冒頭に、事件。
いつもの湊かなえさんの手法だな、と読み始める。
団地の4階から転落した娘。〈愛能う限り、大切に育てきた娘〉と嘆く母。
「母性について」「母の手記」「娘の回想」の3つの視点から語られていく母娘関係は、とてつもなく息苦しい。
『母性』って、なんだろうか。
娘でもあり、母でもある私だが、とてもじゃないけれど、こんな関係は築けない。
いつもの湊さんの作品なら、 「私だってこうなるかもしれない」「こんな悪意を、私だって持っている。表に出さないだけで」「いつか私だって、あちら側へ渡ってしまうかもしれない」 という怖ろしさが私を侵食していくのだけど、本作はあまりに私とかけ離れていて、あまりそういう思いを抱くことはなかったですね。
一応、「母」で「娘」なんですけどね、私(笑)。
確かに小さい頃は「母に褒めてもらいたい、褒めてもらえたら嬉しい」という気持ちはあったと思うんですね。今だって認めてもらえたら、それはそれで嬉しい。
だけど、こんなにも狂おしく「自分だけの母親」「自分を庇護してくれる存在」を求めるというのは・・実を言うと、気持ち悪くて。いいトシした大人で、しかも子供がいるのに、それはナイんじゃない?って思ってしまう。
確かに、母性というものは、女なら誰しも持っているもの、ではない。
更に言えば、子供を産んだからって、母性が出現してくるわけじゃない。
では、母性とは何か。実を言えば、わからない。
私が子供たちに対して持っている感情は、母性なのか。保護者としての責任感なのか?
そういうところを突き詰めるのは、確かにちょっと嫌な気分だな(笑)。そういう意味では、湊さんマジックと言えるかも?
学校の教師らしき「私」が通う「りっちゃん」というたこ焼き屋(夜は食事も出る)の「りっちゃん」の正体は、結構早めに見当がついたんだけど、「私」の素性が全然わからなかったです。
最後の方になって、やっと明かされて、言われてみればなるほどなんですけどね~。
でも、そうすると冒頭の事件って?と、しっくりこない。
単なるきっかけにしては、キーワードとなる台詞が、同じ過ぎる。
あんなセリフ、そう簡単には出てこないと思うよ?
その辺が、ちぐはぐな印象です・・・。
とにかく、登場人物たちに会話が足りない。そのせいで折角の思いが無駄になっている。特に、娘。
そして、母は甘えすぎている。いつまでも、娘でいたいなんて、いい大人として、ダメすぎる。弱い、というより病的なものなんだろうけど、そんな人間は子供を持ってはいけないよね…って思う。
夫、夫の実家の家族、隣人たち。これがまた、絵に書いたような《田舎の悪者》って感じで、なんだか辟易。
読んでて疲れた(-_-;)。
あまりにも自分と違い過ぎ、イヤだと思う状態を変えるための努力のルートが理解できず、そして先ほども書いたけど、意思の疎通がない。
母から見た母性、娘から見る母性、そして外側から見る母性。それぞれが違うし、個々人によっても違う。私は受け入れられないと感じたけれど、間違っているとは言い切れない。ただ、この物語に描かれる母性からは、幸せを感じない。
どうにも、疲れる読書でした。
(2013.08.04 読了)
この記事へのコメント
すずな
私には理解できない感情でしたが、こういう感情を持った母娘もいるんだろうななぁと思いつつ読みました。
水無月・R
実際ここまですごくなくても、依存しあう母娘というのはいたりするんですよね。
ただ、親になるんだったら、それなりの覚悟はホントに持ってほしいです。
latifa
随分古い記事にお邪魔します。
最近映画化になるというのを聞いて、たまたま本棚にあったので借りてきちゃったのですが・・・
うむぅーー
重いし、、疲れました・・・。
こういう親子関係は良くないですね・・・
多少何か、かんかはあって当然なんだけど
あと田舎の嫁いじめが酷くてげんなりでした・・・
水無月・R
いつの記事にコメントいただいても、とっても嬉しいです~。
10年近く前に読んだときも、かなり疲れた~って思ったんですが、自分のレビューを読み返すだけでも、やっぱり疲れました(^_^;)。
母性というより執着、って感じでした。