『帝国の女』/宮木あや子 ◎

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いやもう・・・宮木あや子さん大好きだわ、私(笑)。
タイトルが『帝国の女』なんていうガッチガチなものなので、お堅い系か不穏系かと思いきや、「帝国テレビジョン」という放送局で働く女たち(社員でない人たちも含む)の物語ですよ。
TV業界といえば、言わずと知れた過酷な職場環境の業界。
しかし、その苛酷さは私の知識や予想をさらに上回るものでした。
いやいやいや・・・。うん、私あんまりTV見ないけど、見る時は、ドラマでもバラエティでもニュースでも、制作に関係してる人たちの多大なる労苦と健康に心を馳せながら見ることにします・・・!

宣伝部の松国、プロデューサーの脇坂、人気脚本家の大島、ベテラン女優のマネージャー・片倉、テレビ雑誌記者の山浦。
〈テレビの仕事〉という戦場での、苦悩と葛藤と夢と理想と現実が綯い交ぜになった、この5人が織りなす物語。
正直、凄すぎると思いました。例え若かったとしても、私には絶対に赴けない「戦場」でしたねぇ。
彼女たちは、それぞれの夢やプライドを胸に、取り組んでも取り組んでも片付かないどころか、さらに広がってしまう過酷な状況から逃げ出すことなく、精一杯の力でぶつかっていく。
そして仕上がった番組は、視聴率ではかられ、消費され、また次の仕事が立ちはだかり、彼女たちは立ち向かっていく。
凄い、ホントに凄いとしか言いようがないですねぇ。うん。

書きたいことはいっぱいあるんですけどね、一番インパクトが強かったのはやっぱり、片倉の生い立ちの話ですねぇ・・・。背中に刺青が入ってるという時点で、なかなか凄い経歴なんだろう、こうかしらああかしらと想像してはいたんですが、ここまで凄絶な過去とは・・・・。
しかし、芸能界ってすごいなぁ(^_^;)。色んなこと出来ちゃうのねぇ。ある意味オソロシイ。

後は、「ねえさん」こと脇坂のヘンに純粋なところですかね(笑)。
国立大卒の超デキる女なのに、不器用で人の言うことをコロッと信じちゃって、情にもろいのに、それでも仕事はとんでもなく有能で隙がない。可愛いなぁ…なんてね、思っちゃうんですよ。
ああ、オバちゃん魂が刺激されます。なんかあんこ系のお菓子でも差し入れて「オバちゃん、ちゃんと見てるからね、脇坂ちゃんが頑張ってるのわかってるのよ・・・」って、そっと応援したい感じ(笑)。

勿論、山浦も大島も松国も、みんな素敵な「お仕事女性」です。寝不足で血眼になってて、髪がボッサボサで、とんでもなく疲れ果てても、それでもなお彼女たちは、みんな輝いてる。自信を失う時もあるけど、自分の仕事に対する責任感があり、仕事に対して〈愛〉が感じられる。
素晴らしいですよ、本当に。

TV業界、芸能界のいろんなエピソード、個々人の恋愛話(うまく行ってない)、5人がかかわる「ラスト・プリンセス」というドラマ・・・。ホント書きたいこといっぱい過ぎて、頭の中パンクしそうです(^_^;)。

その辺せ~んぶ、横に置いといて、やっぱり語るべきは「~愛して野良ルーム3」ですよね。
それぞれちょこちょこと関わり合いを持ってた彼女たち5人が、一堂に会する焼肉屋(だけど焼いてるのはイカ(笑))。
夫を斬り捨ててきたと宣言する大島に、とんでもない誤解をして蒼白になる片倉(笑)。
地方倉庫左遷から帰還した松国に「戻ってこられるなんてドッキリかもしれないよねぇ」と言い放つ脇坂。
宣伝部で契約社員にしてほしいと履歴書を差し出す山浦(歓迎される)。
自分がマネジメントしてる女優の養子になったと片倉が告白し、全員が彼女の認識の鈍感さに度肝を抜かれ。
とにかくニヤニヤしちゃうのである。

この人たち、お仕事大変だけど、すっごく幸せだな!一生懸命やってるから幸せなんだよな!素敵だなぁ!
そして、一番最後に大島が「今度はコメディ書いてみるわ」という。
みんなで、その仕事が一緒にできたらいいと、全員が思ってる。バラバラに帰る彼女たちは、後ろ髪をひかれながらも、明日の仕事に向けてそれぞれの道を行く。
なんかもう、すごくいい。友情というか仲間というか・・・素敵すぎる。

今まで、同年代、同じ会社、など何かしら結構共通することを持つ女(女じゃない人も入ってたりもしたけど(笑))が集まる宮木作品内の「野良ルーム」だったんですが、今回は係わったドラマが同じだっただけで、会社も違う、立場も違う、年齢すら違う女たちがそれぞれをどう思ってるかをあけすけに独白しながら、一部は口に出しながら、今まで以上の絆を作り上げていく、素晴らしいラストだったと思います!
私も仲間に入りたいけど、入れるわけない!ははは・・・。

とにかく楽しかったです。いや、TV業界の過酷なお仕事っぷりには、とてもじゃないけどついていけなくて、登場人物たちの心身の健康を心の底から心配しましたけど。
でも、最後にみんなで楽しい「野良ルーム」を過ごしてくれて、ホント楽しくてニヤニヤしちゃいました。
うん、宮木さん大好きだなぁ、私!

ちなみに。
帯の登場人物紹介の年齢を見て愕然(笑)。
みんな、私より年下じゃん!・・・可愛いと思うはずだよなぁ(^_^;)。

(2016.07.04 読了)

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宮木あや子 光文社発行年月:2015年07月16日 ページ数:233p サイズ:単行本 ISBN:9


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この記事へのコメント

  • yoco

    水無月さん、こんばんは~^^
    1行目から、もう同意しかないです。笑
    登場人物は、片倉も壮絶でしたねぇ。
    というか、なんかもう、誰も彼もがカッコよくて…!私はこんな戦場では生き抜けない気がしていますが、戦う女性というのも格好良いものですね。
    ああ困った、本当に今再読したくてたまらないです。水無月さんの愛のあるレビューに感化されまくりです。笑
    2016年07月04日 23:09
  • 水無月・R

    yocoさん、ありがとうございます(^^)。
    同意していただけて、嬉しいです~♪
    お仕事を一生懸命やってる女性は、たとえボロボロでも輝いてますよね!素敵です!
    あらあら・・・再読しちゃいます?(*^^)v
    私、物語に対する愛だけは、過剰にありますのよ(笑)。
    2016年07月05日 17:31
  • 苗坊

    こんばんは。
    タイトルからいったいどんな話なんだろうと驚きましたが、お仕事小説でしたねー。
    皆さんホント女性だということも忘れるくらいの忙しさで^^;大変そうだなぁと思いましたけど、でもみんなやりがいをもって誇りをもって働いているのも分かるので羨ましいなと思いました。
    「野良ルーム」いいですよね^^今回は3回目?ですがやはり面白かったです。
    2016年07月06日 21:39
  • 水無月・R

    苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
    5人が、本当に仕事を愛してて、真摯に取り組んでるからこその、物語でしたよね。ホントに素晴らしいです。ただ、やっぱり体調は心配・・・(^_^;)。
    「野良ルーム」のみんなのぶっちゃけっぷりにドギマギしつつも、〈戦友〉だからこそ、そこまで言える!っていうのがホントに面白いです。
    まだまだいろんな「野良ルーム」を読みたいですね♪
    2016年07月06日 21:50

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