冴えない大学3回生の私。1回生の春、サークル活動のビラを手に時計台の前で、薔薇色の学生生活を夢見ていたのが分岐点。繰り返すパラレルワールド。しかし、どのルートを通っても結果は薔薇色とは縁遠く・・・。
相変わらず森見登美彦さんの描く「腐れ大学生」は、トホホで愛があふれているなぁ。(恋愛じゃなくて、阿呆で愛おしい方の愛ね(笑))もちろん、笑いどころもたっぷりでございますよ。
出てくる登場人物たちが、ことごとくキャラ立ちまくり。そして自由奔放に、物語をひっかきまわす。
他人の不幸で三杯のご飯が食べられる悪魔のような男・小津は親友である。
「下鴨幽水荘」の2階に住むとらえどころのない男・樋口。
孤高の黒髪乙女・明石さん。
酔っぱらうと男の顔を舐めたがる歯科衛生士・羽貫さん。
映画サークル「みそぎ」の前実力者・城ケ崎と現リーダー・相島。
この連中が「私」の周りを激しく飛び回るのである。そんな状態で平穏な生活を送れるはずがありません(笑)。
『四畳半神話大系』、はパラレルワールドの物語であるが、パラレルなんていう横文字を使うと小洒落た感があるな。これが全くもって小洒落れてなくて、とんでもなく男汁にまみれた、まったりとトホホな並行世界。
思わず「お~~い~~・・・もうちょっとしっかりしろよ~」と語りかけたくなるくらいの腐れ大学生っぷり。
「四畳半恋ノ邪魔者」では映画サークル「みそぎ」から逃亡して隠遁生活を送る私。
「四畳半自虐的代理戦争」では樋口さんに師事し、VS城ケ崎氏の悪戯合戦に明け暮れる毎日。
「四畳半の甘い生活」ではソフトボールサークル「ほんわか」が宗教団体だと気づき、遁走した末に、3人の女性(?)の間で立ち往生。
3つの「もし」の世界。しかしながら、主人公は「幻の至宝、薔薇色のキャンパスライフ」を手に入れることは出来ず、小津と出会ったことが人生の汚点だったと四畳半にぐずぐずとわだかまってるだけ。各章終わりに明石さんとの相思相愛が示唆されるが、その恋愛生活自体は語られない。
今まで半分引きこもりとは言え外界との接触が大いにあったのだが、「八十日間四畳半一周」では自室の四畳半だけが延々と続き、ただ一人で80日間も彷徨うという、あまりにもトホホな世界が広がっていたのである。
自室の四畳半を巡る旅・・・歩けど歩けど、目の前にあるのは小狭くも小汚い己の住処。食すのはカステラと魚肉ハンバーグだけ。しかも、すべての四畳半は自分のそうであったかもしれない並行世界。
・・・すっごく後ろ向きになりそうなシチュエーションだな(笑)。
そこからやっと脱出した私は、賀茂大橋で小津や明石さんと巡り合い、蛾の大群に襲われ、物語は大団円を迎える。
この章では京都大学にうごめく秘密組織「福猫飯店」の姿が少し見えてきます。他のモリミーワールドにも出てくる〈図書館警察〉〈にこやか自転車整理軍〉〈印刷所〉〈閨房調査団青年部〉〈詭弁論部〉などを下部組織とした、目的があるようなないような・・・。モラトリアムな大学時代って、何でもありですなぁ。
今回も!楽しく読ませていただきましたよ!

願わくば、私と明石さんのその後を読んでみたいなぁ。「成就した恋ほど語るに値しないものはない」と言ってますが、二人の甘ったるくも辛口で一風変わった恋愛なら、読む価値はあるでしょう~!
書きたいことはいっぱいあるんですが、先ほど我が駄文を読み返してみて長文すぎることに気が付きました(←書いてるうちに気付け。)。
なので、やっぱりこの混沌世界な四畳半はぜひ読んで体験してください(笑)、と言い逃れすることにします。
あ、それから。
もちぐま・・・欲しいな~。もちもち、むにむにと愛でたいです。きっと精神が安定るするに違いない。
(2008.06.16 読了)
※とうとう、ウェブリブログもトラックバック機能が無くなってしまいました(T_T)。
ブロガーさんにご許可頂いたレビューをご紹介します♪
☆おすすめです!☆
この記事へのコメント
やぎっちょ
やぎっちょなんかダメなんですよねー。この本。どんなにつまらなくても、大抵最後まで読むんですが、もりみーの本にして途中で挫折してしまいまして。。。
あと蛾とか出てきてほしくないですねーー(渋)
TB送りましたので、再トライしてもらってもよろしいですか?
香桑
もちぐまは、「One's」というお店で友人が手に入れてくれたのですが、現在は取り扱っていないそうです……。
読み返す気にはなかなかならないのですが、この本はお気に入りです。でも、好き嫌いが別れるだろうとも思います。
すずな
まさに「まったりとトホホな並行世界」でしたねぇ。笑わせてもらいました。・・・あぁ、魚肉ハンバーグが食べたくなってきました(笑)
実は私も香桑さんと同じ友人からもちぐまを贈呈いただきましてPC前に鎮座されております。時々むにむにして和んでおります(^^)
麻巳美(まみみ)
これ読んだの3年も前でほぼ内容忘れてたんですが、水無月・Rさんの記事でうっすら思い出せたような…?また文庫を読みなおしてみます。
そしてもちぐま!!手に入れてる方がここに2人も!むむぅ。以前対談で、森見さんが本上まなみさんにあげたりもしてました…手に入らないと思うと余計に欲しい一品です。
エビノート
4パターンの学生生活、同じようでいて微妙に違うところが面白かったですね。そして、森見さんの他の作品に出てきたいろんなものが登場するのに、ニヤリとしてしまいました♪
水無月・R
同じ要素で繰り返される話が、確かにじれったいですもんね。
あと「蛾」とか「黒いアイツ(しかもキューブ状)」とかちょっと…な部分も(泣)。
TB再チャレンジしました。OKみたいでしたね。
>香桑さん。
いいな~、もちぐま。
しかも、もう入手不可能とは・・・ますます「もちぐま愛でたい願望」がッ!
繰り返す並行世界には、賛否両論ありますが、私はあのエピソードはこれにすり替わってるのか!的な発見が面白かったのでOKです。
再TBうまくいったようです~。
>すずなさん。
いいな~いいな~。むにむにしたいな~。
心安らかに、癒されたい・・・。
いや「腐れ大学生」の阿呆っぷりにも癒されるんですがね(笑)。
水無月・R
ね~、欲しくなっちゃいますよね、もちぐま。
あれかしらん、ジャージ生地にビーズクッション状に作ってあるのかな・・・?と勝手に妄想してみました。
うわ~益々むにむにしたくなってきた・・・(^_^;)。
>エビノートさん。
モリミー作品を縦横無尽に歩き回る登場人物たち。チェックしております(ただしアナは沢山ありそう(笑))。
この作品の後、樋口さんは世界旅行に行く代わりに天狗になっちゃったんでしょうか(^^)。
june
たしかにパラレルワールドよりもトホホな並行世界の方が似合いますね。
私もこの微妙な重なり方好きです。次はどんなエピソードになってるんだろうというのが、楽しみでした。
ラストの微妙なさわやかさも好きです。
それにしてももちぐまって入手可能なものだったのですね・・。私も欲しいです。
水無月・R
そうなんですよ、どのルートをたどったって、結局私は薔薇色の学生生活にはたどり着けない「腐れ大学生」。でも、それでもいいじゃんと思うのですよ。
明石さんとも、嬉し楽しい展開があるわけですし、ね。
ますますモリミーワールドに入り込みたくなってきました。
雪芽
初期の頃の男汁たっぷりのトホホな感のある話も楽しいですよね。怪しげな人物、怪しげな組織に食べ物、モリミーワールド炸裂でした。
もちぐま~、知らなかった~、欲しかった~
水無月・R
モリミーワールド、楽しいですよね~。
男汁たっぷりトホホな腐れ大学生、黒髪乙女、天狗と毛玉と人間と妖物が入り乱れる大混戦な世界!
怪しげな組織が幅を利かせ、「猫」の名の付く危険な香り漂う美味。
迷い込んで、一緒にぎゃ~ぎゃ~騒いでみたくなりますね!(でも桃色ブリーフは勘弁してほしいかな(笑))
たかこ
もちぐま、気になりますね。(単行本の表紙の方が好きです。)
偽電気ブランもそうだけど、猫ラーメンも食してみたいです。
水無月・R
モリミー、いいですよね(笑)。
愛と笑いとツッコミ処満載、そして腐れ大学生はトホホでいつまでたっても成長しないという(^_^;)。
猫ラーメン・・・食べてみたいけど怖い♪
そしてもちろん、モリミー的腐れ大学生限定秘密組織(笑)の数々も、すんばらしかった!
合言葉は・・・腐っても愛!トホホでも愛!でございますよ(^_^;)。
苗坊
きっかけがないと過去の作品はなかなか読めなくて^^;
今回いいきっかけになりました。
大学の2年間を棒に振って違う道を選んでいれば…と嘆いていましたけど、結局同じだよとツッコミを入れられるのが面白いです^m^
でもそれと同じようにどの道を選んでも明石さんとは良い感じになるんだからちょっとうらやましいです←
モリミーさんらしい不可思議で面白い世界観を堪能しました^^
水無月・R
どんなに分岐しても、トホホな経過をたどった末に、黒髪乙女との恋愛だけはちゃんと成就する。・・・それならオールオッケーかな?
終わり良ければ総て良し、・・・なのかなぁ(笑)。
モリミーの腐れ大学生(京大生)と四畳半は切っても切れない、複雑怪奇な縁が絡まってるのがよくわかる作品でしたね!!(笑)