尾崎翠という作家が昭和2年に書いた映画脚本を、現代の津原泰水さんが小説化。尾崎翠さんという方も知らず、原案である「琉璃玉の耳輪」という脚本作品も知らず、の状態で読み始めました。
耳に特殊な『琉璃玉の耳輪』を取り付けられた三姉妹の捜索を依頼された、女探偵・岡田明子。彼女や彼女の探す三姉妹、そしてそれにかかわる人々の冒険活劇でもあり、幾重もの人格と幻想が錯綜する怪奇ロマンでもあり。
ううむ…結構ばらばらな感じがするなぁ。面白かったけど、ちょっと力技なところもあったような気がする。
昭和2年に書かれた原案を、津原さんは昭和3年設定で書き始めている。この時代だと、外で働いている女性自体が珍しい。女探偵である明子が駆使する、自らの人格操作が最初は面白かったんだけど、ちょっとご都合主義的な気がしてきて鼻についてしまった。性別の違う人格を呼び出すと、顔の骨格から背の高さまで変わるというのはちょっとやりすぎな感じ・・。
とはいえ、そのおかげで琉璃玉の耳輪をつけた姉妹のうちの次女の身柄を確保できたわけで、物語には必要なんだろうけど。
数奇な運命の美しき三姉妹、三姉妹の養い親であり変態性欲を持つ男、三姉妹に関わる変わった経歴の者たち、伯爵と伯爵夫人と伯爵令息、女探偵とその上司であり有能な名探偵、様々な人間が関わり合い、琉璃玉の耳輪をつけた姉妹を集めるために丁々発止の小競り合いを繰り返しながら、物語が進展していく。
一度確保したと思われた娘が逃げ出したり、更にもう一度攫われたり、二転三転する事態と、映画の場面転換を意識したかのような、時間をすっ飛ばしその間に挟まれる幻想で物語は混乱する。私も混乱した…。
特に、明子が正当防衛で殺害した悪漢の人格が明子に入り込み(その流れと理屈がよくわからない)、多種あった明子の人格たちを食らい、一度は抑え込まれたものの最終的にまた表層に表れて悪事をなすが、明子の中の強力な人格の自己犠牲により消滅…とかって、ううむ~判らんわ~。
判らない、力技だなどと言いつつ、時間もちょっとかかったけど読了。
面白かった~!と言いたいところだけど、どうも、微妙な感じです。何とも、津原さんと私の相性がよろしくないようで、残念です~。
(2011.12.07 読了)
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