『烏に単は似合わない』/阿部智里 ◎

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おお~、面白かった~、最後はすごい怒涛の展開ね!なんて感心しつつ読了。そして、著者プロフィールを見てびっくりしました。え?阿部智里さんて、この作品でデビュー?!当時20歳?!
読みやすくて面白くて、世界観もしっかり出来てて、久しぶりに一気読みできました。
スゴイ作家さんが出てきてしまいましたねぇ。
非常に面白かったですよ~、『烏に単は似合わない』

最初に見かけたのは、書店の平積みだったか、新聞の書籍広告だったか・・・。四人のそれぞれに強い個性があふれる美女が描かれた表紙、その真ん中に『烏に単は似合わない』という凛としたタイトル、とっても心惹かれました。
読みたい本リストの兼ね合いと図書館の予約の順番で、やっと昨日私の手元へ来たのですが、読み始めたらホントにものすごい勢いで読みふけってしまいましたわ~。

何が面白いって、設定というか世界観と、登場人物の個性の強さ。八咫烏(サッカー日本代表のシンボルマークでもありますね)が支配する世界、だけど貴族は烏の姿ではなく人の形をとり、日々を過ごしている。国の開祖である金烏の一族が宗家(王家)、開祖の四人の子どもたちから東西南北の分家が生まれ、四大貴族として国の各領地を治める。その四大貴族の娘たちが各家一人ずつ、皇太子の妃候補として集められる桜花宮には、春夏秋冬の名を冠する殿舎があり、春殿は東家二の姫・あせびに、夏殿は南家一の姫・浜木綿に、秋殿は西家一の姫・真赭の薄(ますほのすすき)に、冬殿は北家三の姫・白珠に与えられ、彼女らは皇太子である若宮に選ばれるのを待ちながら研鑽することになる。
平安朝のようだけど、それよりももっとファンタジーで、かつ妃候補の姫君たちが個性的で、読んでいて楽しい。

ストーリーに関しては、読んでのお楽しみというコトで(なんせホントに面白いし読みやすい)。
四人の姫それぞれが、家の事情や期待を背負い、若宮への恋情や妃という立場への執着を胸に抱え、各季節を代表する性質と美しさを持っているのが、とてもいい。
私は、最初の頃は浜木綿が好きだったけど、最後の章では断然、真赭の薄派になりましたね~。プライドが高いお姫様だけど、頭はいいし思い切りもいい、華やかさの中にも強さを持った、素晴らしい女性でした。カッコいいです!

現れない皇太子を待つ彼女たちの日々は、妃の座をかけての争いというより、次々と起こる事件を経て様々に成長し、女性としてより美しく矜持を持った強さに磨きがかかっていく。
出席すべき行事にも現れない若宮が、やっと現れたと思ったら、あれよあれよという間に怒涛のラスト(大どんでん返し)。しかも、終章を読み終えた途端、「うわぁ!そう来たかい!」と叫んで序章に戻ってしまいましたよ。う~わ~、やられた~、凄いなホントにもう…。
しっかし、若宮はもうちょっと〈女心〉を学んだ方がいいと思うね。確かに若宮は、次世代の政を執り行う人なんだから、妃選びおよび今後のやり方を冷静で合理的にすべきだし、立場上情を絡めた物言いをすれば間違った期待や誤解を生んでしまうから、ああいうことを言ったりしたりするんだろうけど・・・。

とりあえず、妃に決まった人は、もう1・2発あの若宮をぶん殴るべきだと思います(笑)。

終章の最後の一行がなかったら、ホントこの若宮、嫌な奴ですわ(^_^;)。でも、あの一行および第5章の終わりの方での真赭の薄との会話からすると、若宮はずっとこの妃のことを心に留めてきたんだな~と、ちょっとほっとした。
案外ツンツン(表面上デレない←デレてくださいよぅ)なだけで、大切に思う心を何重にも秘めてる、実は最も妃のことを必要として手放したくないと思ってる、ってことかなって。
う~ん、でもやっぱり妃はぶん殴っとくべきだな(笑)。

(2012.11.19 読了)

水無月・Rの〈八咫烏世界シリーズ〉記事



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阿部智里 文藝春秋発行年月:2012年06月 予約締切日:2012年06月22日 ページ数:356p


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この記事へのコメント

  • 苗坊

    こんばんは^^
    私は職場の司書にオススメだよって言われて読みました。新聞等にも出ていたんですね。それも分かります。本当に面白かったです!
    あの世界観は本当に素晴らしいですよね。才能が有れば年齢なんて関係ないんですねー。
    確かに妃は若宮をぶんなぐって良いと思います^m^いや、もう殴ってるかも。
    私も最後は真赭の薄が好きになりました。最初は高飛車なのかと思っていたら^m^有能な女性でしたねー。
    2012年11月21日 00:50
  • すずな

    面白かったですね!デビュー作でこれってホント凄いですね~。
    最初の読みが思いっきり外れた最後の大どんでん返しには夜中に叫びそうになりましたよ^^;いや~ホントに作者にまんまとヤラレちゃいましたね。
    そうそう!私も最初はイヤだな~と思ってましたが、最後は真赭の薄が大好きになってました。カッコイイですよね。そして、やっぱり私も殴っていいと思います(笑)
    2012年11月21日 12:48
  • 水無月・R

    苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
    ホント、素晴らしく面白かったですよねぇ。
    四人の姫それぞれの強さと弱さ、そして美しさがしっかり描き分けられていて、とっても魅力的でした。
    真赭の薄は、美しいし頭もいいし、何と言っても潔い。漢前だといってもよいですよ(笑)。カッコいい女性だなぁ~、憧れるなぁ。
    2012年11月21日 20:24
  • 水無月・R

    すずなさん、ありがとうございます(^^)。
    騙されますよね~。でも、この捻り方はすごいです。著者の才能がほとばしりますねぇ。私も「えぇぇ、そういうことか!!」と唸りました。
    きっと若宮は、妃にぶんなぐられて、安心するんじゃないですかね(笑)。変な意味じゃなくてですよ(^_^;)。
    2012年11月21日 20:27
  • yoco

    こんにちは~度々の出現ですみません。笑
    この作品、ずっと読みたい本リストにありましたがよくよく見るとこんなに前に刊行されてたんですね。
    最初はあこぎと結ばれるといいな~と思っていたのに、まさかあんな結末とは!
    そして若宮確かにイケメンなんですが、本当にもっと女心を学んでよー!と思いましたね。
    間違ってないかもしれないけど、それだけじゃ駄目なのに!と。ツンツンしててもきっと選んだ相手を大切にする人なんだろうなぁとどこまでも感情移入しながら読んでました。笑
    2015年12月30日 09:14
  • 水無月・R

    yokoさん、ありがとうございます(^^)。
    いえいえ、おいで頂けて嬉しゅうございます♪

    若宮ねぇ(笑)。続巻(私は3作目まで読みました)ではこの人、一応いろいろ考えてるんですけどね、いかんせん説明不足です(笑)。
    未だに私は、この人は妃にぶん殴られたらいいと思ってます♪
    2015年12月30日 15:52

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