ぬははは・・・。
笑った笑った!なんとも豪快で強引で、それでいて時々どこかもの悲しさが漂うんだけど、そんなの一蹴するバイタリティ回復力がすごい(笑)。
駆け出し作家、相田大樹(本名:中島加代子)改め有森樹李の文壇のし上がり物語、『私にふさわしいホテル』。
いやぁ、笑わせていただきました、柚木麻子さん。
物語は、とある売れない新人作家が、「小説家のためのホテル」と呼ばれる「山の上ホテル」に自腹で泊まりに来るところから始まる。大手文芸誌に短編を載せてもらう為に彼女がとった作戦とは!
新人作家としてのデビューはアイドルの当て馬で全く目立てず、デビューした出版社に原稿送っても何の反応もなかったのに、他の出版社で本を出そうとしたら、その出版社からクレームがつき。にっちもさっちもいかなくなった相田大樹は、華麗なる転身(変身?)を遂げ、有森樹李となる。
そのあとスランプになったり、若い新人少女作家に話題や編集者の興味を奪われたり、書店回りの時に大活劇を演じたりと、とにかくなんともパワフルに動き回る。
何と言っても注目すべきは樹李の執念。文壇へ躍り出るためには大文豪・東十条宗典すら手玉に取り、丁々発止のやり取りをしたかと思えば、共通の恨みのために共闘したりもする。樹李を担当しずっと見守ってきた遠藤先輩も、彼女の行動力に振り回され、一杯食わされる。それでもなお彼女の才能とバイタリティを信じてきた彼が物語の最後に見るのは、最悪の時期を自力で脱出した樹李の姿。
いやぁ、実在作家や「この人あの人だよな~」と思うような登場人物、著者・柚木麻子さんも有森樹李同様「木」がたくさんつくところとか、もしかして実話も交えてるの?!なんてドキドキしました~♪
まあ、さすがにコスプレして文豪襲撃とか、口八丁で危機を乗り切ったとか、そこまではやってないと思いますが(^_^;)。
しかし、樹李の執念&演技力&超長期スパンの策略、ホント凄いですわ・・・。
絶対売れる作家になってみせる!という意気も高いし、実際そうなるだけの才能もあり、自分を演出し周りを操る能力も異常に高い。それに振り回されるのは、すっごく大変そうだな~(^_^;)。
そんな樹李でも、時に自分の作風を見失って大衆迎合したり、疲労のあまり虚ろになってしまったりする。
だけど、いつだって、樹李は自分の力で、周りを利用しまくってでも、浮上してくる。浮上して、更に上へと飛び上がる。ホント、すごいパワー。絶対私には無理。
作家という人たち全員が、こんなにすごい(というかエキセントリックというか)訳じゃないんでしょうが、それでもやっぱり作家ってすごいなぁと思いました。
う~ん、やっぱり私は物語る人には、なれないな(笑:いや、そういうことではない)。
(2014.09.06 読了)
この記事へのコメント
yoco
めっちゃ笑いましたよね、本作!
「木」が入っていると売れる・・・という話ありましたが、確かに柚木さんも木がものすごく入ってますね、気付かなかった・・・笑
編集者に対する物言いなんかも、本当にリアルでしたよね。主人公が小説家な上に現実にリンクしてる部分も多々あるから、どこまでが実話?!と思っちゃいますよね。
あと、名前は聞いたことがあったけど、ますます山の上ホテルが気になりました。いつか泊まってみたいかもw
水無月・R
いやほんと、楽しかったですよね!
ホントの柚木さん(笑)がどこまで樹李に投影されているかは不明ですが、色んな事実があちこちにさりげなく織り込まれてるので、憶測するのも楽しかったです♪
山の上のホテル、あんな珍騒動が起こるような場所じゃないと思うのですが・・・。
泊まるのは無理でも、ティーラウンジぐらい行ってくつろいでみたいものです。くつろげるかしら(^_^;)。