なんか、ここのところ続けて〈イタイ〉物語を読んでる気がするなぁ(笑)。
辻村深月さんの、痛痒い中学生物語、『オーダーメイド殺人クラブ』。
イタいイタいと連呼してますが、身に覚えがありすぎなイタさなんですよね~(^^;)。
いや、殺したり殺されたりしたかったわけではないですけど、それでも、参っちゃうなぁ・・・。
クラスの目立つ子グループ内で外したり外されたり、息苦しい日々を送る中学2年の主人公・小林アン。
ある日、クラスの男子・徳川勝利が河原で何かを執拗に蹴っているのを見かけ、それが何かを確認しに行ってしまう。ビニール袋の中のどろどろとした何か・・・、いわゆる〈犯罪少年A候補〉みたいなその行動に、心惹かれてしまうアンは、徳川に「私を殺して、少年Aになってくれない?」と申し出る。
『悲劇の記憶』と名付けたノートに、殺人の方法や死体遺棄の状況などを検討し書き込んでいく二人。
その間アンは、ちょっとした行き違いなどから、どんどん教室内での立場をなくしていく。
「事件」決行の夜、遅れてきた徳川はアンにある事実を告げる。
数年がたち、大学へ進学上京するアンのもとに、徳川は『悲劇の記憶』のノートを差し出す。
いやぁ、ホント、イタイね。
「自分は特別なんだ」「特別にならなくては」と、もがけばもがくほど、その痛々しさはあらわになる。
中学の頃って、なんであんなに世界が狭くて、そしてその狭い世界の中で自分を追い詰めまくって、生き辛い思いばっかりしてたんだろうなぁ、なんてことを思い出したりしてしまう。
耽美なものに歪んだ憧れを持ち、グロテスクなまでに自己顕示欲が強くて、そのくせ世界が狭いからその中で溺れそうになって…。
昔よりも「スクールカースト」が教室を支配してるこの時代、生き辛かろうよ、そりゃあねぇ。
いわゆるリア充な女の子たち(アン含め)の、身勝手な自己主張や自己憐憫にはホント、辟易しました。
自分から男の子振っておいて、その元カレが友達と付き合うと悲劇の主人公になりきって不登校&狂言自殺未遂とか、え?何やっちゃってんの?バカなの?って思いましたもん。でも、ちょっとわかる。いい年した大人になってわかっちゃって、あの頃を思い出したりするともう、喚きたくなる。
もう、辻村さん勘弁してぇぇ!!って何度も思いました。
自分を殺してその死体を耽美な感じに配置してほしい、どんな風にしたらいいかの予行演習で東京の撮影スタジオまで行って撮影会とか、悪いけど笑っちゃうようなシーンもありました。そこで着る衣装をとっかえひっかえするとか、なんなのこれデートなの?!ってねぇ。
お互いを昆虫系だリア充だといって「これは死を演出するための計画だから」とこっそり会ったり、連絡先交換したり、むず痒いほどの「幼い恋」だと思いました。
・・・うっわ、更にイタイですなぁ(^^;)。
殺人計画が頓挫しそうな危機があったりしつつも、〈オーダーメイド殺人〉という新しい表現法を見つけ、決行の日がやってくる。しかし、覚悟を決めていたはずの二人の間に、齟齬が生じる。
アンは~~「誰かを殺すなら、私を殺してからにして。私を殺せないなら、誰のことも、一生、殺さないで」~~(本文より引用)と叫ぶ。
朝が来る。二人の、余生が始まってしまう。
お互い、心惹かれていたのに、それを認めることもできないまま、遂げられることなく終わってしまった〈オーダーメイド殺人〉。
余生を送ることになった二人は、その後交流を持つこともなく中学を卒業し、別々の高校へ進学し、東京への大学進学が決まる。
アンのもとを訪れた徳川が手渡した『悲劇の記憶』ノートの残りページの絵。そして二人がまた繋がるための一言。
ほっとしたし、これからの光が差した気がして、「余生」だけど「余生プラスα」になる、この子たちの未来が、嬉しくなるラストでした。
ところで。
アンのママは『赤毛のアン』が大好きで、娘に〈アン〉という名前を付けたんですが・・・。
「小林」さんと結婚したことも、計画のうちにあったのかしら…と思うと、アンのママの「中2病」っぷりにニヤニヤが止まりません。
アンのフルネームは「アン=シャーリー」。小林は中国語風に読むと「シャオリン」→「アン=シャオリン」・・・ですか。
いやいやいや…(^^;)。どうなんでしょうねぇ、深読みじゃないですよねぇ(笑)。
(2016.08.14 読了)
この記事へのコメント
苗坊
辻村作品は学生が主人公の物語はホント覚悟して読まなければいけないですよね^^;
私はここまで腹の中を探り合ったりするような学生生活じゃなかったですが、でも、生きにくいなと思ったことはあります。でもそれは、社会に出た方がもっとありますよね。
悪い方向へ行かず、ラストが清々しくて良かったです^^
水無月・R
辻村作品の学生モノは、イタイですね(笑)。大変抉られました…。
『悲劇の記憶』が実行されずによかった…この子たちがちゃんと生きていけてよかった、気持ちよく読み終われて、ほっとしました。
すずな
最後はどうなることかと思いましたが、ホッとできるラストで良かったです。
水無月・R
イタイし、むず痒いし、自分の黒歴史までほじくり返させられそうで(笑)、気力体力ともに使いましたねぇ(^^;)。
どんな終焉を迎えてしまうのか?!とびくびくしてましたが、終焉ではなく新しい始まりを感じさせる(しかも前向きな)ラストで、ほんとによかったです。