何と言うか、テンポがいい物語でしたね~。ただ・・・何か、ちぐはぐな感じがするんですよねぇ。
多分、〈直木賞作家・桜庭一樹〉を期待して読んだ人は、納得できないんじゃないかな~。
本作『製鉄天使』は、『赤朽葉家の伝説』の毛毬(けまり)が書いた漫画のノベライズ、だと思うんですけど・・・。ううむ~。
あ、いや『赤朽葉家の伝説』と比べるから違い過ぎるというだけで、あの時代の雰囲気と言うかそういうの、すごくよく伝わったし・・・。悪くはないんだけど。
赤朽葉家の物語の2番目の主人公、毛毬。
子供のころから暴れ者で、暴走レディース「製鉄天使(アイアンエンジェル)」のリーダーとして中国地方を統一し、引退。その後、その激動の体験を漫画化して大ヒット。
その漫画のノベライズ・・・じゃないのかな、違うのかな?
とりあえず、かなり荒唐無稽な設定になってるしなぁ・・・。
鉄を支配し自在に操る(のみや彫刻刀で敵の体に難しい漢字を刻むとか、鉄を自由自在に伸縮させるなど)能力とか、紙をを自由に操る(紙ひこうきが鉄に刺さる)とか、人の乗ってないバイクが走って来るとか(笑)。
二ツ名を持つ登場人物たちの、かなりデフォルメされた言動とか。絶妙な二ツ名が多くて、笑わせて頂きましたわ~。
この辺の設定は、ファンタジーと言うよりメルヘンに近いかも~(^_^;)。
逆に、やり過ぎちゃって正解だったんじゃないかな?と思いますよ(笑)。
言葉遣いとか、まさに昔の不良少女(笑)。丙午(ひのえうま)は私よりちょっと上なので、私が中学入った頃には校内暴力とか下火になってたんですけど、なんか覚えはありますねぇ。
ただ、コレってあの時代のあの世代(あの世界)を知らない人には、読みにくいんじゃないかしらん。
凄~く、〈硬派な不良少女マンガ〉的(笑)。かなりデフォルメしてるところが、大変笑えます。
「ぱらりら、ぱらりら~」って口で言うんだ(^_^;)。しかも、表記的にひらがななんだ(^_^;)。
なんか、ありとあらゆる意味で、ツッコミ処満載なマンガチックさ(笑)。
あのキメゼリフとかって、ホントすごい笑える。
あの頃の、子供と大人を厳然と分けていた、あの空気。子供だけが、維持できたファンタジー。
一夜にしてそれを失ってしまった、主人公・赤緑豆小豆(あかみどりまめ・あずき)。
それでも、中国地方と言う砂漠のように広い世界の統一を果たし、引退・・・。
って、ここまでは良かったんだけど、その翌日、メンバー引き連れて赤城山に行っちゃうってのは、どうなんだろう・・・。
途中で挟まれるシーンで、山で一夜明かしながら男と喋ってるのは、きっと小豆なんだろうな~とは思ったけど。
ラストシーンにそういうふうに繋がる、というか繋げるための無理やり設定な気が気がする。私的には、あのラストシーンは要らなかった・・・。
ううむ~。なんか書きにくいなぁ。
物語としては、かなりデフォルメされたノリのいい物語なんだけどね~。あちこち、くすくす笑える、ツッコミ処満載なところがあって、楽しいし。
例えば、紙を操る少女・製紙会社〈青色ノ涙〉のお嬢は、出目金こと黒菱みどりですよね(笑)。私、あの人結構好きだったんで、おお、ちゃんとこっちにも出演してる(しかも結構重要な役で)!と、嬉しくなりました。
真面目系のぽっちゃりメガネ君・とぼとぼのトォボが、小豆を〈リボンちゃん〉なんて呼んで、恋い慕ってるのも、いい。小豆の方は、容認はしてるけど全然意に介してないのにさ。
(←ちょっとトホホの香り?・・・て言うか、そんなところにもトホホ萌え展開したいんだ、水無月・R!)
それから、お兄さんとのやりとりは、ちょっと切なかった。普段、存在に気づけないくらい、お互いが全く違う兄と妹。だけど、本当はとても大切に思っていて、だから認識できたときは、穏やかに会話ができる。だけど、そんな兄は・・・いつかいなくなってしまう人で・・・。
本作は、直木賞前後辺りからの作風とは違うし、ラノベ時代の軽妙さとも違う。
物語の展開としては『赤朽葉~』を読んでたら分かるし・・・。
そんなわけで、ちょっと物足りない感がありました(^_^;)。
(2010.06.29 読了)
・・・最近、色々と私ごとが多くなって、本を読むスピードも落ちたし、感想書くのも遅くなりました(-"-)。て言うか、処理能力の低下?!な気もする、アラフォーでございます(ーー;)。
この記事へのコメント
苗坊
TBとカキコありがとうございました。
スピンオフだと気付かずに読んでいました^^;
私もわりと好きな雰囲気でした。ギャグっぽいところもありましたけど、それはそれで面白かったです。
お兄さんとのシーン、好きでした。
家族にとっては正反対の印象の2人が、一緒にいるとあんなに穏やかな時間が流れるって、不思議ですね。
そういえば、お兄さんは泪っていうことですよね。そうだ、そう思うと尚更切なくなってきました・・・。
水無月・R
時代の空気というか雰囲気が、すごくよく出ている、テンポのいい作品でしたね~。
お兄さんとの静かなシーンは、暴れ回る製鉄天使のシーンを際立たせてたと思います。
そういう対比の造りや、しんみりする兄妹の絆とか、ホントに桜庭さんは見せる物語の造り手ですよね。
すずな
「赤朽葉家~」のスピンオフでなければ、それなりに懐かしく、楽しく読めたと思うんですけどね…^^;どうしても期待しちゃって、その期待した分だけガッカリ;;;が大きかったような気がします。
june
しかも丙午は同級生なので、なんだか懐かしくて懐かしくて・・。当時は荒れた学校も、怖い不良たちも嫌で嫌で仕方なかったんですけど。
水無月・R
いや~、あんまりにも『赤朽葉~』とは違いますもんね~(笑)。
まあ、ファンタジーというかメルヘンですよ、メルヘン(*^^)v。
ある意味、突き抜けちゃってたんで、笑えました。
水無月・R
ノベライズ・・・でいいんですよね、やっぱり♪
私が中学生になったのはけっこう田舎だったので、すんごくスカートの長い先輩とかいたし、激しく型にハマったキメゼリフとか、結構日常的に耳にしてました。当時は怖かったですけど、今となっては懐かしいというかなんというか(^_^;)。
このノリと勢いは、読む分には楽しいですよね、ツッコミ処も満載で(笑)。
でも…やっぱり実体験はしたくないですけどネ(^_^;)。
空蝉
トラバありがとうございました♪お返ししますね。
それにしても毎回違った毛並みの物を送り出す桜庭氏。少女の世界はもちろんですが、今回は兄!あの兄がツボでした(笑)
水無月・R
まさに、ふた昔ぐらい前の少女漫画ですよね(笑)。
バリエーション豊かで素晴らしいなぁと思います。
お兄さんが見えなくなっちゃうぐらい、お互いの意識の方向がばらばらなのに、時に温かい時間が流れる仲、というのがちょっとうるっとしました。