う~ん。今回の桜庭一樹さんは、〈人生泥沼系〉ではなかったけど、〈強化ガラス細工の少女たち〉の物語でもなかったなぁ。表紙の女の子の絵をみて、期待半々だったけど、・・・ちょっと、残念~。
目の前で大好きだった兄・奈落を失った主人公の少女・月夜が、失った兄を求めて過ごすひと夏を描く、『無花果とムーン』。
なんかね~。
私にとって〈少女であることの痛みや生き辛さ〉が、桜庭さんの〈少女もの作品〉の魅力だったんだけどね、本作には、あまりそれが感じられなかったんですよね。確かに、月夜は色々と生き辛さを抱えてるんだけど、彼女がやたらうじうじしてるのが、どうにもイライラしちゃったんですよ。うわ~、合わないわ~って。
目の前で、アーモンドアレルギーを持つ兄が、死んでしまった。その死に現実感を得られないまま、夏休みを過ごす月夜。彼女の住む町は、UFOがよく目撃されることから、夏に大規模なFUOフェスティバルをやっている。その祭りの準備に訪れる季節労働者たちの中に、兄にそっくりな男の子・密を発見した月夜は、彼と仲よくなる。兄の幻影が現れたり、家族や周りの人々とギクシャクしたり、情緒不安定な彼女の語りで、物語は進んでいき、祭りが最高潮に達したとき、月夜が家族にした告白。
そして、彼女が迎えるひと夏の終わりと、別れ。
奈落の死の原因はだいぶん早めに予測がついたので、どういう展開でどう収まりをつけるのかな~、って思ってたら。なんかホント、月夜がうじうじぐるぐる、独りよがりにひねくれてて、いや~な感じ。確かにね、もらわれっ子で、この国の人とは違う容姿(瞳が紫色で犬歯が発達している)を持ち、目の前で最愛の義兄が死んじゃって・・・て、複雑な事情があるんだけど。それにしたって、面倒くさ過ぎる。私もこの子の友達はやれないわ~。
内容と主人公のことはイマイチでしたが(好きな人にはホントごめんなさいです)、他の登場人物が、素敵でした。
奈落よりも上の義兄・一郎の現実的で優しいところとか、遠藤苺苺苺苺苺(苺×5でイチゴとよむ)のツンデレだけど強くてしっかりしてるところとか。
ラストシーンの2人は最高だったなぁ!イチゴ先輩、カッコ良すぎです。月夜に塩を大量にぶちまけて、ついでにツンデレ全開でイチゴ先輩、もうホント、素敵すぎる。後姿だけでも可愛いってわかるほどの、超絶的な可愛さで、強気で、月夜に対して超毒舌。可愛いだけじゃなく、かっこいい!ツンデレがかっこいいなんて、思ってもみなかった~。
兄貴もお父さんも、ずっと月夜を心配してたんだって、そのために自分はどうしたらいいのかずっと悩んでたんだって、正直に月夜に伝えて。すごくいいなぁ、って思いました。
最後の一行。
幽霊は、いたのかもしれないね。月夜の心の中だけでなく。
実は、ファンタジーだったのかな、って、思ったりして。
(2012.12.23 読了)
この記事へのコメント
苗坊
確かに主人公以外の人たちの方が個性的で印象深かったです。
お兄さんもお父さんも月夜のことを心配しているのに月夜の態度が何ともイライラしましたよね^^;
イチゴ先輩がめちゃくちゃかっこよかったです。
私もファンタジーの部分もあるのかなって思いました。
水無月・R
女子中学生ならまだしも、もう高3なのに甘ったれんな~!って思ってました(^_^;)。
大人になりたくない、って思いもあったのかもしれないですけどねぇ…。
ラストがファンタジーを感じさせたので、ぽつりとつぶやいてみました♪
すずな
あ!ただ、イチゴ先輩はカッコ良かったですね~。
水無月・R
奈落の死の原因は予測がついてたので、月夜の幻視とかにどうやってオチをつけるのかなぁ…と思ってたら、なんだかなし崩しに終わっちゃいましたよね。
現実に戻ってこられてよかった、引き戻せたイチゴ先輩たちが素晴らしかった!って思います。
(あれ、主人公の立場は(^_^;))