あまり読んでませんが。守り人シリーズとか読みたいです。
    2009年01月26日 20:48
  • 水無月・R

    雪芽さん、ありがとうございます(^^)。
    そうなんですよね、ホントに内容が濃くて、活字を読むだけでは頭に入らず、色々考えながらだったため、非常に時間がかかりました。
    でも、得るものはたくさんありましたね♪
    2009年01月26日 23:08
  • すずな

    こんにちは。お伺いするのが遅くなっちゃいました;;;
    ホント、長かったですねぇ^^;まさに”中身がぎっしり”という感じで、読み応えはありましたが、読み終わるのにとっても時間がかかりました。
    2009年02月08日 07:43
  • 水無月・R

    すずなさん、ありがとうございます(^^)。
    長い長い、物語でしたね・・・。
    それぞれの登場人物が、きちんと書き込まれ、物語がとても緻密で・・・。
    大変だったけど、最後までぐいぐいと惹き込まれました。
    2009年02月08日 22:07
  • 香桑

    こんばんは。分厚さにおののいて後回しにしていた本でした。
    読みだすと引き込まれるのですが、世界地理と人物関係に、ちょっと混乱(^^;;
    この本に盛り込んだネタで何冊にもわけて小説を書く人もいるだろうに、贅沢です。
    最後のすっきり感がよかったです。
    2010年07月21日 21:42
  • 水無月・R

    香桑さん、ありがとうございます(^^)。
    いやぁ・・・3年以上前ですが、かなり読むのに苦労した事を、未だに覚えております(笑)。
    確かにそうですよね、この1冊にぎっしり詰まった内容をいくつにも分けて書けそうですもんね。贅沢ですよねぇ~。
    じっくり読みました♪ただ・・・重厚でしたねえ(笑)。
    2010年07月21日 22:40

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