う~わ~~!!面白かったっ!伊坂節ですねぇ!
キャラ立ちまくりの登場人物たちが丁々発止とやり合い、畳み掛けるように進む展開、伏線は緊密に張り巡らされ、ラストに向かって怒涛の回収!・・・いやぁ、爽快爽快

実は私、ご本人が第一期終了と宣言されてから、伊坂幸太郎さんの作品、ちょっと合わないなぁ・・・というのもあったのですが、この『マリアビートル』なら、全然問題なし!非常に楽しかったです!
・・・ただ、ちょ~っと、死体の数が多すぎるんじゃないか、と思いますよ(笑)。
私、この【蒼のほとりで書に溺れ。】を始めた最初の頃に伊坂さんの 『オーデュボンの祈り』のレビューを書いたのが伊坂作品との出会いだと思っていたのですが、その前に読んでました『グラスホッパー』。
殺し屋業界の噂話のところで、やっとこさ気が付きました。「押し屋」「自殺させ屋」んん?なんか記憶にないか?!って・・・(-_-;)。
ストーリーを追いかけようとすると、こんがらがりそうだわ。ざっくりと拾ってみることにしよう。
それぞれ別の目的を持った物騒な連中が、何故か同じ東北新幹線〈はやて〉に乗り合わせる。疾走する新幹線という密室の中、ある者は戦い、ある者は殺され、ある者は状況を支配しようとし、ある者は不運に見舞われる。次々と死体が増え、いわゆる裏稼業内での伝説の業者のエピソードがあちこちに散りばめられ、何とか終点盛岡で下車できた業者は、裏社会の大立者の死を目撃する。
息子の為に復讐を目論む「木村」、「なぜ人を殺してはいけないのか」が十八番の質問の中学生「王子」、腕利きで危険な二人組の殺し屋「檸檬」と「蜜柑」(果物)、とにかく不運な何でも屋「七尾」(天道虫)。七尾に恨みを持っていた「狼」は乗車するなり死体化。伝説の殺し屋「スズメバチ」は正体を見破られ、木村の電話がおかしいことに気づいたその両親まで〈はやて〉に乗車してくる。七尾の相棒・仲介屋の真莉亜、元業者で現在は仲介業を営む中年男、伝説の押し屋「あさがお」(←木へんに菫であさがおなんだけど、変換できない)、寝起きが悪いが有能な業者の噂、妻を殺された過去を持つ塾講師・・・とにかくキャラ立ち満載。だけどそれがくどくないのが凄いよねぇ。
それぞれにキャラ立ちまくりな物騒な連中、それぞれに魅力がありましたね~。物騒なのに魅力ってどうよ、と思わなくもないんですが、なんだか愛すべき点が多いというか人間味あふれるというか。
ただ、木村はちょっと、駄目男過ぎるなぁ。息子への愛としぶとい生命力は、なかなかのものだと思うけど。更に言うと、その木村を拘束して利用しよう、すべての事態は自分に有利に展開させられると信じ切ってる王子は、気持ち悪い。不愉快極まりない。王子の言動には、神経逆なでされまくりで、胃の底がざらざらするような気持になった。ラストで、かなり痛い目にあったようだし、たぶん物語後に酷い目に合うんだろうけど、全然同情しないね!
反対に、蜜柑&檸檬のやり取りが、なんとも(笑)。トーマス君については過去息子たちが好きだったのでいくらかは知ってますが、檸檬の語るネタには全くついていけなかった(^_^;)。そして文学作品を語りだす蜜柑のキレ具合が、微妙に理解できる自分にびっくり(笑)。この二人、やってることは物騒なのに、なぜか微笑ましい感じがするのがいいですね。ラストシーンで復活?!には、笑わせていただきました。
そして、私の大好きなトホホの香りがする、七尾君ですよ…!まあ、呆れるほどに次から次へと怒涛の不運の連チャン状態、だけど死体満載の〈はやて〉から無事下車できるんですから、なかなかの強運とも言えるかも(笑)。不運に見舞われれば見舞われるほど、嘆きながらも頭の回転が速くなって対処できる、ってあたりは有能だよね。
タイトルの『マリアビートル』はてんとう虫のことだから、実は主人公は七尾君なのかしら。
愛すべきトホホ青年
(ただし特技は不運と首折り)、七尾君に幸あれ(笑)。

キャラの話だけでずるずると長話になってしまったけど、新幹線内での殺人や交錯する裏業界の事情という設定も、スリル満点。裏稼業の業者内での伝説とか、それに関する割とクールな発言や、伝説の夫婦業者登場!とか、わくわくする話もいっぱい。
新幹線での事件を無理やりにまとめた警察の大雑把な発表、あまりにもらしすぎて、しかも多分私自身も直接の当事者じゃなければ信じちゃいそうだ・・・ってあたりがちょっとチクリと来たな~。
王子の人心支配術(人心掌握とは言いたくない)は、はっきり言って不遜で気持ち悪いけど、確かにそういう風にやられたら流されてしまうかも、ということを知ったという意味では、一つ学習したかな。もちろんそれを実行する気はないけど、もしそういうのを仕掛けられてるような気になった時、ちょっとした対抗手段になるかも、って思った。まあ、圧倒的な力の前には、負けてしまうのがオチだとは思うけど。
〈はやて〉のスピードに乗って、とにかく色々なことが起き、死体が量産され、登場人物たちはテンポよく会話していく。物語の終盤に至ってもどんどん広げられていく事態に、読んでいるこっちとしては「どうやってこの話収束するの?!」という緊張感すら加わって、ドキドキしっぱなし。途中から事態に参加したあの殺し屋が実力と年の功でまとめ上げた時には、ほっとしたわ~。(そういえば、ヘビもしっかり纏めに入る伏線でしたね(笑))
伊坂さんてホントに、カッコいいおっさん(この場合高齢者夫婦だけど)登場させるの、うまいですよねぇ。飄々としてるようで、鋭い迫力と、貫録がある。迫力と貫禄はともかく、せめてあの落着き具合と経験に裏打ちされた頭の良さは、私も見習いたいけど・・・無理かな、やっぱり(^_^;)。
(2011.11.15 読了)
この記事へのコメント
苗坊
私もこの作品好きでした。
「グラスホッパー」が結構むごくてたくさん人が死んだので、私はまた人が死ぬんだろうな~という多少の覚悟?はできていましたが、それでもバタバタ人が死んでいきましたよね^^;
王子は本当に救いようがないですよね。私もまったく同情しません。
七尾君はホント面白かったです^^またどこかで登場しないかなと期待してます。
水無月・R
どんどん死体が増えるのに、なぜか爽快な読後感。伊坂さん凄過ぎですよね~!
七尾君は『オーデュボンの祈り』の伊藤青年のように、あちこちにフラフラ登場してくれそうな予感が・・・。だったらいいなぁ♪
すずな
やっぱり七尾のトホホっぷりがツボでしたか(笑)不運の連続は凄すぎでしたね。同情よりも笑ってしまいました^^;
水無月・R
この作品もう、私たちの大~好きな伊坂節ですよね♪
七尾君の不運は、エンターテイメントの域に達していると思います(笑)。真莉亜ちゃん何気に酷いし(笑)。