来ましたよ~。三津田信三さんの土着民俗系ホラーミステリー!(←水無月・Rの勝手なジャンル付け)
ぞわぞわ~っとして、じわじわと迫って来る、恐怖がいいです。
そして、いつも通り二転三転する謎解き、真相の「ようなもの」が提示されるも、決して断言できない結末。
流浪の怪奇小説家・刀城言耶が出会った事件、『水魑の如き沈むもの』で解き明かしたのは、真実だったのか・・・。この曖昧さが、怖いですよ~!
大学の先輩・阿武隈川烏(あぶくまがわからす)に誘われ(阿武隈川は都合付かず不参加)、怪奇小説雑誌の編集者・祖父江偲(そふえしの)を伴って訪れた奈良県の山中での雨乞いの儀式で、刀城言耶(とうじょうげんや)は連続殺人に巻き込まれる。
4つの神社が代わる代わる行う、水源の湖での増水減水の儀式。儀式の最中に湖に供物を捧げた「神男」が殺され、そして神社の宮司たちが次々と襲われ殺されていく。
最有力神社の「水使神社」の宮司・龍璽が隠している蔵の謎。龍璽の養女・左霧の子供達が感じる「忌むべき何か」の気配、湖に潜み祀られる龍神・水魑様、湖と繋がる地下洞窟・・・。「生贄」の意味。
ぞわぞわして、怖い怖い・・・っていう怪奇現象もあるけど、推理は合理的に進められ、動機もきちんと求められる謎解きなんだけど、最後の最後に真実が一気に転覆する。いっそ潔いまでに。
いやぁ・・・何から書いたらいいのか、ホント分からないです。あらすじ紹介しようとしても、全然要約出来ないし。刀城言耶による謎解きがなされなかった「蔵」の現象はどうなったのか気になって仕方ないし・・・。
あらすじは放棄します・・・。無理なんで。
しかしあれだなぁ、水使神社の龍璽宮司の常軌を逸した言動が怖ろしいですよ。儀式に際しての生贄当たり前、日常でも緩やかな生贄を蔵に閉じ込め、生贄にふさわしい人物を得るために養女を迎え・・・そして神男は自分では勤めず、実の息子にやらせる。なんとしても水使神社の長たる立場を維持せんがために、犯罪でも何でもやり、人死にが出ても警察には届けない。
いや~な感じですよねぇ・・・。
「サギリ」っていう名前に、んん?って思ったら、やっぱり『厭魅の如き憑くもの』の憑き物筋の一族に共通する名前でしたね。
実は実は、刀城に関わる怪奇ミステリーは、日本の奥底で秘かに繋がってる・・・?!なんてちょっとわくわくしますね。
でもね~、ワクワクするといえば!何と、とうとう水無月・R、刀城言耶シリーズにもトホホ萌えを発見してしまいましたよ(笑)!
冒頭の、阿武隈川と偲との3人の会話!ポンポンと進み、そしていつの間にか落されてる刀城(笑)。偲には絶対かなわないんですね!そして阿武隈川には言い負かされちゃうんですね!だけど、怪奇話には我を忘れてしまうというところは譲れないと!・・・きゃ~、すんごいトホホの香りがします。頑張ってるのに報われない、というのとちょっと違うけど、コレは確実にトホホです。
ああ!コレはやっぱりこのシリーズを追い掛け続けろという、読書の神様からのメッセージなんですね!(←妄想激し過ぎ)
このシリーズを追い掛け続けたい理由は、もう一つあります。編集者・祖父江偲の空回されっぷりですね~。本人が空回ってるというより、刀城がニブすぎです(笑)。いつか偲が報われる日が来るのか来ないのか・・・という、やきもきする感じが期待できそうですもんねぇ!だけど、・・・そういう楽しみ方していいんだろうか(^_^;)。
このシリーズ、いつも表紙に言及してるんですけどね、今回、あれって思うことが・・・。半身は宮司(しかも目は真っ黒)、半身は妖艶な舞い巫女姿の人物像。巫女といえばこの物語の中では、湖で奉納舞いをする刈女だけど、はっきり言って全然ストーリーの中では重要な役割じゃないですよね。これってもしかして、最後の2ページの内容と呼応してる?水場神社の游魔(りゅうま)の所に、のちに嫁に来た「正子」は、小夜子ではなく、実は正一は「三つ目である三番目の娘」だったのか・・・!ってことも考えられる?!・・・うわぁ、いろいろ勘ぐっちゃいますねぇ!
(2011.02.13 読了)
水無月・Rの『◎◎の如き●●もの』シリーズ記事
『水魑の如き沈むもの』(本稿)
この記事へのコメント
キンニクン
確かに面白いですよね、このシリーズ。
でも俺は恋愛とかはいらなかったかなーと。
祖父江の片思いとかそういうのにページさかれるなら、もっと深く謎をみたいというか。
漫画とかならそういうのも良いかもしれないけど、キャラ萌え厨ではなく物語やトリックなどを重視してるほうには残念だった。
妹とも貸し借りして読んでるけど、やっぱりいらない登場だったと言ってましたね。
もうすでに確立されてたところに登場させた意図はなんなんでしょうね?
やはりこういう恋愛要素は需要があるんでしょうか。
水無月・R
う~ん、私は、恋愛要素はツッコミ処として残しておいてほしい派です(笑)。あくまでツッコミ処ですよ♪
キャラ萌え厨と言われたら、それはそれで認めるしかありませんが(^_^;)。
このシリーズの魅力の芯は「怪異現象のような事件を合理的に解決する刀城言耶」「だが…本当に?という余韻を残したラスト」だと思っていますが、それにちょっとした気の抜け処があってもいいかな、って思ったりします。