魔女になるためのトレーニングとは、精神力を鍛えるもの。早寝早起き、シッカリご飯を食べること。運動をし、規則正しい生活をすること。
小学生長男の代わりに『怪談レストラン』シリーズを探すため、図書館の児童書コーナーへ行きましたところ、『西の魔女が死んだ』を見つけ ました。
梨木香歩は、ブログを始めてから、お気に入りの作家さんです。文章が美しくて、雰囲気がいい。今回の『西の魔女が死んだ』も、児童書ながら、大人の鑑賞にも堪えうる、よい物語でした。(ちなみに、どれぐらいの年齢までを児童書と言うのでしょうか?ふりがな、ほとんどなかったですけど・・・?)
登校拒否のまいが、イギリス人である祖母の家で生活をはじめる。おばあちゃんは「魔女」の家系だと言う。「魔女」とは、遺伝する特殊能力。その魔女になるためのトレーニングをしながら、まいは心と体の健全さを取り戻していく。スローライフなおばあちゃんとの生活は、心温まるものがありましたね。
「おばあちゃん、大好き」と言えば、「アイ・ノウ」と応えてくれる、温かいおばあちゃん。
おばあちゃんは言う。
~~悪魔を防ぐためにも、魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です。~~ (本文より引用)
自然を愛し、自然から恵みを受け、自然と共に生活する。梨木さん特有の優しさのにじみ出る文体で、まいとお祖母ちゃんの生活が、美しく描かれていました。それと「死んだら終わり」ではなく「魂は身体を離れて長い旅をする」という、「生死観」。
~~魂は身体を持つことによってしか物事を体験できないし、体験によってしか、魂は成長できないんですよ。~~ (本文より引用)
そういわれて、成長なんてと反発しつつも、先に希望が持てるような明るい気持ちになる、まい。
おばあちゃんとの生活は、ある日終わりを告げます。ゲンジさんへのまいの拘りから、おばあちゃんと言い争いをしてしまい、軽くは仲直りできたけれど、父の単身赴任先へ一家で住むという事になり、そのまま、おばあちゃんの家を離れてしまう。今度会ったときに謝ろうと思いつつ、結局は間に合わなかった。
後悔したまいの目に入ったのは、「西の魔女」から「東の魔女」への伝言。そして「おばあちゃんの「アイ・ノウ」」の声が聞こえてきたこと。
ちょっと残念だったのが、ゲンジさんの存在が、中学生のまいに影を落す、その設定です。何だか無理矢理に「嫌い、嫌われるような方向」へ持っていかれてしまった感があって。なのに、最後にするっとまいに受け入れられてしまう、その辺にもちょっと違和感を感じます。あ、でもコレはお祖母ちゃんの「魔力」なのかな?
え~とですね、すっごく勝手な思い込みなんですが。もしかして、予知能力や透視に優れていたおばあちゃんの祖母って、『村田エフェンディ滞土録』に出てきた、霊媒の力を持った女性では?時代は合うような気がするんですが、あの女性は土耳古人でしたっけ?だったら違うかな・・・。梨木さんのお話は、お互いに少しずつリンクするようなところがあるので、ちょっと期待してしまったりして(笑)。
成長して、「魔女」になったまいのお話が、またどこかで描かれることを期待しています。っていうか、もしかして、もうあるのかしらん。どなたかご存知でしたら、教えてください。ちなみに水無月・Rが読んだのは、1996年に小学館から発行された単行本版です。
(2007.07.10 読了)
この記事へのコメント
香桑
既にご存知かもしれませんが、文庫版にはその後のまいが主人公の短編が併録されています。
水無月・R
文庫版ですか~。M市図書館は単行本持ってるから、文庫本は買ってくれないだろうな~。
梨木さんの作品って、文庫化する時、追加の短編(後日譚?)を入れること多いみたいですね。図書館派にはつらいです・・・(T_T)。
ERI
そうなんですよ。私、その追加の短編のために、文庫本を買いました。しかも、先日、買ったのを忘れていて、もう一度買ってしまったという(笑)本文にも出てくるしょうこちゃんとの後日談ですよ。どこかで読んでみてくださいね!!
水無月・R
実はまだ未読なんですよね…。機会に恵まれずで。是非探してみなくては♪