『プリンセス・トヨトミ』/万城目学 ◎

ほうほうほう。
豊臣家の末裔が、大阪におる、と。
で、その末裔を守るために「大阪国民」が立ち上がる、と。
映画もやってたしね、大まかなストーリーは実は知ってたんですよね。
でも、なんせ「京都」「奈良」ときて満を持しての「大阪が舞台」ですからねぇ。
著者万城目学さんの地元ともいえる、大阪ですもん。期待値高かったです、『プリンセス・トヨトミ』
そんで・・・、面白かったですよ~、うふふ。

東京から、3人の会計検査院調査官が大阪に乗り込んだ。会計検査院とは、三権分立の枠外にある独立組織であり、国の予算が適正に使われているかを検査する機関である。
大阪府庁および、国の予算を受けて活動する団体をピックアップし、その会計を検査していた松平・鳥居・ゲーンズブール(旭)の調査官3人は、ある一つの団体[OJO]の検査が出来ないまま、検査出張の予定を終了する。
だが、私用で大阪に残った松平に、[OJO]検査の機会が訪れる。
その検査と[OJO]の実態は、予想だにしないものであった・・・。

うわ~、こんな風に書くと真面目でお堅い小説みたいだねぇ(笑)。まあ、今までの万城目さんの作品とはちょっと違うような展開でしたが、ところどころでニヤニヤ笑いが漏れてしまいました。
登場人物の名前が、ねぇ。東京から来るメンツが、松平に鳥居、旭でしょ。そんで大阪側が、真田に浅野に長宗我部に石田に片桐、後藤に蜂須賀、トドメは橋場(はしば)ですよ。
OJOが守る存在は、つまりもう名前バレしてるんですね、最初から(笑)。
多分ほかの名前も、あの時代の武将とか有名な人物の名前だと思います。私が認識出来てないだけで。

橋場茶子と共に行動する少年・真田大輔は、ぽっちゃりな男子中学生ながら女の子になりたいとずっと悩み続け、とうとう「セーラー服で登校する」と言う行動を起こす。その結果、周りからは気味悪がられ、後ろ指を指され、壮絶な嫌がらせを受ける。

茶子と大輔の子供たち組、お好み焼き屋「太閤」の主人・真田達大阪の大人組、そして会計検査院の調査官たち、それぞれバラバラだった物語が、あちこちで絡み合い、影響しあって、「大阪が停止する」というとてつもない事態が、ドミノ倒しのようにパタパタと展開していく。
その過程が面白かったですわ~。一般市民たちが、合図である「大阪城が赤く照らされる」を受けて「あちこちにひょうたんを掲げ」、伝えられた時間に黙々と大阪城へ向かう。それぞれの役目を、粛々と果たすその仕組みの緻密さには、感心というより、なるほどねとニヤリ。
まあ、ここでちょっと「でも大阪国民じゃない人たちはこの状況がおかしいって声を上げないのか?」っていう疑問は生まれたんだけど。
その部分は、ラストでいろいろと解説されてて、ははぁナルホドねと思いました。ちょっとご都合な感じもしますけどね、まあ大阪国民200万人の力をもってすれば、ああいうやり方で何とかなるのかな?
それと、男性だけが国民だっていうけど、女性は蚊帳の外?それはありえないだろ~!と思ってたけど、そっちもちゃ~んと、私の納得のいく説明がされてました。そりゃそうよねぇ。うん、やっぱり大阪の女性は強いよ(笑)。
あれだね、大阪のおばちゃんがフレンドリーなのは、こういう理由があるからかもしれないねぇ(笑)。
しかし、超絶美人でクールで有能な国家公務員であるゲーンズブール旭嬢も、地元に帰るとあんななのね。親近感わくわぁ♪それと、鳥居を府警から引き取る際の名演技も、素晴らしかった!爆笑したわ~。やるときゃメーター振り切るタイプですね、旭(笑)。

大阪国首脳陣と会計検査院のスリルある戦いもよかったけど、市井の人々が大阪国のために立ち上がるシステムという群像劇が、これまたよかったです。
『鹿男あをによし』の大阪女学館の剣道部顧問・南場先生が出てきました!万城目さんワールド、繋がってますね~。ワクワクします♪
その他の人々も、小さなことを実行して,それが〈カチカチカチ〉って感じで組み合って怒涛の大阪城結集になるんですから、素晴らしいです。
ただ、このために年間五億円・・・(笑)っていうのには、えぇ~なんじゃそりゃ~(^_^;)って脱力しましたけど。
要るんだ~、五億。しかも、末裔たち本人には、全く知らされないことなんだよねぇ。なんか、凄いよねぇ。
けど、守るだけで、いいのかな。っていう気はする。末裔たちの傍系とかは、対象になるのかしら?とか、余計なことも考えちゃったけど、まあ物語ですんでね。あんまり追求するべきじゃないのかな(笑)。

あ、そうだ。松平のアイス中毒なんじゃないかというぐらいアイスを食べる癖(1日に5個!しかも前よりは減ったらしい)は、特に伏線にはなってなかったですねぇ。残念。
そうそう、それから、ミラクル鳥居ですが、彼は断じて『トホホ』ではないのですよ(笑)。
鳥居さんは、ミラクルなんです。存在自体がミラクル。このミラクルさ、「結局、大阪国騒動にはいっさい介入出来なかったのに、全てのきっかけはほぼ鳥居によるもの、しかも何も知らされずにすべてが終わってしまう」というこの奇特なキャラ、素晴らしすぎる。トホホじゃないけど、ミラクル鳥居、好きですねぇ(笑)。

(2012.10.08 読了)

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この記事へのコメント

  • 苗坊

    こんばんは^^
    いやー面白かったですよね。大阪の壮大な物語を楽しみました。
    大阪に住む男性たちが抱えている大きな使命。みんなが親に言われて代々受け継がれているのに鳥肌が立ちました。
    女性が蚊帳の外で本当に何も知らないのかなと思ったら、ちゃんとその部分も書かれていて良かったですね^^やっぱり大阪の女性だなと思いました。
    2012年10月09日 20:12
  • 水無月・R

    苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
    大阪の男性が伝え続ける秘密と使命、知ってるけど黙って見守る女性たちの懐の大きさ、スゴイことですよね!
    こういう物語を思いつく万城目さんて、ホント素晴らしいですね~。
    他の作品も、早く読みたいです~。
    2012年10月09日 21:13
  • 香桑

    こんばんは。もう読了されたんですね♪
    歴史を知っていても知らなくても、十分に楽しむことが可能な壮大かつ庶民的なファンタジーだと思います。
    途中から、俄然、楽しくなって、その楽しさが映画の面白みとは少し違っていたかもしれません。
    あの人が集まる場面に興奮でぞくぞくとし、大輔の一声にぐっときました。なんとも素晴らしいクライマックスだと思います。
    後半ばかり何度も読んでしまいました。

    どう言えば、本書を読んだ時の総理が未曾有でけちをつけられてしまったA氏で、あの人だったら映画で嬉しそうに嫌われ役の総理の声をやってくれないかな?と思ったことを思い出しました(^^;
    2012年10月09日 21:36
  • 水無月・R

    香桑さん、ありがとうござます(^^)。
    後半、ホント面白かったですよねぇ。
    おお、続々集まってくる、そしてみんな事情を受け継いで知っているんだ、ぞくぞくするなぁ~っって。
    そして、男だけで回してると思い込んでる大阪国のホントの実情を知って、ニヤニヤしてしまいました♪あのラストは、大変良いですね~(#^.^#)。
    2012年10月09日 22:20
  • すずな

    一気に万城目作品を読破中ですね~!作品の楽しさを語り合えるお仲間が増えて嬉しいです~♪
    登場人物の名前だけでもニマニマしちゃいましたよね。もう、橋場茶子とか思いっきりネタバレでしたけど(笑)
    そして、大阪城集結の場面では本当にワクワクしました!…5億円ってのは凄いですけどね(笑)
    2012年10月10日 12:53
  • 水無月・R

    すずなさん、ありがとうございます(^^)。
    はい~、万城目さん作品、ハマりまくり中です♪
    くふふ。と笑ってしまう(私の場合は大爆笑もあり)楽しい物語。いいですねぇ。
    橋場茶子ですもんねぇ(笑)。うわぁいきなりネタバレだよってニヤニヤしてしまいました。
    2012年10月10日 22:23

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