三津田信三さんの『◎◎の如き●●もの』シリーズの第3作目。
・・・今まで探偵役だった主人公・刀城言耶(とうじょうげんや)は、途中でちらっと姿を見せたかと思うと、別の怪異の話を聞いた途端、それを追ってつむじ風のように去って行っちゃいました・・・。
冒頭の「編者の記」によれば、物語を書いたのは女流推理小説作家・媛之森妙元氏で、刀城言耶氏は媛之森氏の原稿を整理、再構築しただけだという。
『首無の如き祟るもの』(くびなしのごときたたるもの)は、そんないわく付きの、民俗学系土着ミステリー(←勝手に水無月・Rがそう分類してるだけ)である。
しっかしこのシリーズ、ホントに最後の最後まで目を離しちゃいけません。
今回も、とんでもない、思いもよらないどんでん返しが、待ちうけてましたよ~。・・・あ、でも、私が分からなかっただけなのかしらん・・・。
怪異と思われていた事件は、複雑な事情や呪詛のためのトリックだったり、何だったりと・・・。
あらすじ書こうとすると、わけがわからなくなってしまう。
だって、登場人物達は真実を語っているのに、ある一つの真実を抜いているだけで、全然真相に近づけないんだから。最後まで読んで「ええぇぇ~?!」って思いました、ホント。
村の最高実力者一族が3つに分家して、勢力をせめぎ合っている中、一族の長の家の男子に祟る怪異の存在。その祟りを除けるために、呪術に長けた乳母を雇ったり、双子の男女にあまりにも大きな差を付けて育てたり。
秘守家の子供の、3歳から10年毎に行われる秘儀の一つ「十三夜参り」で、首切り殺人だったのではないか・・と噂される死亡事故が起こる。目撃していたはずの6歳の少年・斧高は、「首無が出た」というのだが・・・。四重の密室状態だったの現場で秘守家の双子の妹を殺したのは・・・?というのが、第一の(首無?)殺人。
そして、その十年後、跡取りである長寿郎の二十三夜参りはつつがなく行われたが、更にその3日後に行われた「婚舎の集い」(長寿郎の嫁を決める見合いの儀)で2つ、翌日にまたもう1つ、首無の死体が出る。
この首無殺人の謎について、当時の村の駐在所の巡査の妻だった高屋敷妙子こと、推理小説家・媛之森妙元が雑誌連載をしながら、整理していったのが本作。
連載が終わった時、一つの真相らしきものは提示されるが、それを証明することは出来ない。あちこちで入れ替わりがあり、事実は曖昧に紛れてしまっている・・・。
江川蘭子と毬子の入れ替わりじゃないかという疑いは持ってたんだけど、全然甘かった・・・。他にも、重要な入れ替わりとかあって、想像をはるかに超えてました。
真相を説明しようとすると、本文ほぼまる写しになってしまいそうだから、やりません・・・(^_^;)。
鈴江の実家が雑技団、て言うのにちょっとひっかけられたのもあった。あれは結局?
確かにな~、よく考えたら、何かが変だ・・というところもあったような気がする。刀城言耶の再登場の時の高屋敷女史とのやりとりとか、冒頭の「編者の記」と内容が噛み合ってないこととか・・・。
でもやっぱり、全然分からなかったよ・・・。
本作を読むと、「怖ろしきモノ」とは〈ヒト〉なのか〈怪異のモノ〉なのか、断ずることは出来ないよなぁ・・・と思うのですよ。とっさに首を切って回れるものなのか・・・?という、ねぇ。
実際のところ、媛首村で女性推理作家を殺したのは誰だったのか・・・も分からないし。
しかも、最後の最後に『書斎の死体』の4月号の目次が載ってます。新人賞に幾森寿太郎「御堂の中には首がある」
・・・・って!怖いよ怖いよ!!
・・・あるんだ、首!御堂の中に・・・。
もちろんそれってアレよね。女性推理小説家の首――― 。
ところで、途中退場しちゃった刀城言耶、「山魔(やまんま)」伝説を追っていったのですよね~。たしか次作のタイトルが『山魔の如き嗤うもの』だ・・・。しかも、同行していた阿武隈川烏(あぶくまがわからす)が「鳥坏島も神々櫛村もまだ行っていない」って言ってた。てことは、流浪の怪奇小説家が物語にデビューしたのが、この首無殺人事件・・・って事になるのかしらん。但し、出演場面は、かなり少ないし、立ち位置としては特殊なんだけどね。
コレは、次作も読まねば!
(2010.03.31 読了)
水無月・Rの『◎◎の如き●●もの』シリーズ記事
『首無の如き祟るもの』(本稿)
この記事へのコメント