帯に「ハートフル・クリスマス」とあったので、冒頭ビックリしましたわ・・・(^_^;)。
水無月・R大絶賛!読んだら即萌え!萌えの女神降臨!
の有川浩さんですが、いきなり暴力シーンから始まってしまって、え?ええ?何?なにこれ?と、非常に動揺しました。

『キャロリング』というタイトル、表紙のデザインもガラス(クリスタル?)のオーナメントでしたし、きっと素敵なクリスマスの物語なんだと思い込んでたんですよねぇ。
クリスマス倒産が決まった、子供服メーカー「エンジェル・メーカー」。社員は、社長の英代、デザイナーのベンさんと柊子、営業の大和と朝倉、の5人。子供服事業の傍ら手がけていた学童保育の最後の利用者・航平(小6)は、母親の海外転勤について行くことが決まっている。
この航平が別居中の父と母の仲を取り持とうと、柊子と大和と共に父が仕事をしている横浜に通うようになる。
父が勤める整骨院には、借金の取り立てのチンピラがちょくちょく現れ、院長にのぼせている常連患者の大嶽と同じくのぼせている父が張り合っている。
取り立てのチンピラたちがとある事情から、過剰な行為に走る。
そして、クリスマスの奇跡が起こる…。
いやいや、びっくりした。でも・・・素敵な物語だったのも、事実です。
大和の凄絶な子供時代、そこから「不幸比べをしても仕方ない」とそこから目覚めるきっかけをくれた英代。英代がいたから、大和は真っ当に生きていけるようになったのだと思います。
そういう子供時代というか経験って、切ないなぁと思います。想像はできるけど、多分当事者でないととてもわからない、苦しさやりきれなさ、きっと私の考える以上の辛さなんだろうなぁ。でも、そこを通ってきた大和だからこそ、倒産を前にした社内の優しさ、航平の気持ちなど、よく判ってて、広い視野で物事を見ることが出来たんだと思います。
どの登場人物も、程度の差はあれ、つらい思いをして今に至っていて、赤木たちチンピラだって本当に悪ではなく、どうしても守りたいもののために、行動を起こした。もちろん、それは間違っているのだけれど、彼らの考えうる中で、これしか道がないように思いつめてしまった結果。
なんか、すごく感想が散漫なんですが、どうもまとまった感想が出ないんですよね。
大和の子供時代と、その両親の行動の酷さ。大和の体験から来る、柊子との別れ。エンジェル・メーカーの倒産と社員たちの様子。航平から見た父母の不和。航平の父の勤める整骨院の事情。取り立て屋・赤木ファイナンスの面々の寄る辺なさ。
それぞれのエピソードはうまくはまってるんですけど、なんだか私的にまとまりがつかなくて。
クリスマスの奇跡は起こったけど、何でもかんでもハッピーエンドじゃなかったところは、良かったかな。そう簡単にきれいにまとまっちゃったら、あまりにご都合すぎるもの。
航平には可哀想だけど、航平の事情の方は、そういう終わり方しかなかったかなと思います。願わくば、ハワイで日本と同じ花を見つけたり、物語を綴ったりと、健やかに成長して行ってくれるといいなぁ。
赤木ファイナンスの4人は、仕方ないことだけど、何も起こさず細々と事務所を続けていけたらよかったのにな…って思いました。生まれ育ちからして、チンピラになるしかなかった男たち、商品として売られるしかなかったレイ。
4人のラストシーンは、泣いてしまったなぁ。
~~「みんな家族だから、みんなで行こう」~~(本文より引用)
レイが聖母に見えた瞬間でした。
一番最後に、大和と柊子の未来に光がさしたのもよかったんですが、ベンさんと朝倉の意外な・・、いや意外じゃないと言えば意外じゃないかもだけど、の展開が、楽しかったですね。憎まれ口をたたく朝倉と、そんな彼女をまるごと許容して包みこむベンさん。会話のテンポの良さも、この2人はピカイチでしたもんね。この二人、結構好きです。
航平が、つたないながらも描く物語がストーリーに挟まれていくのだけど、それがすごくいい。
大和がちょっと読んで、すぐに引き込まれる。「ことば」や「ものがたり」の力をよく知っている私にとってすら、この力強さには驚かされました。
航平の気持ち、人から言われて理解したこと、端的に描かれている。小学生にして、この魅力。将来航平が、「物語を紡ぐ人」になってくれたらいいなぁ、なんて思いました。
あ、そうそう。最後に航平が大和と食事に行って、現在進行形のお前の方が辛い、泣いていいって言われたの、私も涙が滲んじゃいました。航平、いつも大人びちゃってて、ちょっと可哀そうだなって思ってましたから。
それから「友達認定」されたのも良かった。なんか、年齢を超えたいいコンビって、感じがしますね。
ちなみに。
去年の秋冬にドラマ化されてたんですよね。あと、キャラメルボックスでも舞台化されてたそうで。私はどちらも、見てないんですが。
そういえば、ドラマっぽいような演劇っぽいような展開・・・だったかも(笑)。
まあ、私は自分の脳内で妄想を繰り広げるタイプの人間なので、活字が一番いいです♪
(2015.02.10 読了)
この記事へのコメント
苗坊
大和も航平も赤木も、家族との関係によって人生が大きく変わっていたりして読んでいて切なくなりました。
私は大和が好きですけど^m^
赤木の境遇も辛くて悲しいものでしたね。あの「家族だから」という言葉は私もじーんとしました。
水無月・R
いやほんと、びっくりしましたよね~。
家族との関係で人生が変わってしまうことは事実だし、どうしようもできないことも多いけれど、大和にしろ赤木にしろ、そこを乗り越えて変わっていける、という希望もある物語だったのだと思います。
レイのあのシーンは、とても素晴らしかったと思います!
すずな
最後は全てが”クリスマスの奇跡”とはなりませんでしたが、航平の両親についてはしょうがないなぁと思いました。逆に上手くいったら違和感を感じてしまったでしょうしね。でも、両親がちゃんと航平と向き合ってくれて良かったなぁと思いました。
ベンさんと朝倉の二人も良かったですよねー!実は、読みながらこうなることを期待してたので、嬉しくなっちゃいました。
水無月・R
冒頭に驚き、そのあと急にのんびりクリスマス倒産の情景になり、一人でアワアワしてしまいました(^_^;)。
クリスマスの奇跡とは、それぞれにささやかな光を投げかけてくれたことなのかな、って思います。
最後に、朝倉がテンパっちゃったの、可愛かったですね♪
りか
ご無沙汰しておりました。
コメントして下さっていたのにお返事が遅くなってごめんなさいです。
「キャロリング」はドラマを観る前に読まなくちゃ!と、真っ先に読みました。
ほほほ。私もやっぱりまずは活字最優先なんですよね。(笑)
「キャロリング」もそうですが、有川作品のこういう読後感の良いところが大好きです。
結末があまりにも上手く行きすぎるとご都合主義に見えちゃいますが、その辺が有川作品は絶妙だと思います
水無月・R
脳内補完OKな私(笑)。活字だと好きなように補完できるんで、うふふ。
全部が全部、ハッピーエンドではなくて、それぞれにささやかな光がさし、そこから幸せをつかむのは本人立ち次第、という感じが良かったです。
ホント、有川作品は素敵です♪