〈ヴェヌス〉の墓掘り職人ギルドの親方・バルトロメは語り始める。
水上都市の有力貴族の100年も続く対立、自分の身に起こった不思議な因縁、めぐりめぐる、運命の糸。
タニス・リーさんの描く、『ヴェヌスの秘録』シリーズの3巻目。
埋葬場所の少ないヴェヌスでは、火葬が基本。だが一部の有力者には、〈死の島〉への埋葬が許されている。土葬は、キリスト教の「最後の審判の日」に体が復活するために、必要なこととされていた。例え、ヴェヌスには法王の特免状があったとしても・・・。つまり、土の褥に眠ることができるのは、特権階級であった。
死の島の土地を巡って争いあう、バルバロン家とスコルピア家。『土の褥に眠る者』は、両家の争いの因縁、命を持たない魂のさすらい、そしてルネッサンス期のイタリアの別世界の歴史を描く、ファンタジーである。
今回も、ちょっとダークさがなかったなぁ~、残念。前作『炎の聖少女』がヴェヌス版ジャンヌ・ダルク(ちょっと違うけど)であれば、本作はロミオとジュリエットか。
但し、冒頭は対立する両家の子供たちの恋からは始まらない。スコルピア家の令嬢・メラルダは、一族のとりしきった婚約を反故にし画工のロレンツォと逃亡を図るも、敵対するバルバロン家のアンドレアに捕らえられ、婚約者・キアラ卿のもとに送られ、手ひどい仕打ちを受け、ラグーナに身なげうつ。時は過ぎ、メラルダを陥れた侍女のユーニケとキアラ卿は陰惨な死を迎える。彼らを死に追いやった青年・シルヴィオは、バルバロン家の令嬢・ベアトリクサの周囲に出没し、自分は仇敵スコルピアの一族だと名乗る。
更に時を経て、ベアトリクサとシルヴィオは天国の周辺領域で結ばれるが、その後別離の苦渋をかみしめることになる。
そして、バルトロメは魂が呼び合うかのような女性・フラヴィアと結ばれ、フラヴィアの幻視したあるいは知っていた物語を聞くことになる。
バルトロメとフラヴィア、シルヴィオとベアトリクサ、そしてメラルダの身籠っていた命は、互いに影響しあい、運命の糸に導かれ、スコルピア家とバルバロン家の対立を収めるために、過ごしてきたということを知るのであった。
・・・って、感じだと思うんですけどね。どうも後半、集中できなくて・・・。最初のメラルダの物語と、シルヴィオとベアトリクサの幼少期の物語は、結構ダークファンタジーが入ってるかな~と思ってたんですが。
最初、何で墓掘り職人であるバルトロメが、この物語の語り手なのかという興味を持って読んでたんですが、なかなかその真相が明かされない。最後の最後に、やっとわかったんですけど・・・なんかそれがどうもうまく私の中で噛み合わない・・・。いえ、物語としての整合性はちゃんとあるんですけど。
ヴェヌスと結婚し、庇護下(支配下)においたケーザレ・ボルジャは、あのチェーザレ・ボルジアなんでしょうね、たぶん。イタリア全土を統一し把握しようという野望を持つ、超人的な頭脳と強靭にして魅力的な肉体と容貌を持ち、人を惹きつけてやまぬカリスマを備える、強烈な個性を持った、あのボルジア家の。
そのケーザレすら利用されるヴェヌスの因縁の物語。
シルヴィオがラグーナの底に埋めてきた「聖女ベアティフィカの心臓」の黄金の小箱はこの後、『水底の仮面』で再び、日の目を見た・・・のだろうか?
ううむ~。次作を読むの、どうしようかなぁ。私、ダークファンタジーが読みたいんですよねぇ。読むけど、あんまり期待してはいけないかも・・・。
(2009.12.06 読了)
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