三浦しをんさんの初期作品である。
就職活動をしてはいるけど、どうにも周り学生達のように無心に長いものに巻かれることが出来ない女子大生・可南子の奮闘物語。というとなんだかすごい「就職物語」のようだけど、家庭の複雑な事情とか、ちょっと特殊な恋愛とか、いろいろ面白いのが『格闘する者に○』である。
そう言えば、私が作家さんを〈名前呼び〉するのはしをんさんぐらいだなあ、と気付いた。あとは森見登美彦さんをモリミーというぐらいで・・・つまりはそれだけしをんさんの作品(及びエッセイなどから推測される妄想力とお人柄)が好きで親しみを持っているのだ。いっつも、「しをんさん、大好きだ~!」とか叫んでるぐらいにね(笑)
漫画が大好きで、漫画雑誌の編集者を志望している可南子だが、出版社の就職試験の予想外な展開や、無難すぎたりひっかけあったりする学生達にイライラしている。そして夏になっても、就職は全く決まらない・・・。
実は可南子は、地元では絶大な支持を得ている代々の政治家・藤崎の娘である。父は婿養子で、正当な(?)藤崎の血が流れているのは可南子だけだが、もちろん後を継ぐ気などない。後妻の義母、優秀だけどやっぱり政治家になる気のない弟・旅人と3人、広い屋敷に暮らしている。
ある日、親族と後援会が「家族会議」を開き、跡継ぎ問題に絡んで危うく父の秘書(17歳年上・妻子持ち)と結婚させられそうになったり、その秘書の独断で就職にコネをかけられそうになったり、会議の余波で弟が家出を決行したり、と身の回り慌ただしい。
結局、可南子の就職活動は未だ内定なし。家出した弟は帰ってきたものの、跡継ぎ問題はうやむやのまま保留、相思相愛の恋人(可南子の脚を愛でる70歳の書道家)は中国に旅立ってしまう、と目覚ましくイイ事はないけど。
だけど、色んな事を経験して、なるようにするしかないなぁ・・って悟った感じがして、ほほえましい。
父が寄り付かない大きな屋敷の中で頑なに生きる義母とぎくしゃくしてきた可南子だったけど、家出から帰ってきた旅人の一連の騒動を通して、なんとなく関係改善したのも良かった。
まあ、初期作品なんで、いつもの転げ回って笑ってしまう妄想炸裂感は、やや控えめですね。それでもあちこちに散りばめられる、可南子の妄想やツッコミ(脳内ツッコミ及び友達や弟へのリアル突っ込み)には、ニヤリとしました。
しをんさんは、私より少々(?)お若いので、確実に物語内の就職活動は、私の時(一応バブル崩壊してたけど)より大変そうだ・・・。リアルで、色々あったんだろうなぁ(^_^;)。
あ、それと「林業青年」が出てきましたね。まだ読んでないんですが、『神去なあなあ日常』につながるというか原型なのかしら。ますます楽しみなんですが、なかなか読みたい本リストのそこまでたどり着けない・・・。
(2010.04.21 読了)
この記事へのコメント
苗坊
だいぶ前に読んだのですが、しをんさんの今の作品を読んでいると、物足りないというか、炸裂していない気がしますよね^^;
いろんな変わった人間関係が登場したので^^;そこらへんはさすがしをんさんだなぁと思います。
そういえば、私も名前で呼ぶのはしをんさんくらいですね。
でも、今この作品の自分の記事を読み返したら、三浦さんって書いていました。
何だか違和感^^;
水無月・R
しをんさんの弾けっぷりは、親近感わきますよねぇ~。妄想大暴走なところが、すっごく好きです(笑)。
初期作品は、まだ遠慮があったのかしらん♪