お・・・おどろおどろしいぃ~。
戦後間もなくの混乱期、とある山の奥にある、神々櫛村に続く殺人事件。同じ姿をした、村の守り神「カカシ様」と忌むべき存在「厭魅(まじもの)」。代々、美しい女性双生児の続く、憑きもの落としの巫女家系。
民俗学とホラーが融合した、異様な世界。・・・こういう怖さは、たまらない。逃げたくても、いつの間にかぴったりと背後にいる、怖ろしい「何か」が、そこに!
三津田信三さんは、『このミステリーがすごい!』にランク入りする、今をときめくミステリー作家さんですが、今までノーチェックでした。
けどこれは・・・要チェックですよ。
薄暗闇に蹲る異形の生き物、黄昏時誰もいないはずの四辻で後を付けてくる何か、読んでいて不安になるほど昏い世界。こういうの、ゾクゾクするけど好きですねぇ!
本書『厭魅の如き憑くもの』(まじもののごときつくもの)は、まさにそういう世界でしたね。
「○○の如き○○もの」で何冊かシリーズが出てます。これは読まねば~!
因習の続く閉鎖的な村。「黒の家」と呼ばれ、憑き物の家系であり、巫女の家系でもある谺呀治家。村の最有力者であり、「白の家」と呼ばれ、神社を受け継ぐ神櫛家。2つの家系の対立、村の特殊な地形や、憑きもの落としや、妖しい通過儀礼、山神信仰、子供の神隠しなど、なんとも暗く陰惨な雰囲気が漂う、神々櫛村。
次々殺されてゆく、関係者たち。殺したのは、誰なのか。何が起こっているのか。憑座(よりまし)を務める娘、因習を否定し変えてゆこうと画策する青年、生霊にとり憑かれる娘・・・。
怪異譚の蒐集の為、神々櫛村を訪れた怪奇幻想作家・刀城言耶は、民間伝承調査と共に谺呀治家の連続殺人の解明に関わりをもつようになる。
村の因習、双子の秘密、山神と忌物の相似形、対立する家系の体面と意地、様々な謎。
次々と、解釈は繰り広げられては改訂され、二転三転する真相究明のラストシーンは非常にドキドキしました。
そしてやっと「真実のように見えるもの」が提示され、みなが納得したはずだったのに、刀城は気付いてしまうのだ。それではおかしい、ということに・・・。
なんとか合理的に付いたはずの解釈に、僅かな綻びが現れ、その破綻から引きずり込まれる「魔」の世界。ぞぞぞ~っとしますねぇ!
正視してはいけない「厭魅(まじもの)」怖かったですよ。振り返ってはいけない、直視したら「人としての理性を失ってしまう」そんな存在にそっくりの姿をしたカカシ様が、村のあちこちにあるなんて!怖ろしすぎる・・・!
「霊」とかそんなに信じてない方なんですが、この作品は怖かった。不可解で実現困難な殺人、被害者の口にねじ込まれた物実、村の名前や家の名前に隠された、過去の歴史。
いやもう、これは人が犯した連続殺人じゃなくて、ホントは祟りなんじゃないの?と思わずにはいられないほど、おどろおどろしかった。
いやしかし、表紙も怖いよ、この本(単行本版)。左目が猫の目のように瞳孔が縦に切れているだけで、美しいはずの巫女の顔が、一変して妖魔になってしまう。人と妖魔は一瞬にして入れ替わるのかも・・・うわゎ!怖いよ怖いよ!
(2009.04.19 読了)
水無月・Rの『◎◎の如き●●もの』シリーズ記事
『厭魅の如き憑くもの』(本稿)
この記事へのコメント
エビノート
水無月・R
ぞくぞくするこの怖さは、すごいですよね。怖いのにやめられない・・・。
怖い上に、どんどん繰り広げられる真相、だがそこにも疑いが?!というミステリーも、なかなかに。
次の作品が、楽しみですね♪
雪芽
怖いのは苦手なのにうっかり読んでしまいました。しまった^^;
ラストのどんでん返し連続技が凄かったですね。刀白言耶に遊ばれてる?(笑)
最後の気づき、怖くて後に引きます。
怖いものみたさにシリーズの続きも読みたくなりました。
水無月・R
私も同じく、怖いもの見たさ(笑)。
非常に土着系な民俗学とホラーって、こんなに怖いんですねぇ・・・。
だけど読みたい!て言うか、読まずにはいられない、惹き込む力がありますよね!
聖
民俗学が出てくる作品はけっこう好みなんですが、夜読んでしまったことを後悔しました(笑)。
怖がりなんで絶対に次は昼間読みます!
なんとなく、後を引く怖さでした~。
水無月・R
はじめまして・・・でしょうか。
ようこそ、いらっしゃいませ。
いやぁ…この本は、怖かったですね!
怖さはちょっと控えめのような気がしますが、次作も民俗学系ですよ。
昼間に読むほうがいいですね~、多分(笑)。