自らを「兵法者」と称し、剣の道を極めんとする磯山香織。日本舞踊から転向し、「お気楽不動心」のままに自身の向上を志す西荻(甲本)早苗。この2人の剣道青春物語ですね。なんだか、こそばゆいです。私は武道の心得もなければ、何かを極めることもありませんでしたが、あのころを思い出すと・・・。自分のことで精一杯で、頑なで、一本気で。今思えば、初々しかったのだな・・・。いろんな意味で。
しかし、私がこの年代だったのが約20年前と気付き、愕然としました・・・(笑)。なんてこったい。
3歳から剣道を始め、とにかく斬るか斬られるかの攻めの剣道する香織と、中学から剣道を始めて日舞の足さばきと平常心で長く構えるを信条とする早苗。同じ剣道なのに両極端な2人が、一緒の部でともに成長していく、とても素敵な青春物語です。なんだかワクワクするんですよ、年甲斐もなく。剣道のことは、全然知らないけど、2人が対戦するところのお互いの気持ちの流れが、とてもよく分かる。非常に「女のコ」なのですよ、2人とも。剣道という武道の世界であっても、シックスティーンはやっぱり女のコ。可愛いなぁ~(しみじみ)。
誉田哲也さんは、「ほんだ」と読むんですねぇ。「ほまれだ」だと思ってました。奥付け見るまで。もちろん、初読み。この作品以前は「人が死ぬ」系の小説を書いてた方らしいです。新しい警察小説の担い手・・・。そんな人が描く剣道青春物語。しかも女の子の。いやぁ~、このノリで警察小説書いたらアレですよ、コメディ方向ですね。きっとそちらのジャンルでこの手法では書かないのでしょうね(^_^;)。
青春小説の王道ですね~。両極端な2人が出合い、反発しながらお互い影響しあって、一度は真剣に立ち会うけれど、そこから友情が生まれ、お互いを補う関係になるという、王道。なのに、読んでてワクワクする。男の子じゃなくて、女のコだからかな。すごく、爽やかで、しかもそれがわざとらしくクサイところが一切なく、サッパリと鮮やかに描かれてる。武道系スポーツは、いいなぁ。
細かく香織と早苗の視点が入れ替わって、物語が進んでいくのも面白い。最初はちょっと戸惑ったけど。正反対の二人だから、1人称で物語を展開すると、一つの出来事が違って見えてくる。上手い構成だな~。
香織の口調がいいですね。「空者(うつけもの)」とか「兵法者」とか、やたら時代がかってんの。頑張ってるな~って感じがひしひしと伝わってきて、微笑ましい。自分を「凛とした剣士たれ」と鼓舞してるんだろうな。逆にそこが可愛いのだ。新免武蔵(宮本武蔵)フリークで愛読書は『五輪書』。そんなガチガチな思いの兵法や武蔵を卒業して、「武士道」へ移行。
~~小さい魂しかないやつの剣道は、小さいし、デカい魂を持つやつの剣道は、やっぱデカいよ。~~ (本文より引用)
なんて言いながら。柔軟だな~。
因みに。香織の中学時代の剣道仲間、糞握りの清水君、結構私好きです。あの飄々とトボケてるところが、ガチガチの武者・香織を上手くフォローしてる感じで。「アネさん」とか呼んじゃって、いい感じなのかしらん、どこかでてて来てくれないかな~と思ってたのですが、中学卒業まででしたね。ああ残念。
あと、早苗のお姉さん・緑子もいい味出してますね。美人で頭が良くて、クールで気位の高い、雑誌モデル。モデル業界でも「日舞の素養があるからピタッとポーズが決まる」というのは、売りポイントになるんだ~。きつめの毒舌キャラが魅力的(^^)v。
もちろん、早苗もいいですよ~。ほわ~ん、としたところがあり、香織の対極。父の事業の失敗から、父プチ家出のプチ離婚(By緑子)。その影響で、勝ち負けにこだわることが、嫌だと思う。そんな早苗も団体戦メンバーに入るに至り、勝ち負けについて考え、成長する。
好きだから、極めたい。思春期だから、いろんな葛藤がある。そんなこそばゆさが、なんだか嬉しい『武士道シックスティーン』。楽しかったです。
あ、そうそう単行本の栞の紐(確かちゃんとした名称があったと思うけど忘れてしまった)が、紅白2本なのは、試合の時に紅白のたすきをかけるからかな。結構凝ってますね。章の変わり目の剣道の道具などの解説イラストも参考になりましたし。
あと、表紙の装丁もいい感じです。真っ赤な地にひょろっとした黒活字でタイトル。香織と早苗のもっとも「らしい」剣道スタイルである静と動の剣道少女2人、のイラスト。
なんか、香織の口調は、乱暴だけど、いい感じ。ちょっと真似してみたくなる。竹を割ったような性格というか、さっぱりと生真面目なところがよく表れてる。割と好きだな、こういうイメージの子。あっさりときっぱりと、覚悟がある感じがして。
(2008.02.22 読了)
この記事へのコメント
藍色
対照的な二人がそれぞれの考え方で、剣道に真摯に取り組む姿勢に好感が持てましたね。
香織の真っ直ぐさ…あぁ、青春っていいなぁの一冊でした。
水無月・R
その「青春」具合がさわやかでしたよね。
女の子も武道(スポーツじゃなくて)で青春出来る!って、素敵だなぁ。
あの頃の、一途さと葛藤が、こそばゆくて、可愛らしいな~と思いました。
エビノート
一途に何かに打ち込む姿が爽やかでしたね♪
『阪急電車』のTBでは、お手数をおかけしてしまったようですみません。
水無月・R
武道は、かっこいいですよねぇ。学生時代の体育で「弓道」を少しやりましたが、なんだか背筋が伸びる感じがして、良かったですよ。週1回の講義がとても楽しみでした。
TBの件、こちらこそご迷惑を・・・。
すみませんでした(^_^;)。
麻巳美(まみみ)
これおもしろいですよね~マンガにしてもいいような作品だなあと思います。マンガも読んでみたい!
妹が剣道をやっていたこともあり、かなりリアルに想像できたのもより楽しめたポイントかもしれません。わたしもやっておけばよかったかなぁ……
水無月・R
少女マンガ、いいかも知れません!
気合いの入った乙女たちの戦い!うわぁ、カッコイイかも~。
すずな
正反対の二人が少しずつ相手を理解して近づいていく様子が「あぁ、これぞ青春!」という感じで良かったです。
続編も早く読まなくちゃ!と意気込んでおります(笑)
水無月・R
王道はいいわ~(*^_^*)。
最近、色んなイミで「ベタがなんぞね!」という勢いで王道を愛している水無月・Rであります(笑)。
爽やかで、楽しくて、微笑ましくて・・・。もう一度青春してみたくなりました!(←さすがにソレは無理)
香桑
青春でしたねー。いいですね。これぞ青春ですね。青春を名乗っていいのは、やっぱり10代です。
王道はいいです。素直に楽しめる小説が大好きです。
水無月・R
青春は・・・いいですよねぇ~。
自分のことだけで精一杯で、一生懸命で。
もう、かな~~り、遠いですけど(笑)。
ベタな王道だけれどそれでも、爽やかさがホントに楽しい物語でした。
ERI
面白かったですねえ~!!時間も忘れて一気読みしました。武道って、いいですよね。憧れて、剣道ではなかったけど、息子達にも武道をさせました。あんまりモノにならなかったのが残念です・・。磯川が最高でした。彼女には、どこまでも突き進んで頂きたいですね!!
水無月・R
香織と早苗がお互いから、吸収しあい、成長しあうところが、とても良かったですよね。
2人ともどんどん武士道を極めてほしいものです。続巻「セブンティーン」がありますが、是非「エイティーン」も書いて頂きたいですね(^^)。
雪芽
やっとブログ復帰致しました。またどうぞよろしく!遅くなりましたがTBさせて頂きました。
中心にあるのは剣道で、青春スポーツものとしての楽しさを味わいつつ、十代の女の子らしい心の揺れや悩みもあり、甘酸っぱくも爽やかな読み心地がよかったです。
いまは続きが読める日を、首を長~くして待ってます。
水無月・R
武道少女、いいですよねぇ・・・。キリッとしてて。
ご近所の小1のお嬢さんが、剣道の模範演技を見て「やりたい~!」と言ったという話を聞いて、ついつい彼女のお母様に「武道少女はいいよ!」と力説してしまいました(笑)。
香織や早苗の、清々しい成長ぶりが、とっても気持ちよく読めましたよネ!
是非是非、『武士道セブンティーン』お読みくださいん!
june
武道少女いいですよね。私も体育会の女でしたが、武道というと一本通った筋があって、スポーツとはまた違う厳しさがあるような気がします。「武士道セブンティーン」早く手に入れます!
水無月・R
読んでてスカッとする、気持ちよさは、とっても楽しめましたね!
ちょっとこそばゆいんだけど、それもまた嬉し楽し、という感じでした♪