これはまた・・・。
たまたま、図書館の予約本を受け取りに行ったら、2冊とも宮木あや子さんの作品だったんですが、ホントに全然違いますなぁ。
『官能と少女』というタイトル通り、未成熟な少女(或いは成熟しない女性)の官能の物語。ただしその官能は、無理やり彼女らに沁み込まされたもののように感じました。
美しい物語では、ないです。彼女たちは、類稀な美しい容姿をしているのだけれど。
高校が舞台になる章もあって、ちょっと『春狂い』に似ている。
本作ではエグさは薄まって、耽美および淫靡傾向だけど、それでもちょっと小市民な私には性愛行為の表現が、う~むって感じなんですよね。性愛表現というより、性虐待なんだもの・・・。
そして、少女たちの誰一人、救われていない。現実世界の常識人は救い出したと思っていても、彼女たち自身が救われたとは一切思っていないから。
それぞれの狂気、哀しみ、痛みなどが、薄いヴェールの向こう側にあるような感じ。
それでいて、直接的な表現に抉られる瞬間がふいに訪れ、非常に痛い。
甘いお菓子には毒がある。可愛らしいレースとフリルの散りばめられたロリータなお洋服には、錆びたナイフが隠されている。誰もが心に、深い傷を負っていて、それゆえに歪んだ愛で自分を慰めている。正しいってなんだろう。世間的に間違ってることでも、自分にとっては正しいと思う、それは狂気なんだろうか。そんなことを思う。
「春眠」の最初と最後が好きでした。美しいまま向こう側の世界へ行ってしまった「君」を悼みながら、静かに現実を少しずつ見失っていくかのような語り。間に挟まれる物語の方がメインなのだと思うのだけど、その現実の過酷さとの対比が美しい物語の始めと終わりでした。
その「春眠」と対になる「モンタージュ」にはゾッとした。女子高生は、愛があったのに、引き裂かれたのだと語っている。読者の私も、そうだったのか、では先の物語は・・・と思っていたのだ。あるところから反転する。やはり彼女も被害者で、彼女が加害者だと言っていた養護教諭もまた、被害者なのである。
う~む。なんだか非常にとりとめがなくなってしまいました。
自分に与えられる官能という名の虐待を「愛情だ」という欺瞞で武装する〈少女〉。
逃げることが出来ないから、そんな嘘で自分を守ろうとする。
その痛々しさに、彼女たちの美しい容姿に、やりきれない気持ちになる物語でした。
(2013.03.28 読了)
この記事へのコメント
苗坊
切なかったですよね。
少女たちは本人がどう感じているか分かりませんが、幸せだと思う人がいませんでした。
痛々しいのにでも読む手が止まらなくて面白いと思ってしまうのが流石ですよね^^
水無月・R
幸せだと思い込もうと必死になり、そしてその思いの奔流に流され、全てを見失ってしまう彼女たちが、とても痛々しかったです。
やりきれない思いを抱きながら、それでも読むのはやめられなかったですね。
すずな
少女たちが純粋で真っ直ぐな分、痛ましく堪らない気持ちになりました。あまりにも衝撃が大きすぎて涙すら出なかったです。。。
それでも、読むのをやめられないという、ある意味とても魅力的な作品でしたね。
水無月・R
そうなんです、少女たちには美しく素敵なものに見えているその「愛」は、彼女たちを傷つけるだけ。
ひたすらそれを信じてるのが、本当に切なくてたまらなかったですね。
yoco
思い返してみてもちょっと胸が痛くなるような、でもどうしてあげることもできないもどかしさというか、切なくも苦しくもなりました。
そして思いのほか(といってもタイトルにもある通りそのままといえばそのままなんですが)生なましくて驚いたり・・・宮木さん、ほんと幅が広いですね。
水無月・R
宮木さん、さすがのR-18文学賞デビュー作家さんなんですよねぇ。
ただホントに、切なかったです。偽りの〈愛〉を懸命に信じ込もうとしていた〈少女たち〉のことを思うと…。
香桑
少女ってしんどいものですね。それぞれの理由で女性を引き受けることが難しくって、少女のままで官能にさらされる少女達のしんどさに、やられちゃうような短編集でした。
このなかで、例の養護教諭は少女から女性にはみだしてしまった存在なんだろうと思います。このキャラの無神経さが、私、ちょっといらいらしちゃって。。。
見事に作者さんの思う壺にはまったような気がします。
水無月・R
少女たちから見れば完全な「愛」に見えても、他者の視線が入ればそれは「虐待」でしかない。
縋る先が間違っているのに、それしか見つけられない。
余りにも、やりきれない物語でした。