『スカイ・クロラ』/森博嗣 ◎

~~僕はまだ子供で、
   ときどき、
   右手が人を殺す。
   その代わり、
   誰かの右手が、
   僕を殺してくれるだろう。~~   (本文より引用)
この夏、押井守監督で映画化(アニメ)されるそうですね。見てみたいなぁ。押井さんなら期待以上の作品に作ってくれそうな気がする。

遺伝子制御剤の作成過程で生まれた、〈キルドレ〉。体の成長がある時点で止まり、死なない。〈キルドレ〉たちは、戦争請負会社か宗教法人にしか就業できないらしい。キルドレである僕・カンナミ・ユーヒチは、戦闘機乗りとしてのキャリアを5年過ごし、とある基地に配属された。そこで出会った、上司で元戦闘機乗りの草薙水素。彼女もキルドレであり、しかも子供を産んだことがある。僕は彼女の望みを受け入れ、彼女を銃殺した。

森博嗣さんです。先日『すべてがFになる』を読んで、「う~ん、イマイチだな~」と思ってたのですが、私的には森さんはミステリーじゃなくてファンタジー系統の方が好きになりそうです。以前『女王の百年密室』を読んだ時、緻密で難しいけど、いいなぁ~と思ったのですよ。その感触があります、『スカイ・クロラ』には。

シリーズ5冊出てるんですよね、確か。映画観る前に全部読んでおきたいな~、とか言いつつ映画館で見る予定はなかったりして(笑)。レンタルDVD(しかも新作じゃなくなる)まで待ってみようと思っております(^_^;)。

まだ第1作目という事だからか、状況説明などがほとんどありません。現代日本のパラレル設定?なのかも知れません。何故、戦争は請負会社を作ってまで維持せねばならないのか。何故、〈キルドレ〉を作った会社が戦争をしているのか。キルドレ達の記憶が曖昧なのは何故か。本当にキルドレは死ぬことはなく、再生されるのか。だとしたらそれは何故?キルドレ達の感情は、普通の人々とどう違うのか。誰も読み切れない、大きすぎる戦局を操作しているものはいるのか。

キルドレである僕にも感情はある。が、フィルターがかかったようにはっきりせず、ただひたすら飛行機に乗った戦闘のときのみ意識がクリアになるカンナミ。カンナミの戦闘機乗りとしての技術および精神は、素人の私でも分かる。最高級のレベルだ。冷静に戦況を判断し、的確な行動をとり、そして生還する。
カンナミの同僚で、意外に感情豊かそうに見え、普通の人間ぽい土岐野。飛行機の駆動部の改造に熱を入れるメカニックの笹倉。他チームのエースで草薙と感情的対立のある三ツ矢。その他基地の人間や娼婦など、色々な人物が出てくるのだが、誰もがリアリティに欠けている。まるで、夢の中のようだ。読めば読むほど、理解できない。

けれど、その理解できなさが、理不尽とは思えない。続巻を読むことで、状況や設定に補完がきくという保証もないのに、続巻に期待している自分がいます。もしかしたら、分からないままでもよいと思ってるのかも。珍しいなぁ。私はどちらかというと白黒はっきりせいや~!というタイプの読者のはずなんですが。

なんだか全然「読書記録」になってないよ、今回も(笑)。
ただね、キルドレであるカンナミたちの浮遊感というのかな、自分自身への確実感の欠如、なんだか分かるような気がします。自分は、自分なんだろうか。どこからが本当の自分の記憶で、どこまでが植えつけられたものなのか。その不安定さが、物語の揺らぎを生んでる気がする。このシリーズを全部読んで、その揺らぎが解消されるのか、余計自分に跳ね返ってくるのかは、不明。ただ言えるのは、その揺らぎを感じてみたいと私が切望していること。シリーズ全部読み終わったとき、読んだことを嬉しく思うか、後悔するか。あるいは、普通に読み終わるのか。分らないけど、なんだか期待しています。

(2008.02.12 読了)

・・・おまけ。
「スカイ・クロラ」映画化の公式ページのインタビューで、まだ声優さんのキャストは決まってないとありました。ぜひ!杉山紀彰さんにキルドレの誰かの役を!プライド高ッ!な声で、でもコミカルなイメージも出せて、演技力がとてもある素敵な声をお持ちの方です~♪(←水無月・R、大ファンなのです)


水無月・R 「スカイ・クロラ」シリーズ記事


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著者:森博嗣出版社:中央公論新社サイズ:単行本ページ数:304p発行年月:2001年06月この著者の


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