かつて、柳田國男の『遠野物語』を読んだことがある。民間伝承や民俗学なんかを学んでた学生時代の話だから、20年ほど前のことである。
その頃のこの物語の印象は「派手なところはないけれど、それだけに本当に信じられてきた伝承なんだろうな」というようなものでしたね。夏休みに遠野へ行って、河童淵へ行ったり曲がり屋を見に行ったりと、ウロウロと観光したこともあります。
そんな訳で、京極夏彦さんが『遠野物語Remix』を出したと知った時は、なんか面白そう!と思ったのですよね。
残念ながら、京極さんによるオリジナル要素はありませんでした(^_^;)。語る順番を替えたり、現代の人にはわかりにくい用語の注釈を足したりしつつ、原典よりはだいぶ読みやすくしてあるとは思うんですが(←うろ覚え)。
実を言うと、翻案小説的なものなのかな、って思ってたので、ちょっと肩すかしです。京極さん的面白さは、あんまりないです(笑)。いや、勝手に私が思い込んでたんで、それは私の問題ですよね、ははは(^_^;)。
私的には〈再読〉という形ですが、そうでなくても「何故か懐かしい」話が続きます。
雪女・迷い家・山女・年経た妖物・・・いわゆる昔話。
因果応報な物語もあれば、何かが起こってもその後特に何も起こらなかったという話もあり、その言いっ放しな終わり方が逆に、実際にあったのだろうというリアルさを持って迫ってくる。
遠野の物語ではあるけど、日本のどこででもあっただろう、言い伝えの物語。
異界とこちらの世界が侵食しあうかのような、今は廃れてしまった薄闇の世界が、目の前に広がっている。
懐かしさと同時に、ほの昏い怖ろしさを感じる。
普遍的な、畏怖。佐々木喜善が語り、柳田國男が編纂した、日本の民俗の無意識に根差した物語。
遠野は、草深い山奥ではなかった。私が行った20年前は、美しく拓けた田園風景でいながら、あまり衰退の兆しが見えないという、地方都市としては珍しい場所というイメージでした。今は、どんなふうになってるのかしらん。
(2013.08.28 読了)
この記事へのコメント
苗坊
元々の「遠野物語」は私は理解できなそうだなと思ったので^^;今回はようやく読めそうだと楽しみにしていました。
読めて良かったです。現代でも本当に楽しめますよね~
数年前にあさイチで遠野を旅する特集をしていましたよ^^今、河童グッズがたくさんあるみたいです^m^キュウリを用意して河童を釣る遊び?もあるくらい。観光客を取り込む工夫が面白いなと思いました。
岩手は数年前に行ったのですが遠野は遠くて行かなかったんです。いつか行ってみたいなと思いました。
水無月・R
キュウリで河童釣り、なんだか楽しそうですね♪
きっと20年前よりも観光に対する工夫は向上してるでしょうから、いいですねぇ。
空気のきれいで、清々しいところでした。
夏に行ったのですが、涼しかったような気がします。自転車でウロウロしまくってました(^_^;)。
yori
水無月・R
こういうほの昏い懐かしさは、日本の民族伝承らしさが良く出ていますよね。こういう雰囲気、好きです。