あの恒川光太郎さんが、絵本。
タイトルは『ゆうれいのまち』、へぇ~、どんな感じなんだろう。
岩崎書店の「怪談えほん」シリーズの中の1冊。怖いのかな?子供に分かるのかな?
・・・てなわけで、我が家の小学4年生にも読んでもらいました。今回はちょっとイレギュラーに、[親子の感想比較ぅ?! ] 版です(笑)。
まよなかにともだちがきて、「ゆうれいのまちをみにいこう」と誘われた。
二人でさまよい歩いたゆうれいのまち。
ゆうれいに見つかって捕まったぼくは、ゆうれいのまちで暮らすことになる。
なんねんも、なんねんも過ぎた。何もかも忘れておとなになった。
あるまよなか、またともだちがきて「つぎのまちへいこう」と誘う。
はるのよるのゆめのような感覚で、また・・・。
ほほほ~う。ぞわっとしますね。
繰り返す「はるのよるのゆめ」。夢オチならいいけれど、きっと夢オチではなく入れ子細工。
「ぼく」はおとなになったのに、あの「ともだち」は同じ顔。
そして、何もかも忘れても、僕は〈人間〉の姿のまま。
・・・うわぁ~、何とはなしに、不穏ですね。
次の町で、「ぼく」は何に捕らわれるんだろう。
そしてまたきっと、入れ子細工の別の町へ誘われるのだ。
エンドレスループの予感から、ふと 『秋の牢獄』を思い起こす。
淡々と語られる「ゆうれいのまちでの出来事」のなかに、
~みんなで ぐるぐるまわって そらをとび
あきのゆうぐれ つむじかぜ~ (本文より引用)
という文章が入っているのだけど、何故かそこから「北風伯爵」を思い出してしまった。
繰り返す、悪夢というには淡々としている、だけど確実に人間の世界ではない、異界。
・・・うん、じんわりと怖いなぁ。
で、小4の次男である。
「怖かったけど、すごく怖くはなかった」と主張。
「ともだち」とこっそりのぞいた中にいた、植物のような人型のゆうれいが一番怖かったそうだ。
地味な感じだけど、よく見ると結構凶悪な顔をしている・・・(笑)。
全体的に黄色っぽい絵が、怖いというか不安になる、とも言ってました。
あまりに感想が簡単だったので、いくつかインタビュー。
Q:1回目と2回目と、誘いに来た友達は同じ顔だけど、どう思う?
A:あ、ホントだ。う~ん・・・、この友達は「ゆうれい」だよ。悪いやつ。
Q:今晩、君の知らない「ともだち」がさそいにきたらどうする?
A:3階の窓に来るのは〈人間〉じゃないから行かない。
Q:はるのよるのゆめ、って言ってるね。夢オチだといいね。
(夢オチの説明をする)
A:目は覚めないよ。また別の町に行くから。
Q:次の町はどんな町だと思う?
A:ロボットの町だったらいいなぁ。ロボットと友達になる。
Q:ロボットと友達になっても、うちには帰れないよ。
A:仕方ないよ。最初についてっちゃったのが、駄目だった。
うう~ん、4年生はさすがにちょっと冷静です(笑)。
「夜、おしっこに行けなくなるよ~」と脅したけど、「別にぃ~」と返されました。
お化け屋敷入れないくせに~(笑)。
そして、今日になって「ホントは、怖かった」と言い出しました(^_^;)。
「読んだときは怖くなかったけど、おかーさんにいろいろ質問されて、考えてたら怖くなった」そうです。
ふっふっふ・・・、母のコトバの威力を思い知ったか♪
淡々と繰り返される、とある町から次への町への旅、というと『竜が最後に帰る場所』の中の「夜行の冬」にも似ているかも。
子供向けに、その続く旅の中の一つをクローズアップしたのかもしれないなぁ、なんて思います。
恒川さんの、こういうテーマ、好きだなぁ。
私たちの郷愁に感応する淋しさや、繰り返すことへの昏い憧憬と後悔。体験したことはないはずなんだけど、体のどこかで覚えているような。もしかしたら、いつかどこかで、自分もこんな世界を体験するのでは、という密やかな予感。やっぱり、じわ~っと怖いです(笑)。
子供にこの怖さが伝わるか…は、個人差があるかなぁ、という感じです。
でも、この「じわじわと怖い、いつの間にか自分も取り込まれそうな怖さ」がわかるような、感覚の鋭い子供はきっと、大きくなって『夜市』などを読んで、心を揺り動かされるんだろうな、と思います。
うちの子は、どうだろう(笑)。
(2012.07.16 読了)
この記事へのコメント
すずな
「親子の感想比較」っていいですねー!お母さんの威力もすごい(笑)
水無月・R
「はるのよるのゆめのよう」とあるけど、絶対夢じゃない。ぐるぐるとまわりながら、どんどん深く落ちていく感じがしますよね。
子供は案外ストレートなものの方が怖いんですよね。なので、今回ちょっと揺すぶってみました(笑)。