『裏ヴァージョン』/松浦理英子 △

松浦理英子さんは、初めてです。
『裏ヴァージョン』は、小説家になりそこなった女が、たった一人の読者の為に短編を書いてゆく。その読者は、高校時代の友達で・・・という物語です。
ああ~、ごめんなさい、なんかちょっと私的には合わなかった・・・。

淡々と、短編が描かれ、その末尾に一言だけ感想が書かれる。そして次の短編にまた感想が、と続いていく中で、作者である女と読者である女の状況が見えてくる。
2人は高校生時代の友達で、40歳になった職を失った作者の女を読者である女が同居させてやり、その家賃代わりに月1本の短編小説を渡すようにさせている。2人の高校時代の性的倒錯に対する興味と関心を掘り起こすように、同性愛を描く作者に、私は変わったのよと怒りをあらわにする読者。
感想では済まなくなり、質問・詰問・果たし状とやりとりはエスカレートしてゆく。
そして、1篇の小説を残して、作者は去ってゆき、残された読者は、太文字大フォントで~~帰って来い、アホ。~~ (本文より引用)と書くのだ。

どうもねぇ~、水無月・Rは小心者で小市民で、同性愛って苦手なんですよねぇ。
多分好きな方が読むと、作者・昌子と読者・鈴子の間に流れる、すれ違う友情と愛情となんだかモヤモヤッとしたものが、すごく素敵なんだと思います。高校生時代、同じ嗜好で盛り上がった友達、お互いに性的魅力を感じないのが残念だと秘かに思ってたり、性的嗜好が変わったという相手を裏切ったと感じたり、喧嘩することでよりお互いの良さを感じていたはずの高校生時代と変わって、今はただやたらと互いを攻撃し合っていることを、どうすることもできないでエスカレートさせてしまい、迎えてしまったラスト。
割と、叙情的なところもあるのに・・・どうも何だか読むのに疲れてしまって、大変時間がかかりました。
好きな方、本当にごめんなさい。

(2009.10.13 読了)

裏ヴァージョン
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文春文庫 著者:松浦理英子出版社:文藝春秋サイズ:文庫ページ数:247p発行年月:2007年11月こ


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この記事へのコメント

  • 佐和

    松浦さんは好き嫌いあるでしょうね。

    特に、性に関するモノはきついですねぇ。
    嫌いになる訳も分かりますよ。だって変ですし(笑)。
    松浦さんの着眼点はすごいんですけど、それに
    ついて行けないという感じです、私も。
    『奇貨』を読みましたけど、これは濃いと思いました。
    というか、ちょっと圧倒されて、あんまり感想がまとまらない。
    しかし着眼点がすごかったり、こんなに問題作(?)を
    送り出せる松浦さんですが、
    http://www.birthday-energy.co.jp
    というサイトで、詳しく解説してるのを見つけました。

    「哲学的で常識を軽く飛び越えてしまうような精神性」を
    お持ちだそうで。
    それだけでは済まないみたいで、イロイロ複雑な性格みたいです。
    そろそろ量産しつつ、新境地を開いて行ってほしいですね。
    2012年12月03日 23:27
  • 水無月・R

    佐和さん、ありがとうございます。
    読んだのがかなり昔なのでうろ覚えなのですが、二人の関係性の苦しさが、伝わってくる作品だったなとは思いました。ただ・・・その表現に絡むのが、性志向の問題というのが…ちょっと、困りました。
    2012年12月04日 15:09

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